新聞はインテリが書き、ヤクザが売る
「家出して上京し、
自分の力で
学費と生活費を稼いで生活しよう」
田舎の高校三年生だった自分が
そう決意した時、
現実的な選択肢として
頭に思い浮かんだのは
「新聞奨学生」
という選択肢だけだった。
高校3年の受験時、
親が希望していた
地元国立大学に合格した。
高校卒業するまで、
一度も塾・予備校等に行ったことはなく、
通信講座や問題集・参考書購入すら皆無。
県の偏差値トップ高校に通っていたものの
部活は運動部・文化両方ともハードに活動し、
学校に泊り混みながら、
部活動という名目で遊んでいたエンジョイ勢だった。
予習復習すらあやしく、
友人にノートを見せてもらってやり過ごす日々…
現在は母校で高校教員をやり、
予習復習を含めて、
毎日学年+1時間は勉強時間確保しろーと
煽っているが…
教え子には過去の自分の状況、
決して素直に言えないような、
よろしくない高校生であった。
当時、「冬物語」
という予備校舞台にした
漫画が結構好きだった。
そして、その漫画に出てくるような
甘酸っぱい?予備校生活に
夢と憧れも抱いていた。
予備校から東大コースの
学費無料で入れてくれる等の
チラシを見ながら、
「一生に一度くらい、
本気で勉強してもいいんじゃないかな。
東大目指して、
浪人、やってみようか」
そんな風に考えた。
しかし親は大反対。
「周囲で受験落ちている人、
行きたくても行けない人多い中、
国立大学合格投げ捨てるなんてあり得ない!
(田舎だと首都圏の私立より
地元の国立という風潮は強かった)
そんな選択肢を取るなら、
今後一切、生活費も学費も出さない!」
そんな親の反対・プレッシャーを押し切り、
自活するため、
新聞奨学生の道を選んだ
しかし、
『奨学生』
という響きは全く嘘なんだなぁと
新聞配達店に住み込みで働き始めて、
すぐに気づかされた。
新聞配達店の専業スタッフ求人広告は
未経験でも
25万~40万円位。
一方新聞奨学生の給与は
月8万~10万程度。
(しかも途中で辞めると、100万以上の金額を
一括で返済させられる契約)
住居や学費は提供してもらえるものの、
給与分の差額その他で、
新聞販売店側が十分ペイ出来る仕組み。
新聞販売店にとっては
都合のいい労働力確保するための方便でしかない。
住む場所は提供してもらえるが、
新聞店の一部だったり、ぼろ部屋だったり…
配属される店で違いも大きいようだが、
自分の周りでは5人の奨学生で
最後まで辞めずに続けたのは自分だけだった。
運動部を続けていたので、
体力には多少自信があった。
でも、朝4時~7時位からの勤務をイメージしていたのに、
実際には朝1時位から
広告折込の仕事等も含めてスタートしなければいけない。
極度の睡眠不足生活がきつかった。
また苦労したのは集金業務。
一度で済めばまだましだが、
いつも不在だったり、
高々数千円でも、
今はお金ないからまた今度きてー
と追い返されたり。
(何故みな、銀行振り込みになぜしないの?)
正直面倒になって、
何度も自腹でお客様分の新聞代金立替えた…
初めこそやる気だけはあったものの…
正直眠くて、予備校通うだけでも
精一杯…
予習復習どころでない生活…
でも通った予備校、
代ゼミの東大コースの授業が、
これまでの高校と段違いにレベルが高く、面白くて、
成績は向上した。
地方のトップ校は授業も最高レベル、
と聞かされて来たのに、
予備校トップレベル講師の
授業との差の大きさに驚かされるばっかりだった。
模試では時々、東大合格圏に向上してきたが、
受験本番、前期東大は届かなかった。
もう少し頑張ればと、
二浪も考えたけど
やっぱり疲れたなぁと
モチベーションも続かず
後期合格した大学で妥協することに。
最近、新聞奨学生後、
19浪して
東大を受け続け、
19年目に後期で九州大に行った人の話を読んだ。
「朝早く起きて新聞を配るので、帰宅して予備校に行くまでの間に寝てしまうんです」
というセリフに、
そうだよなぁ…とうなずいたり。
「新聞はインテリが書き、ヤクザが売る」
というセリフは、
新聞販売店の中でよく語られていた言葉だった。
普通の生活をしているだけでは
出会うことがなかったであろう人とも
一緒に時間を過ごすことになった。
ソープランドをつぶし、
名前を変えて住み込みで
子供も新聞配達しながら暮らす一家。
犯罪を犯し、
逃げてきた集団の人たちは、
販売店からも
お金持ちにげして、
夜逃げしていった。
「夜逃げするときは、
土足で部屋を歩いて、
あれこれ物色してから
逃げていくもんなんだなぁ」
なんて、荒れ果てた部屋を
掃除させられながら考えてた。
販売店の店長は
奢るからソープランド行こうぜ!
と店員に誘って、
人心把握?をしようと試みてた。
彼女に悪いから…
とノリ悪く断っていた自分は
好奇心はありながらも、
風俗行かないまま人生終わりそうな気配。
新聞の拡張(営業)は、
拡張団の人の三分の一以下しか
手当貰えなかったものの、
やってみると営業職の人より
遥かにたくさんの契約を取れ、
貧乏学生には良いお小遣いだった。
新聞拡張で余らせた
遊園地チケットや
映画チケットで
デート行っていた。
格安で首都圏の
美術館や博物館、動物園等をまわれる
「ぐるっとパス」なんかも、
貧乏学生にはとてもありがたかった。
東京の中での闇、
底辺生活を肌で
ヒシヒシ感じながらも、
若いというだけで
それなりに青春出来ていたのかもしれない。
公務員で受取出来ませんので、お気持ちだけで大丈夫です~