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『死体を埋める百合』概念の源流とは何か、またはくみれいは如何にして死体を埋めたのか

冒頭から物騒で申し訳ないが、『死体を埋める百合』という言葉がある。

言葉というよりかは言い回しの類だが、要は女性二人が死体を埋めるというシチュエーションに対し、「百合っぽさ」を感じるということである。この「百合っぽさ」については言葉で説明することは難しいが、平たく言えば「イイネ!」ということだ。要するにシチュエーション萌えの一種とご理解いただければ問題ない。

ことは私宛に届いた一通のマシュマロから始まる。

いつも女女村の...


あまり知見が無い方のためにも、順を追って説明していきたい。

まず『死体を埋める百合(上のマシュマロでは死体埋め女女*と表記)』という言葉についてだが、これは一種のインターネットミームのような性格が強いとヤギ子は理解している。後述するが、Twitterなどではある年あたりを境にこの『死体を埋める百合』についての言及が急増加しており、何かをきっかけにしてこの言葉ないしは概念が一気に広まったと考えられる。

*女女:『百合』の言い換えのような言葉。百合という言葉はさまざまな意味を広く含んでしまうため、あまり文脈を持たせたくない場合やフラットに女性二人を指し示したいときに使われることが多い

次に『ユーフォ』についてだが、これは小説を原作とし、TVアニメや劇場版などの展開もヒットさせている人気作品『響け!ユーフォニアム』のことだ。とある京都の高校の吹奏楽部を舞台に、弱小だった部活が全国大会出場を目指して奮闘する青春小説で、2013年12月に原作第一巻が発刊され、2015年4月にTVアニメシリーズの第一期が放映された。

テーマとしては吹奏楽モノなのだが、女子生徒の多い部活故に、主人公を始めとして多くの登場人物が女子で構成されており、また作中で描かれる、ときにハードでエグみのある人間関係の描写は、多くの人の精神を抉る要素があったものの、それだけに深く心に刺さる鋭さも持ち合わせており、結果としてキャラクター同士の関係性にグッと心をつかまれたファンを増やすことにもなった。(簡単に言えばカップリング、特に百合目線で見るファンも多いということだ)


まとめると、このマシュマロをいただいた方は『響け!ユーフォニアム』で百合のファンになり、当時から『死体を埋める百合』概念を目にしていたが、それは一体何が源流になっているかを知りたいというわけだ。

一つ重要なこととして、この方はあくまで「概念」の源流を知りたいのであり、「何が一番最初の死体を埋める百合or女女の作品なのか」を知りたいわけではないということである。上述のように『死体を埋める百合』は一種のネットミーム的性格を持つが、それは一体何によって生じ、どのように広まっていったのか、というのが今回の問いの焦点である。恐らく一番最初の作品という観点で言えば、何十年も昔の作品を遡らねばならないだろう。(例えば『風と共に去りぬ』にもそのようなシーンがあったりする)

曲がりなりにも10年以上は百合のファンを続けてきたヤギ子にとって、なかなかに興味深い議題だった。

*追記:前提として『死体を埋める百合』は、それ自体がひと括りのネット構文のようなものである。今回はこの「ネット構文」が定着していった源流を辿ることが目的であり、上述の通りあくまで作品の源流を辿ることが目的ではないことは改めて前置きしておく(ここの前提が共有されていないと少し読み違える可能性があるため)また、筆者は百合専門であり、当然百合(女性同士)以外の関係でもこのようなシチュエーションは発生しうることは承知している。繰り返しになるが今回はあくまで『死体を埋める百合』という一つのネットミームについての話である。(『死体を埋める◯◯(男男や男女、またはそれ以外を指す言葉)』という構文は百合以外に存在せず、かつ定着していないと認識しているが、もし存在していたとしても筆者の専門外であり、あくまで百合の場合はこうですよという話になる)


