音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#42 〜容赦無く磨かれてゆく世界・・・GOOD MUSIC VS BAD MUSIC グラフィックと言葉篇〜
お世話になっております。代表の樋口太陽です。
“音楽はとても大切である” このことを広く感じてもらうために、よい音楽と、わるい音楽を誰でも簡単に比較することができる実験の場を作るプロジェクト"GOOD MUSIC VS BAD MUSIC"という企画が始まりました。
今回は、グラフィックと言葉篇です。
改めてご説明しますと、今回の企画は、左にスライダーを動かすとよい音楽が聴こえる、右にスライダーを動かすとわるい音楽が聴こえる、というものを考えています。
それを直感的に感じていただけるよう、左が天国、右が地獄のような光景が広がっている。さらに、真ん中に映像を映すテレビのようなものが浮かんでいる。そんなビジュアルがあれば企画自体を表現するものとして、ふさわしいものになるかと考えました。
色々な縁があって、ご紹介いただいたのはこの方々、WACHAJACKさん。ファイナルファンタジー作品など、錚々たるお仕事を手掛けられています。
イメージをお伝えして、最初に形にしていただいたのはこちらです。
すごい!
GOODの方は、美しい光が射す夢のような光景。BADの方は荒廃した世界。もうこの時点でイメージはぴったり。素晴らしいです。
そのまま進めていただき、色をつけていただいたものはこちら。
い、色だ!!
鮮やかに彩られたことにより、世界観がブワッと溢れ出てきました。さらにここからお願いしたリクエストは、GOODの方は夏っぽい爽やかな雰囲気というよりは、季節感がなく現実味もない幻想的な色に仕上げていただけないかという点。スライダーの幅は大きく動かせたほうがよさそう・・・など、細かなところを何度かやりとりさせていただいて完成したものはこちら。
ヤバすぎる。
圧倒的な仕上がりです。ちょっとクローズアップしてみましょう。GOODの方は、きれいな滝と白い鳥。それが境目を越えてBADの方にいくと、赤いマグマとコウモリに変わります。
GOODの方は、美しい色合いの雲と、穏やかなシルエットの山々。
BADの方は、ほとばしる稲妻と、禍々しいシルエットの山々。
中心のTVは、Webの実装のためにこのようにパーツに分かれております。中心のツマミを持って左右に動かし、GOOD MUSICとBAD MUSICを行き来できる形になります。
徹底的なお仕事に感服です。説明なしに直感に訴えかけるような圧巻のビジュアルが完成しました。ここでもう一度、全体をご覧ください。
やっぱりヤバすぎる。
世界が、形づくられてきました。
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さて次は、言葉です。
言葉に向き合う時、今までの様々な経験によって、自分一人で完結できるとは思っておりません。多くの人に誤解なく受け入れられるには、自分でない目線が必要です。#34と#35でも多大なるお力を借りた、石川朱音さんの出番です。
まずは、自分が仮につけていたナレーションの言葉を見ていただきます。
音楽との兼ね合いを考えると、このままだと、ナレーションのボリュームが多すぎるということになり、メッセージのボリューム感をかなり削ることになりました。
言いたいことの芯は最初からずっと変わりません。でも、言葉にはいろんな表現があります。より研ぎ澄ませた表現にするため、石川さんに言い換えを試していただき、練り上げていく過程で産まれた言葉たちをずらっと並べてみると、こんなことになります。(これでも一部です)
ひとつ補足をしますと、これは決して闇雲にたくさんのパターンを量産して、その中から「比較的よいやつ」を選ぼうとするような作り方ではありません。たくさんの候補は、石川さんと細かく打ち合わせて言葉をキャッチボールしていく中で、理想型に向かって徐々に研ぎ澄ませていく過程で産まれていったもの。あくまで「ブラッシュアップによる副産物」です。
石川さんとキャッチボールしながら言葉を磨きつづけて、ベストな表現に辿り着きました。
・・・できたー!!
