東洋医学講座 244
〇心の実邪
▽心臓病と他臓との関係
病気には、実邪と虚邪の区別があります。体力も充実している実証タイプの人には、実邪がつきます。また、弱い体質の虚証タイプの人には、虚邪がつきます。もし、虚証タイプの人に実邪が入ったときは、それは死を意味し、病証としては成り立ちません。
▼心に邪熱が入った場合
心臓病で熱邪が旺するときは、腎水を侮るということについて説明します。
腎水は、本来、心火を最も剋しやすい性格をもっています、心火の力が100、腎水の力も100というように平衡している場合はよいのですが、心が100で腎が70のような状態になりますと、力のバランスが崩れ、夫唱婦随が転倒の状態となります。水剋火で水が夫、火が妻で、水夫が火妻を制するのが正常の姿であるのに、このような状態では夫たる水が力弱く、火たる妻に従わざるを得なくなります。そこで〝侮る〟というのであります。侮るというのは、もともとは従うべきものが従わないで逆らう、下克上の状態をいいます。
普通の疾病の場合は、腎は肺と協力して一定保温や一定の浸透圧を保とう働き、心は発熱作用によって治病、克服に努めるものであります。しかし、心に疾邪が入った場合は、心は36.5℃の恒温を保とうとする腎力を破り、発熱してしまいます。
心疾で心がひとり亢進している場合には、心の力が70だったのに亢進して100になり、他臓の力が70を保っている場合のありますし、また、心の正常の力100を保ち、他臓の力が70に低下して心がひとり亢進した形をとっている場合もあります。ようするに、心力が一過性化、または体質的に亢進している状態のときに、心に病邪が入り、さらに病的亢進が加えられたものであります。
このような場合の心熱は、邪熱であって、恒温を作る熱ではなく、他臓を剋しやすくなります。とくに順剋の肺金のほうへ相剋の力が及び、またそればかりではなく、逆剋の夫たる腎水まで侮ります。
このような場合は、腎水を補して(70+30=100とする)亢進した心熱を収めます。つまり、一定の温度を保とうとする腎を補し、力を強めますと、水制火となって、心の邪力を抑えることが出来ます。心を制することによって、肺金を救うことが出来ます。肺金を救わないと、次は肺系の病気になります。
肺にとって一番恐ろしいのは、心の邪熱です。肺の弱い人が暑い部屋に入ると、ムッとして胸苦しくなるのは、暑さに弱いからです。これは火剋金現象であります。したがって、肺結核の人は転地療養は、秋のような気候のところが一番よいのであります。このような気候のところが、肺が最も働きやすいからです。このような基本原理が分かると、どこに転地療養したらよいことが分かります。
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