日常短編シリーズ:雨

雨が降っている。窓を開けて外を覗くと、アスファルトの所々に光が反射して、無数の波紋が浮かび上がっては消える。



外に出る予定がない時の雨は嫌いではない。家の中で聞く雨音は、心に安らぎを与える。
家の壁や地面、様々な場所から雨音が響く事で、自分が薄い膜に包まれているような感覚に陥る。
なぜ安心感が生まれるかを説明することは難しい。もしかしたらそれは遠い記憶を覗き見る事でしか解明できない謎なのかもしれない。





雨の音は強まったり弱まったりする。
強まる事で何かに包まれている感覚はつよくなる。ずっと包まれていたいとさえ思う。ただいつまでも包まれていては、その安心感さえわからなくなる。雨が弱まり出したら外の景色が気になり出す。窓を開けて数が少なくなった雨の音を聞き、雲から顔を出し始めて漏れ出した太陽の光をを感じようとする。

また雨が強まり出した。滝が近くにあるような音がする。

アスファルトの所々に光が反射して、無数の波紋が浮かび上がっては消える。

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