『死体を埋める百合』とはどういうものか

さて、さも当然のように『死体を埋める百合』とは言っているものの、未だにピンと来ていない方もいるのではないだろうか。

この前の記事でも説明したが、『百合』とは女性同士の恋愛を取り扱ったジャンルというよりかは、今はそれ含め「女性同士の間に発生する感情や関係性全般」を包括した言葉になっている。今回の『死体を埋める百合』のポイントとしては、「女性同士がいかにして死体を埋めるようになったのか」、「その女性同士はどのような関係性で、共に死体を埋めることでどのようにそれが変化していったのか」といった、シチュエーションにまつわる関係性萌えのほうが全面に来る。なので恋愛関係を想像して楽しむ、といったいわゆるカップリング萌え的なものを想像すると、少し捉え違えるかもしれない。

例えばどういうものが『死体を埋める百合(女女)』か。近年で言うと、2016年にフジテレビでドラマが放映された『ナオミとカナコ』が分かりやすい。(原作は14年単行本発売の小説)

ナオミとカナコ フジテレビ公式 FOD


「いっそ二人で殺そうか、あんたの旦那」というキャッチコピーの本作は、夫からのDVに苦しむ内田有紀演じる加奈子(カナコ)に、その大学時代の親友である広末涼子演じる直美(ナオミ)が夫の殺人をもちかけ、共に実行及び隠蔽を行うというストーリーだ。

途中決裂しそうになる場面もあるが、直美は最後まで加奈子の良き理解者で有り続け、最終回直前には加奈子と運命を共にする決意を告げる。きっかけはDVという悲壮な(夫役演じる佐藤隆太の演技力の高さもあり、DVシーンは実際ヤギ子も直視できないほど心が痛んだ)ものではあるが、二人の女性が共に結託し、理不尽に抗おうともがき、苦難を乗り越えながら同じ道を進んでいこうとする様は、関係性萌え以上に不思議な力を与えてくれた。

ちなみに夫の殺害実行後、二人が選んだ隠蔽手段は遠くの山に掘った穴に死体を遺棄するというものだが、ここで目を引くのが、それまでDV被害に合っており気の弱そうな表情を見せていた加奈子が、夫の殺害をきっかけに意外な精神的強さを見せ始めるところだ。むしろ殺人をけしかけたはずの直美のほうが日和ったりテンパってしまったりと、犯行前後で二人の関係が変わってしまったようにも見えるところが面白い部分である。

死体を埋める百合の肝とは

そのような関係性の変化もやはり『死体を埋める百合』の味ではあるのだが、やはり何が一番の肝かと言えば「共犯者」になるところだろう。

「死体を埋める」という誰にも言えるはずのない行為は紛れもなく二人だけの秘密であり、死体だけでなくその秘密までをも深い地中に埋める行為であると言える。また、法やモラルから逸脱したその背徳的な行いは、より二人の関係を俗世から隔絶し、異質なものにしていく。

そういった「秘密の共通」「インモラルな関係」といった要素が「共犯者」という関係には潜んでおり、こういった他ではあまり見られない特別な関係性に多くの百合のファンたちが心を惹かれている。

尚、『ナオミとカナコ』では殺人や計画まで含めての死体埋めだったが、殺人を犯した片割れに「どうしよう殺しちゃった」などと連絡を受けて一緒に埋めることを提案するパターン(これは二人の信頼関係なども関わってくるため女性同士に限らず二次創作でわりと人気が高い印象を受ける)や、二人ではなく複数で埋めるパターンなど、バリエーションも豊富である。いずれにせよ「共犯者」になるという点は共通している。

本題:『死体を埋める百合』の源流とは

さて、大枠『死体を埋める百合』の概要はご理解いただけたと思うが、ではこの概念の源流は一体どこにあるのだろうか?