しかし、まだ日本語ができただけ。終われません。今回のターゲットは全世界。世界共通語である英語に翻訳しなければならないのです。
英訳は、タグライン制定の時にもお世話になった、木村康治さんにお願いします。木村康治さんは英語がペラペラなので、英訳することに関してはお手のもの。英訳の基本形が出来ました。
しかし、日本人の感覚だけで進めるよりも、ネイティブの感覚も取り入れた方がよいことは、以前の英語のタグライン制定の時に、痛いほどわかっています。
しかも今つくろうとしているのは、前回のタグラインの時ともまた違った複合的なコンテンツ。単に英訳するだけでなく、クリエイティブ畑の人の観点から「外国人にとってもイケている表現か、誤解なく伝わる表現か」を見極めつつ進めなければなりません。こういう時、誰に頼ればよいのか・・・。
そうだ!吉富さんだ!
※長野の我が家にて、斧で薪を割っている、吉富さんです。
以前より親交のあった吉富亮介さんは、NYを拠点とするワールドワイドな広告代理店の日本法人に在籍している方です。彼ならば、きっと最適な方をご存知だろうと思い、相談させていただきました。
企画概要を伝えます。ありがたいことにお話にノっていただき、繋いでいただいたのは、現在ニューヨークに在住している、Jennifer Andrewsさん。
Jenniferさんは、日本でも、ニューヨークでも、広告代理店にてクリエイティブディレクター・コピーライターとして活躍されてきた方とのこと。
ニューヨークのクリエイティブディレクター。
・・・にゅ、ニューヨークの、クリエイティブディレクターだとぉ〜!?
この連載の中でも何度か書いてきましたが、僕たちにとってクリエイティブディレクターとは、雲の上の存在。ニューヨークは広告クリエイティブの本場。Jenniferさんはその最前線の方。人に頼ることのタガを外してきたといっても、ここまでタガを外すようになるとは想像もしておりませんでした。
ビビりながらも、ニューヨークと繋いだオンラインMTGを行います。Jenniferさんは日本に住んでいた期間も長く、日本語ペラペラで、とてもフレンドリーな方でした。MTGは和気あいあいと盛り上がります。
よかった〜。
ほどなくして、木村康治さんに訳していただいた初稿から、Jenniferさんの感覚を加えて、ブラッシュアップした英訳をいただきました。内容は同じであっても、いくつかの言い換えが出来るということで、試していただきます。面白いことに、フィーリングがそれぞれ異なります。本当に、翻訳って奥が深い・・・英語タグラインの経験がなければ、想像もしなかったと思います。
僕はあまり英語ができませんが、それでも感じれる自分なりのフィーリングと、石川さん、木村康治さんのコメントを総合して・・・ついに英文も固まりました!
ここに至るまででも大変でしたが、言葉の旅は、まだまだ終われません。内容が決まったあとは、これが「どのように聴こえるか」を考えなければなりません。GOOD MUSICのナレーションは、ネイティブの方に手掛けていただこうと最初から考えておりました。
ナレーションをお願いしたのは、Charles Gloverさん。
CMで聴いた方も多いであろうサウンドロゴ、"Panasonic Ideas For Life" の声が有名な方です。過去の自分だと、お願いする発想も浮かばなかったような一流の方ですが、隅々にまで気合いを入れまくったこの企画において、一切の妥協はできません。全てが世界をつくる大事な要素です。
MAエンジニアは、以前から大変お世話になっている佐久間勇児さん。10年ほど前、音楽作家の時から佐久間さんに自分の曲をミックスしていただく機会がありましたが、まさかこんな形でレコーディングをお願いする日がくるとは思いませんでした。
膨大な工程を経て紡がれたテキストが「声」に形を変え、GOOD MUSICと組み合わされていきます。
ナレーションを入れたものはこちら。
たくさんの方のお力を借りて、だんだん世界が形づくられ、容赦無く磨かれていきました。
いかがだったでしょうか。こういった工程はクリエイティブ系の仕事をしている方ならば普通のことかもしれませんが、慣れていない方がこういった工程を知ると、こんなに面倒な事をしているのかとビックリするかもしれませんね。
そういう自分もかつては、音楽の制作に関すること以外は全く知りませんでした。自らが少しずつ経験をして、人と関わりながら、やっとそれぞれの仕事を理解し、リスペクトできるようになった気がします。
他者へのリスペクトの感情は、自分の経験の後にしか産まれない。
改めて、#16で感じていた事が思い出されます。
次回は、いよいよ・・・BAD MUSICの制作についてです。
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