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東洋医学講座 281

〇脾と涎(よだれ)

▽涎は消化力に関係する

脾・胃は消化体なので、消化液が必要になります。希釈液の多い涎も消化液の一種であります。脾・胃の門は口腔であり、口腔は第一の消化器であります。物はよく噛んで食べる必要がありますが、これは消化液の分泌を促進する役目も果たしています。

胃が悪くなったときは、柔らかいお粥より固いご飯を少量だけ噛んでたべるのが良いのであります。本当は何も食べないほうが良いのですが、柔らかいものばかり食べていたのでは、胃の働きがどんどん低下してしまいます。体全体が弱っている人は消化力も落ちていますので、すぐに消化・吸収できるものを食べると良いわけであります。

消化液、粘着液、希釈液は別々に働いているわけではなく、一緒に働きながら主体性を持って働いています。つまり、物が入ってきたときには噛むことによって消化液が出てきます。その次にその物をまとめる働き、口の中の唾液だけでも物をまとめる粘着する働きをもっています。体の中には異物が入ってきたら、たちまちそれをまとめようとする力が働きます。また、希釈液は洗浄性の働きを持ち、食塊を咽喉の方に流れやすくする働きをします。

唾液が少ない、口が乾く、咽喉がかれる、ということは腎の力が足りないということになります。逆に唾液が多いということは、脾気も腎気も盛んということになります。

したがって、脾の力、腎の力が落ちたときは、多少腎気は出ようとしても、脾は誘導してくれないために口の乾き方が違います。すなわち、脾の力が落ちたときは、一応腎気は出ようとしても、脾が誘導してくれないための口の乾きは割合は少なくてすみます。しかし、腎の力が落ちたときは、口内だけではなく、咽喉の方までカラカラになってしまいます。

子どもと老人を例にとります。人間の一生の輪廻を考えると、働く主体性がそれぞれの年代によって違います。母親の胎内にあるときは腎気が盛んであります。その腎精体は脾化されて生育し、成人に脾化された時の年齢は二十歳です。それ以後は、生成の脾化はされません。二十歳までは腎精体でまだまだ未完成なのですが、脾化が進むにつれて腎の力が弱くなり、逆に脾の力が強くなっていきます。したがって、成長期の間、腎の力は極めて旺盛な訳であり、涎も多いともいえます。

子どもは腎旺脾化旺盛体であります。したがって、消化液が過剰になり、涎も多くなります。つまり、腎旺体なので水液系のものが多く出てきます。よく泣くので涙も出ますし、小便もよく出ます。非常に水気が多いので腎旺体であるということがよく分かります。

老人はどうかといいますと、唾液が少ないために咽喉に餅などをつっかえさせることがあります。口内だけではなく、全身の水液が少なくなり、しぼんでしわが多くなります。

また腎は生命力でもあります。人生の陰遁、老人期に入りますと腎の命源がどんどん消滅していきます。そして、腎力減少と比例して、体が老化していきます。

このように、子供と老人を比べると、腎の盛衰作用がよく分かります。涎を通して、腎液と脾化作用、体の働きというものがよく分かります。

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