尚、これから語ることは私自身が見てきた流れや経験、Webの検索結果やTLのログ及びマシュマロでの追加情報を元に組み立てたものであるが(情報をいただいた方には改めて感謝したい)、問いの性質上明確な答えではなくあくまで私なりの仮説であることをまず前置きしておく。もし他のご見解をお持ちの方は是非教えていただけると幸いだ。

まず、私の考えではこれは2つの段階に分けられる。①潜在的蓄積段階と、②ネットによるミーム化段階だ。

①潜在的蓄積段階とは

最初に軽く触れたとおり、この『死体を埋める百合』概念が生まれる以前、何十年も昔から「死体を埋める女性同士」の物語、またはそういったシーンのある物語は存在してきた。例えば1999年に放映されたドラマ『OUT〜妻たちの犯罪〜』もそのうちの一つだろう。(そういえばコレもフジテレビ系だ)

OUT〜妻たちの犯罪〜 - Wikipedia

主人公の主婦とそのパート仲間を中心とした多人数での死体埋めの物語で、残念ながら私は未視聴だが、あらすじを検索してみると主人公と女刑事との関係がなかなかに惹かれるものがあった。ただ、死体の解体シーンもあるらしく、マシュマロで情報をいただいた方は子供の頃に見てトラウマになったとのことだったが、それだけに記憶には深く刻まれる作品なのだろうと思う。

また、(女性同士に限らず、)そもそもとして「共犯者」というテーマは創作物における鉄板でもある。埋めることまではしないが、例えば1991年の映画『テルマ&ルイーズ』では、旅行中に起こしてしまった殺人や強盗などから女性2人が逃亡劇を繰り広げる様子がある種痛快なテイストで描かれる。また、この映画と元ネタの実在事件(テルマ~は大きく脚色されているが)を同じくする2003年の映画『モンスター』では恋人関係にあった女性同士による連続殺人事件が描かれている。加えて、百合好きにもファンの多い桜庭一樹作品の中では『少女には向かない職業』なども少女達の共犯関係が書かれた作品だろう。

こうして作品を列挙していくと、どれも社会や家庭の環境で生きづらさを感じている女性が何かを変えようとしたり現状に抗おうとしたりする物語が多く、これも(悲しい背景ではあるが)創作の上での一つの定型なのだろうと感じる。また、そういった中で殺人という要素は物語を展開する上でドラスティックな起爆剤として用いられることが多いのだろう。


ここからは私見だが、死体埋め描写の有無はあるにせよ、こうした「女性同士の共犯関係」を描いた作品はテーマ的にも少なくなく、恐らくそれらに触れる機会もローティーンの頃から十分に散在しているのではないかと考えられる。それはアニメや漫画というよりも、ドラマや映画、小説といった媒体がメインであり、小学校~高校生ぐらいまでの間に、テレビや図書館、映画館などでこうした作品に触れた経験は各々何かしらあるのではないだろうか。

これらのことから、それが関係性に対する萌え(イイネ!と感じる感情)にはつながらないまでも、「共犯関係に至る女性同士」という創作上のパターンが知識として頭に植え付けられている方は、実は少なくないのではないかとヤギ子は考える。これが『死体を埋める百合』概念誕生への第一段階、潜在的蓄積段階である。



ちなみに。

ジョー・力一(りきいち)さんというVTuber(バーチャルユーチューバー)の方がいらっしゃるのだが、19/09/24の雑談配信にて「死体埋めは百合コンテンツだと思っている」「百合コンテンツでよく見る」という発言をされていることも合わせて紹介したい(※例として上げられている映画とかで主婦たちが~というのは2002年に公開された劇場版の『OUT』だと思われる)

※位置指定済 (流れが分かるようにしているが、実際の発言は1:04:57頃)

私もたまたま付けた配信でまさにこの発言をしているところに出くわし、非常に驚いたことを覚えている。尚、マシュマロでいただいた情報によるとジョー・力一さんは百合のオタクというわけではないが女児アニメがお好きな方で、もしかすると同様に女児アニメが好きな層も多い百合界隈の『死体を埋める百合』概念に触れたことがあるのではないかとのことだが、いずれにせよこのことは、界隈以外の方にも「死体埋めは百合」というイメージが共有されているということの一つの例になるのではないかと思われる。


