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東洋医学講座 257

〇心と肺

▽心と肺の拮抗関係について

▼心剋肺の症状

暑い部屋でたくさんの服を着て、非常に暑い条件にしておくと、胸苦しくなります。いわゆる呼吸困難になります。一般的には酸素不足のためだと思われていますが、それだけではなく、肺が熱を嫌うからです。これが火剋金現象であります。

肺金は収斂の働きで、固まろうとする働きが熱のために開かれてしまい、収斂する働きが停止されます。肺が暑いところを嫌うのはそのためです。肺は秋のような状態を好みます。これは、肺の力を発揮できる条件温度であり、この状態を肺旺といいます。すなわち、収斂現象、加冷現象の条件の下で肺は旺します。したがって、暑すぎれば肺は旺相死囚休の死の状態になり、苦しくなるのは当然であります。

旺相死囚休の絡みは、四季や二十四時間の中だけあるのではなく、生活や食べるものの中にも、どのようなところでも働いています。例えば、一日にコーヒーを何杯も飲むと、心臓が亢進して肺臓が苦しくなります。これを旺相死囚休の死の状況といいます。このように旺相死囚休はどこにもあり、相生・相剋の応用原理であります。

話は少しそれますが、コーヒーなどを少しだからといって毎日常飲するのは、最もよくないことであります。これはその人の体質・体力によっても違いますが、それを全部見抜いていかないと、治療家は治療をできません。それが診断力であります。いくら名治療を施しても、患者が家に帰って不摂生をしているのでは治りません。不摂生の方が治療に勝ります。患者の多くは、自分の不摂生を棚に上げて、治療家を非難しがちであります。

したがって、治療よりも診断が重要になります。診断力があれば、その疾病の根源を教えて、「これとこれが病気の原因になっているからやめなさい」といえばいいのであります。説得力があれば患者はそれで摂生をし、治療しなくても疾病の原因を断つのでそれだけで治ります。これが本当の自然治療法であります。

疾病の原因をやめさせ取り除くと、自然治癒能力の働きにより、もとの健康にかえり治ります。病人にはそれぞれ病因があり、その病因が自然治癒能力にブレーキをかけています。それが何であるかを見つけることが最大の治療法です。

優れた診断力を持ち、患者に対する説得力がある人〝上工〟、それがない人を〝下工〟と『素問』ではいっています。

話を戻しますと、暑すぎると胸苦しくなって涼を求めます。加冷現象を求めます。これは肺が旺気を求めていることです。暑すぎると、肺は熱を忌み、肺の旺気する加冷の涼を求めます。


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