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東洋医学講座 292

〇脾と緩脈

▽脈診部位と四季脈

●人体の脈所


人体で脈が分かりやすいところは、太い動脈が体表に浮いているところであります。古人の説く全身の脈所には、頭部に3か所、手部に3か所、足部に3か所の天人地の脈所があります。

首から上、頭部の脈所は、上焦の働きを通じて全身の状態が現れ、手の脈所は、中焦の働きを通じて全身の状態を現し、また足の脈所は、下焦の働きを通じて全身の状態を現します。

全身にめぐる血液の流動状態は、全身にまんべんなく循環しながら、その他使用しているからだの組織に血液が多く集まって組織を動かせます。例えば、頭をすごく使っている人は、天部の点部、こめかみの脈が強く打っています。

冷え症の人には、足の脈と人迎部の脈を比較すると異なる人が多いようです。足の脈がゆっくりしていて、人迎の脈が速いのは上実下虚であります。一般に寸口の脈が使われるのは、寸関尺地1か所で全身の脈が見やすいためであります。それに浮中沈も分かりやすく、便利であるからです。

●緩脈とは

緩脈とは、四季脈の一つです。臓器では、脾臓が旺しているとき、すなわち夏の土用の時期と、1日では午後にこの脈をうつのは正常であります。

病脈は、四季脈の五原則の脈を基本に変化したものなので、五原則の脈を把握しておくと、病状も体調変化の脈も理解できます。

緩脈は、陰遁の始めの脈で、夏の洪脈に少し陰遁の気が伏入してきます。そして、洪脈の遠心性の強い脈が、全身に緩んで求心性が少し働きかけてきた脈であります。車に例えれば、アクセルをいっぱい踏んで走っているときを洪脈とすれば、アクセルを離して余力で走っているときの脈が緩脈であります。したがって、緩脈はスピードはあるが、力は洪脈ほどありません。そして、沈脈は下に沈んでいる脈のことですが、洪脈や緩脈は浮いています。

長夏でないとき、体に変調をきたして出る緩脈のような脈は、からだの中で一過性に超過の状態になったときです。これは一度ワーッと発熱して、一旦洪脈になり、その発熱がストップして緩脈になるためで、これは正常な脈ではありません。

健康標準脈とは、春夏秋冬の四季の脈に応じた脈のことです。春・秋は中脈を呈するのが正常な脈であり、暑いときは暑い脈、寒いときは寒い脈が正常であります。このように、四季の脈は四季に応じてめぐっているので、固定した考え方をしてはいけません。

秋は中脈で、しかも濇脈であれば正常です。しかし、秋でも夜は中脈の内で沈み、昼は少し浮き加減の中脈が多いです。これは、四季と同じように、1日の中でも、木火土金水がめぐっているからです。したがって、同じ秋でも濇脈を中心として少しずつ変化を表すべきであります。


脈の長短は、体の中に熱を受けると、脈は浮きやすくなって、速く、そして、長くうちます。寸関尺の脈の長短で表してみますと、寸関尺の幅を超えてうつ脈を長といい、寸関尺の幅に足りないものを短といいます。図のように寸関尺を横にしてみた場合、幅が短く盛り上がりも少ないのは、体内が冷えているのであり、体力が弱っていることを示します。長とは、寸関尺からあり余る幅をもち、盛り上がりも大きいです。これは体力が強く、恒温よいりも熱のある傾向を示します。

左右の脈に違いがあるのは、体の左右のアンバランスを現わし、また、心・肺のアンバランスも現しています。しかし、脈診のみに頼ることはせずに、望聞問切すべてを総合的に診ないといけません。

ただし、一つのことを深めることは必要であり、得意の手技をもつことも必要かつ大事なことですが、あえて得意でない他のものも使わなければいけません。いろいろのことを参考にして総合的に判断し、なんでも施術が出来るように学ぶ必要があります。

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