②ネットによるミーム化段階

さて、程度感に差はあるにせよ、まず多くの方にこの「共犯関係に至る関係性」についての蓄積がある段階と仮定する。しかしある時まではまだ『死体を埋める百合』としての関係性萌え*が、広くミームとして共有されている段階ではなかった。何となく皆の中に「死体埋め」と「女女」が淡いイメージで存在しており、具体的な形を伴って出てくる機会があまりなかったという状態だ。それが何かをきっかけにして『死体を埋める百合』として顕在化するのが次の段階である。

*補足:もちろんそのような創作百合や、関係性萌えの様式がそれまでなかったというわけではない。今回焦点にしているのはあくまで『死体を埋める百合』概念が百合好きの間に広く共有されるに至るまでの流れである

ようやく本題だが、この概念が広まったある時とはいつか。TwitterやWebを検索すると、2015年頃から「死体 百合」「死体 百合 埋める」などの検索結果が目立つようになる。そして、その頃に話題になっていた作品とは何か。

そう、それこそが冒頭にも触れた、この年にアニメが放映され人気になった作品『響け!ユーフォニアム』なのである。






は?


と思った方も多いと思う。当たり前だ。なぜなら『響け!ユーフォニアム』は吹奏楽部を舞台にした青春モノであり、殺人や死体などとは一切関係が無いことは誰が見ても明らかだからだ。

※本当に真面目に考察しているので、作品のファンの方も怒らずに最後まで見てほしい。見てもらえば納得する…と思う。そんな方はそもそもこの記事を見ていない気がするが…

しかしながら、実際人によっては『死体を埋める百合』と聞くとこの『響け!ユーフォニアム』のとある2人を連想してしまう方も実際にいたりする。以下に理由を述べるが、結果として『死体を埋める百合』概念の普及とユーフォは結果的に切っても来れない関係になっているとヤギ子は推測している。

『くみれい』=ユーフォにおける"共犯者"

この一見とんちんかんな説を説明するために、触れなければならないユーフォの関係性がある。それが先述のとある2人が指すところの、黄前久美子(おうまえくみこ)と高坂麗奈(こうさかれいな)によるカップリング、通称『くみれい』だ。以下やや長くなるが、流れの理解のためにお読みいただきたい。(百科事典まではお目通し不要だ。ビジュアルなどご参考に)

くみれい - ピクシブ百科事典
高坂麗奈:黄前久美子との関係 - ピクシブ百科事典(何故かこっちの方が詳しい)

主人公の黄前久美子は持ち前の軽率さから中学時代に吹奏楽部で同じだった高坂麗奈を怒らせてしまい、進学先の北宇治高校で再会しても始めはギクシャクした関係が続いていた。しかし二人は次第に打ち解け合い、やがてかけがえのない親友同士になっていく。

確かなトランペットの演奏技術を持つが気が強く、「他人とは違う"特別"になりたい」という思想から周囲とは馴染まない(馴染めない、ではない)ことも多い麗奈。しかしそんな麗奈にとって、久美子との中学時代の一件は、逆に彼女に興味を持つ理由の一つにもなっていた。

物語の途中、全国大会に向けて非常に大事なパートであるトランペットのソロ奏者を決める機会が訪れる。(原作第一巻、TVアニメシリーズは一期11話。以下はアニメシリーズ準拠)

これまでであれば自然と3年生の先輩(香織)が選ばれるところ、新顧問の滝先生の方針もあり、この年は1年生ではあるが実力的にはトップの麗奈との部内公開オーディションとなったのだ。

普段であれば持ち前の気の強さで毅然と構えるはずの麗奈であったが、香織も昨年実力的にはトップだったものの年功序列で3年生にソロを奪われてしまったことを知り、またこの件で部内にも不穏な空気が流れてしまっていることを感じ、自身がソロを吹くことに迷いが生じていた。


