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秋山璃月/下北沢ニュー風知空知

5月13日、アタル(ハシリコミーズ)、ヤマモトユウキ、秋山璃月による弾き語りライブ「Pretty Woman」が、下北沢ニュー風知空知で行われた。

01.偏見
02.それが
03.勝手な彼女
04.夕暮れのリズム
05.アーミ
06.まわる 
07.グッドバイソング
08.原始時代    

春のニヒルな退屈は厄介だ。私は、私に、私を、私。果てがない考えも、彼の音楽が始まれば、今、肌で感じている音にしか意識が向かなくなる。

彼はどこから来たんだ?水平線の向こう、楽園、はたまた水星であろうか。どこから来て、何を見て、何を耳にすれば、”偏見”が出来上がるのだろう。優しいも激しいも、柔らかいも尖っているそれらとも違う、”それが”。
 ギター1本と、声ひとつで、本当に今聴いている音が構成されているのだろうか。3曲目”勝手な彼女”では、その疑問を強く抱く。耳を疑うとは、まさにこのことだ。確か、外は雨が降っている。そんなことはきっとこの場にいる全員もう覚えていない。雨もないし、風もない。彼が出す音しか、この世に音がないように思える。私たちは、もう彼の音楽の虜になってしまったのだ。 
 "夕暮れのリズム”皆が綺麗だと思うけれど、皆が忘れてしまう、夕暮れの一瞬の煌めき。全ての感情に、名前も共感もいらないのかもしれない。背骨に銃弾を打ち込まれた感覚になる。続く、”アーミ”、”まわる”では、音楽に酔わされる。頭から、つま先まで、まわる。まわる。7曲目、「家族の曲です」と紹介された”グッドバイソング”《いつか続くかもだから》祈りだ。これは、間違いなく祈りだ。人生の中の、きらり閃光が走るその一瞬を、彼は歌い続けてくれているのかもしれない。ラストは、《一度通った道は、踏み潰してゆけ! 》どこまでも引きずられる歌詞が続く、”原始時代”何もかも初めから、原始時代から、彼の部屋から、ぽつり生まれた音楽は、彼の体を飛び出し、私たちの骨の髄を動かす。
 彼の音楽を聞く理由は、人が海に行く理由を考えるくらい野暮なものだと思う。(紀月ひお)


写真 @hiyo_style




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