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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#35 〜世界が変わってしまったその後、サウンドロゴと向き合う日々〜
お世話になっております。代表の樋口太陽です。
2020年が始まりました。クリエイティブディレクション講座の同期のみなさまと新年会でもやりましょう、という話になっていましたが、とある事情で延期になってしまいました。
新型コロナウイルスです。
その後、世界はすっかり変わってしまいました。不安に満ちた日々。僕たちの業界にも影響はあり、仕事は基本的にストップしました。
そのころ、コロナに関するクリエイティブアイデアを募集する国連のブリーフが、クリエイターの間で話題になっておりました。
今の世の中は、こういったきっかけでクリエイティブが求められる事もあるのだなぁと、なんだか感慨深いものがありました。
世界のために、あまり大きな事はできないですが、自分が声を担当している「あたりまえ体操」のコロナ対策verを、インドネシア語で録音するぐらいだったら、短期間でもできるかもしれない・・・と思い、COWCOWさんに相談しました。結果、快諾いただき、進める事になりました。
インドネシア語と日本語だけでなく、韓国語と英語も実現し、4ヶ国語のverができました。
インドネシア語ver「Senam yang iya iyalah-versi Corona」
韓国語ver「r당연한 체조 코로나 대책 버전」
英語ver「Let's use our common sense」
日本語ver「あたりまえ対策」
かれこれ9年間ぐらい、あたりまえ体操を歌っていましたが、この時はじめて自分からの提案で歌ったかもしれません。
インドネシア語の指導をしていただいた、加藤ひろあきさん。韓国語の指導をしていただいた、イ・ウンジさん。英語の指導をしていただいた、じんぼぼんじさん、極めて迅速に進めてくださったCOWCOWのお二人。そして日本人のために国連ブリーフの日本語訳をしてくださった、トボガン代表の Kaz Sh inagawa さん、この場を借りて、ありがとうございました。
次に、ミュージシャンはわかりやすく打撃を受けたので、自分たちの知識と経験が、少しでも役に立てることがないかと、遠隔での録音に不慣れな方へのまとめ記事を書きました。
このような自主的にやれる事を進めつつも、ヒマな日々は続きます。考えてみれば、2010年に上京してからずっと、つらい、お金がない、悲しい、などがあっても、ヒマだった記憶はありません。思いがけない、このヒマを活かして何かできないか。そこで、前からちょっと気になっていた分野を深堀りして研究することにしました。
サウンドロゴです。
サウンドロゴはCMの始まりや、終わりなどで流れる、とても短いサウンドのことです。企業名や商品名を歌うもの、効果音だけのようなもの、様々な種類があります。
♪霧が峰〜
♪あなたと、コンビに、ファミリーマート
など、言われてみればきっとわかるし、いくつも口ずさめるのではないでしょうか。でも、一般的にはこの単語の認知さえ、あまりされていません。広告業界の、ごく狭いところで使われる単語です。
そんなサウンドロゴについて、このヒマな期間を利用してもっと詳しくなろう、ということになりました。2020年のこちらの投稿でまとめています。
詳しい経緯は上記の投稿の方をご覧になっていただきたいので割愛しますが、徹底的にリサーチを進めた結果、サウンドロゴの世界の面白さにどんどん魅了されていきました。
前置きしておくと、今までに僕たちは、仕事の中で、サウンドロゴを何度も制作したことがあります。その時は、音楽をつくることの延長だと思っていました。しかし、2019年のクリエイティブディレクション講座で広告について深く学んだ後の目線から見ると、おなじ音を用いた制作物であっても、BGMやアーティスト楽曲など、一般的に連想しやすい「音楽」の用途とは、まったく違う立ち位置にあることがわかりました。調べていくほどに、思うことがありました。
こんなに面白いのに、なんでこんなに、世の中に知られていないのだろう。
この極めて特殊な分野に向き合うため、音楽制作の中でひとくくりにせず独立したものにしようと、SOUND LOGO JAPAN という事業部をスタートしようと決心しました。まずはオリジナルのロゴデザインを制作することにしました。デザインをお願いしたのは以前よりご縁のあった、近藤洋一さんです。
形になったものはこちら。サウンドロゴ界の、ど真ん中を歩むのにふさわしい、堂々としたロゴデザインをつくっていただきました。
タグラインは、オフィス樋口のものと共通です。"To many ears, for many years." 日本語で表すと「たくさんの耳に、ながく残る音を」というタグラインは、サウンドロゴにこそ、あてはまるものだと思いました。
音楽の中でも特殊すぎる領域なので、サウンドロゴという仕事は、音楽プロデューサーという肩書きで手に負える仕事ではないと考え、サウンドロゴディレクターという肩書きの名刺をつくります。