オーディション直前、二人きりの場所でそんな迷いを口にする麗奈に、久美子ははっきりとこう返す。

「麗奈は特別になるんでしょう!麗奈は他の人とは違う……麗奈は、誰とも違う、人に流されちゃ駄目だよ!そんなの馬鹿げてるでしょう!」

そして「でも、今私が勝ったら悪者になる」と言う麗奈にこう続ける。

「いいよ、そのときは私も悪者になるから!ソロは麗奈が吹くべきだって言う!言ってやる!」

その後、久美子のそばに寄り、内緒話をするような距離感と声のトーンで麗奈は聞く。

「そばにいてくれる?」「うん」「裏切らない?」「もしも裏切ったら、殺していい」「本気で殺すよ」「麗奈ならしかねないもん。それが分かった上で言ってる。だってこれは、愛の告白だから

そしてこのやり取りのあと、何かが吹っ切れたようにいつもの毅然とした態度に戻った麗奈は、最初から負けるつもりなんて全くないからと言い放ち、オーディションの場へと足を進めるのだった。





いやもうね、号泣ですわ。(いきなりどうした)


このシーン本当にめちゃくちゃ良く、この記事を書くために改めて見返したのだが、二人の絆や久美子の熱い想いにやられ、何度でも感動してしまった。ちなみに「愛の告白」とはそれより前の話(アニメ8話。これもめちゃくちゃ良い)で麗奈からふざけ半分で言われた言葉であり、それを引用して返したという憎い演出である。いい仕事するぜ京アニ。(※↑の会話は全てアニメオリジナル)

さて、本題に戻るが、このオーディション前のやりとりにおいて、二人は紛れもなく「共犯者」となった。麗奈ですら揺らぐほどに、恐らく部内のほとんどが先輩である香織がソロを吹いたほうがいいのではないかという同情心のようなものを拭えないでいた中、久美子ははっきりとソロは麗奈が吹くべきだと言い、結果ふたりは「悪者」になることを選ぶ。他の誰もいない、誰にも聞かれない場で命を賭けた密約を交わし、くだらない慣習や部内の雰囲気を全部ぶち壊してやることを決めたのだ。これを共犯関係と言わずして何というのだろうか。(尚、ソロは圧倒的な実力差を見せ、麗奈が勝ち取ることとなる)

もちろん作中の文やセリフで二人が共犯者と例えられることは無い。しかしながらアニメ11話で見た、二人の間に漂う、まるで世界に二人きりしかいないような少し危なっかしい雰囲気を見て、多くの百合好きが何かを感じ取った。そしてある日、その11話のキャプチャを使い、こんなツイートが落とされる。

(みそぎさん勝手に使ってゴメン)(大丈夫だと思うけどアレなら言って)
→大丈夫そうでした

いいねやRT数を見てもらえば分かるが、このツイートがそこそこハネた。実際これはその直前のツイートの流れを受けて出力されたものだったが*、画像とシチュエーションのドンピシャ具合や、本編から感じられる麗奈の「コイツなら久美子のためなら言いかねない」具合、くみれいにおける「共犯者」のフレーバーなどが見事に重なり合い、このツイート以降、一部のTLでは「くみれい死体埋めシチュエーション妄想」がしばらく呟かれることになる。
*追記:合わせてアニメ8話における二人で楽器の入った大荷物を担いで登山するシーンがあまりにも死体埋めっぽいビジュアルであったことも大きく関係していると思われる

*この日原作者の方のインタビューでくみれいの友情は異性の恋愛関係の上を行く関係として書いているという発言が載った記事が周り、ユーフォ百合ファンの間でちょっとしたお祭り騒ぎになっていた

『響け!ユーフォニアム』シリーズは原作はもちろんのことアニメもTVシリーズが2期、劇場版もスピンオフ含めこれまで4作上映し、さらに続編の制作も決定しているなど大きくヒットしている作品である。特に上述のように百合好きにもファンは多く*、この「くみれい死体埋めシチュ」は恐らくそれなりの層に鮮明な記憶として残ることになったと思われる。

