#10 「ニン」に合う

最近、藤井青銅さんの「トークの教室」を読んでいる。

藤井青銅さんは、私が毎週聞いているラジオ番組で構成作家を担当されており、パーソナリティの方の口からも度々その名前が出てくる。その番組以外にも有名な方の番組等を担当されているすごい作家の方だ。

この本では、芸能人ではない一般の方でも面白いトークができるようにはどうすればよいのかについて藤井青銅さんの考えがまとめられている。今日は第6章の「「ニン」に合うトークとは?」を読んだ。

「ニン」というのは、「キャラクター」と言い換えることもでき、その人が独自に持つ性質や人となりのことである。同じトークでも、話し手の「ニン」に合っていなければ面白くならないらしい。本の中で挙げられていた例えでいうと、若手漫才師がデートネタをするのは「ニン」に合った題材でいいが、40代になってからは「ニン」に合わなくなりできなくなるということがある。

「ニン」に関わる特性としては、年齢の他にも容姿や声なども含まれる。こうした特性に対して、社会では優劣を含んだ評価がなされることが多く、現代では多様性の観点からデリケートな領域とされる一方で、トークにおける「ニン」はトークの面白さに欠かせない要素で、トークがその人のニンに合うか合わないかが重視される。だから社会的に優れてた特性をもつ人がトークすることで鼻について嫌な感じがすることもあるし、普段は劣っているとみなされる特性でもトークによってそれが強みになることもあるということだ。

この内容を読んで、トークに限らず、最近の私は自分自身を社会的な優劣の基準の下で評価し、その度に落ち込んでいたことに気づき、もっと自分のニンを分析してそのニンにあう方向性を考えた方がよいと思わされた。

私は修士1年で就活が始まりつつある。その一環で、研究室の一部先輩が残してくださっている就活の資料を見る機会があった。そこでは、やはり大学時代に培ったリーダー性をアピールした内容が多くあった。建築分野に就職される方がほとんどで、そういった会社ではチームプレーが得意なリーダー性が要求されやすいのだろう。一方で、私はリーダー性があまりなくアピールできることも少ないため自分の将来を少し考えるたびに気後れしていた。しかしながら、「ニン」に合うか合わないかという視点があることに気づかされ、必ずしも自分が劣っているのではなくて自分の適性がハマる場所を見つけられていないだけだと考えると、とても勇気づけられた。

大学で開かれた就活のガイダンスで、自己分析と企業研究が大事だと言われていたが、これは、自分の「ニン」を把握し、そのニンに合うトークならぬ仕事に就ければいいという解釈に至った。

面接等で合否が出てしまうために自分を卑下する場面もあるとは思うが、ニンに合う/合わないという視点も大事にしていきたいと思った。

本の内容に戻るが、ニンには、周囲から捉えられるニンと自分自身が思うニンの二つがあり、これらは乖離しがちだと書かれていた。だからどちらかからの視点のみのニンによるトークだと平坦になってしまう、あるいは暑苦しいものになってしまう危険性があるが、むしろその乖離性を手に取り、組み合わせたトークにしてみると面白くなると書かれていた。「周囲から私はこのように思われているが、実は、、、」といった感じになる。

だから、就活の自己分析の場合も自分からのセルフイメージのみでなく他者から見た自分(パブリックイメージ)も重要で、その両者はどちらも正しいものとして認めることが大事だと思った。「周りの人は自分のことをこういうけど、実際の自分はそうじゃない」と切り捨てるのではなく、どちらも本当の自分として持っておいた方が後々発見できることもあるのではないかとも思った。

ただ、自分の性格や性質に関して社会上の優劣による評価軸にあてはめる方が簡単だと思った。なぜなら、ある程度すぐ答えが出やすくわかりやすいからである。反対に、自分の合う/合わないというのを知って方向性を見出すのはかなりの時間と労力を要するだろうと予想された。

ちょっとずつ頑張っていきたい。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?