少しずつ、形になってきます。
次に、この事業のWebサイトを制作することになりました。現状ではサウンドロゴについて触れてあるWeb上の情報の数が、決定的に少ない。今こそ、自分たちが、手がける時だと思いました。
以前の様々のトライにより、最初にどれくらいの深さで考えるかの重要さを体感している時。この方の力を借りないわけにはいきません。石川朱音さんです。サウンドロゴの特徴や、現状の抱えている課題をたっぷりと話し、石川さんの目線から切り込んで頂きます。
誰もが日々接触しているはずのサウンドロゴなのに、こういったことが、今まで話題になったことはあったでしょうか。
バンド、作曲、演奏など、音楽をやっている人でも、サウンドロゴのことは全然知らない。広告音楽の世界に身を投じても、サウンドロゴの本質について触れる機会はない。誰がつくっているかも知らない。なのに、この社会を生きる全ての人にとって馴染みがあり、一生の記憶に刻み込まれるほどの力を持つ。とても奇妙でニッチな世界です。
具体的なサイトの設計について考えていただきます。サウンドロゴだけでなく、広告において「音」じたいの重要性や、可能性についても、掘り下げていきます。
石川さんと何度も打ち合わせて練り上げ、だんだんとサイトの設計が出来てきました。あとは、これをどうやって表現するか。サウンドロゴという単語さえも浸透していない状態だと、言葉だけではイメージしづらい。何かしらのビジュアルが必要です。ここで、ぜひMACCIUさんにイラストをお願いしたい、と思いました。
MACCIUさんは、このような素晴らしいお仕事も手がけられております。
それまでに面識はなかったのですが、個人的にファンだったので、作品を購入して、自宅に飾っておりました。
CEKAI 小松健太郎さんに繋いでいただき、願いは叶いました。MACCIUさんにイラストを書いていただき、このようなものが出来ていきます。
いままで、このように美しくサウンドロゴを表すビジュアルがあったでしょうか。
ふだん意識してなかったけど、言われてみれば、そうか・・・というところにも切り込んでいきます。
「音」にはブランディングにとっても様々な可能性があるんだということを、示せるようなものになるよう心がけ、進めていきました。
粛々と制作を進めていた、このサイトを本日、公開します。ぜひ覗いてみてください。
Webデザインは吉田朋史さん、コーディングは野口祐希さんです。
これから先、サウンドロゴにまつわる記事が読めるMAGAZINEページや、実際にわたしたちが制作したサウンドロゴが聴けるWORKSページなど、コンテンツを増やしていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
最後に、なぜ、自分たちがこれをつくる必要があったのか。書かせていただきます。本当に何も知らない状態から上京して、なりゆきのままに音楽の仕事をして、たくさんのトライ&エラーを繰り返していく上で、僕が学んだもの。それは、音楽理論でも、効率よい儲け方でもなく、
「知る」ことの尊さです。
世の中には、一般的なイメージである「好きなものを聴いて楽しむ音楽」というフィールドとは違った、広告音楽という世界があること。その中でもさらに特殊な、サウンドロゴという世界があること。普通に生活しているとそれを知る機会は、あまりありません。それであれば、なるべくおもしろく知ってもらえる場所になればとの思いで、このWebサイトをつくりました。
小学生のなりたい職業で、挙がるもの。2021年現在の上位は、YouTuber、漫画家、イラストレーター、芸能人、ゲームクリエーター、パティシエなどだそうです。なぜなりたいという気持ちがうまれるのか。
それは、その職業のことを知っているからです。
まったく知らないことならば、目指しようがありません。おそらく現状では、歌手やミュージシャンになりたいという小学生はいても、広告音楽プロデューサーやサウンドロゴディレクターになりたい、という小学生は皆無でしょう。それは、こういう世界がある事が、知られていないからです。
僕は、広告音楽の仕事を天職だと思っています。今、運良くこの仕事ができているのも、たまたま人との巡りあいによって広告音楽の世界を知ることができたから。
「知る、知らない」が及ぼす影響はそれだけではありません。 とある企業の決済者が、サウンドロゴという単語、その存在意義をまったく知らない場合。いざ必要になった時に、力を入れることは出来ません。結果、サウンドロゴはあまり重要視されずに形だけのものが制作され、効果的でないサウンドロゴが産まれてしまうこともあります。悲しいことですが、そういうことであれば、そもそも最初からサウンドロゴをつくらない方がよかったりもします。
世の中にとってサウンドロゴがとても大事な存在だと、気づいてしまった自分たちにできること。それは、自分たちがよいサウンドロゴをつくるだけでなく、多くの人にサウンドロゴについて、より知ってもらうことです。
今までよりも、サウンドロゴという単語が認識され、その存在が大事にされるよう、わたしたちは、力を注いでいきます。
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