*ユーフォはとある要素から百合か否かで意見が割れる場合があるが、今回は別議論のため説明は省く。詳しくはヤギ子の作成した動画を参照願う

これまでの「潜在的蓄積段階」との差は、一般のドラマや映画と違って明確に「百合」だと認識されている関係性において、この「死体埋め」というシチュエーションが結びついたところである。これにより、各々の意識の内に潜んでいた「女性同士による死体埋め」というぼんやりとした像が、「百合におけるシチュエーション」という実像を持って顕在化したのだ。

こうなるとあとは早く、同時期に発生したと考えられる「死体を埋める百合」*という言葉が普及役を担い、百合のファンの間に一気に広まっていった。これが『死体を埋める百合』概念誕生への第ニ段階、ネットによるミーム化である。

*この言葉自体は私の2015年当時のツイートが引っかかるが、初出かは定かではない。ただしそれはどうでもよく、この概念=死体埋めと百合との結びつきが広まったという事象が重要である

これ以降の展開について

その後の流れも良く、まずは上述の『ナオミとカナコ』が2016年1月からドラマ放映され注目を集めた後、同年7月からテレ東系列で欅坂46主演の『徳山大五郎を誰が殺したか?』が放映された。これはある日女子校の教室で見つかった担任教師の死体をクラス中が結託して隠蔽しようとする話であり、ドラマ内の関係性に着目した百合好きからの人気も高い作品である。

これらの作品の放映及びそれに言及する百合好きにより、ユーフォを見ていない層にも「何だか死体(埋め)と百合についての言及が増えてきた気がする」という全体感の高まりが波及していく。現実世界でもネットでも、こうした「何だかよくわからないが盛り上がっているらしい」という雰囲気の広がりが一体のムーブメントを生み出すことは珍しくない。ユーフォをきっかけとした『死体を埋める百合』概念は、こうした定期的な供給によってじわじわと根付いていった

また、2017年末にはユーフォ2期のくみれいのとあるシーンに着目した以下の記事が5000RT弱のバズりを生んだ。この記事の中では、久美子と麗奈のやりとりが声優さんの巧妙な演技と絡めながら死体埋めに例えられている。

これにより、第二次くみれい=死体埋め(=百合)のイメージ定着が起こったことは想像に難くない。また、この記事内でも同様にくみれいの「共犯者」たる関係について触れられており、改めてこの二人の根底にある閉じた世界を感じることができる。

2018年以降になるとグッと言及の数も増えていき、Pixivなどの投稿サイトや同人誌即売会で一次二次問わず『死体を埋める百合』の創作物についての情報も見られるようになっていった。そうして何となく『死体を埋める百合』概念が、源流は分からないが多くの百合好きの間にふんわりと共有されているというのが今だ。これが私の考える『死体を埋める百合』概念の源流、及び広がり方である。

終わりに

もちろんここで紹介できなかった作品の中にも、『死体を埋める百合』概念の源流になっていたり、普及に貢献したりしたものも多いだろう。もし特筆すべき作品があれば、是非コメントかマシュマロなどでお教えいただければ幸いだ。

また、「くみれいは死体を埋める百合じゃない!」と言う方もいらっしゃるだろう。それは当然個人の価値観なので、否定出来るものではないが、今回の焦点は『死体を埋める百合』概念が如何にして誕生し、広まっていったかというところなので、申し訳ないがそこについては議論しない。ただ、恐らくいくらかの層がそのように捉えた結果、『死体を埋める百合』概念の普及に寄与したというのが私の結論である。


ちなみに。


『響け!ユーフォニアム』にはくみれい以外にも魅力的な関係性が多数存在しており、物語の面白さはもちろん、関係性目線でも非常にオススメの作品だ。実際、麗奈とソロの座をかけて競い合った香織にも、公式設定で「友情の以上のもの」と評される感情を向けている相手(もちろん女)が居たり、そんな香織に熱狂的な感情を向けていながら、別で同級生の女と「喧嘩するほど仲がいい」的なやりとりを見せる後輩の女などが居たりする。また、その女の別の友達は、そのまた別の友達に巨大な感情を向けており、その関係性に特化したスピンオフの映画が昨年公開さ(以下キリがないため省略)(きになったら是非見てみてください)


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