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東洋医学講座 265

〇脾にはどのような働きがあるか

▽消化作用の仕組み①

口に入った五味・飲食物は、口腔でよく咀嚼されて、だ液と交わり消化されます。しばしば、「胃腸が弱いから」または「弱っているからおかゆを食べる」という人がいますが、実はこの考え方は間違いであります。唾液中にはプチアリンという消化酵素があり、糖質をデキストリンという麦芽糖に分解しますが、よく噛まないでプチアリンが分泌されないと、胃に負担をかけます。咀嚼することにより胃が受け入れの準備もします。よく噛むということは、食物を嚙み砕くとともに唾液によって完全消化し、胃の消化作用を助けることになります。

しかし、おかゆはよく噛めなく、またよく噛まないで飲み込めるので、唾液がよく分泌されません。したがって、結果的には胃によくないということになります。ただし、歯が悪い、身体が衰弱しているなどの場合には、おかゆのようなものでよいと思われます。四季別では、冬は比較的おかゆを食べてもいいのですが、春・夏・秋はよくありません。

また、口でよく噛むということはその噛み合わせによって、口気が発生し、体エネルギーの一部となり、口と連続している食道や胃腸の準備運動にもなります。そして、上層に連続している脳も刺激を受けて発達します。大袈裟な言い方をすれば、よく噛むことによって、目も耳も鼻も頭も皆よくなります。

咬筋をよく動かせば動かすほど、口気が発生します。口気は上焦の気の一部です。胃腸からの気だけが三焦の気ではありません。体は機械の精密さよりもっと無駄がありません。本人自体には無駄があっても、体そのものには全く無駄がありません。

このように咬筋の働きは、口気を発生させるとともに、唾液と交わって消化作用をします。

咽喉は、ゴクンと食物が通ればいいというだけではありません。ゴクンという一つの嚥下運動が咽気を発生させます。もし、食べたものが間違って食道へ入ったら大変なことになります。食べ物は食道へ、吸気は気道へ、と振り分けるこの咽喉の働きは極めて精密であり、人間に意志で左右しようにもできるものではありません。一度でも間違ったら命とりになります。

この咽喉の働き、つまり咽気も上焦の気の一つです。

もし扁桃腺を腫らすと、痛みで食べ物が通ることが出来なくなるばかりではなく、精神的にも憂鬱になります。このような精神状態になると、上焦の気の働きが落ちて、正常な生理作用を低下させることになります。

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