見出し画像

2年目の先生との学び

 私の自治体の2年目教員の研修は、授業力向上に焦点化して実施しています。校内研修は、授業改善にかかわるテーマを設定し年間を通じて取り組みます。そして、集合研修は、テーマ研修の進捗状況を振り返るとともに修正する機会として、夏季休業中に2回と冬季休業中に1回の計3回実施します。本年度は、コロナ禍で1回目をWebで実施したため、集合研修は2回となりました。私は、「中学校社会科及び高等学校地理歴史科・公民科」講座に携わりました。

 冬季休業中に実施した最終回は、「自身の実践を振り返り、成果と課題を明らかにするとともに、今後の授業力向上に向けての方策を見いだす。」ことをねらいに実施しました。
 この講座に向けて担当者(採用5年目の教員で当施設2年目)と私は、各回に持参するテーマ研修のレポートを読むだけの交流にはしたくないとの思いで一致していました。また、社会科及び地理歴史科・公民科に抱かれがちな暗記教科のイメージを打破するために授業改善をすすめたいとの思いも一致していました。ですから、私たちが実施する講座も課題解決型の展開になるよう計画しました。
 そこで、今回は課題追究の場面の全体協議の教材として、中学校と高等学校からそれぞれ1名に30分程度の模擬授業をしてもらうことにしました。事前に通知はしていないので名のり出てくれるか不安でしたが、午前の終盤に依頼しました。長い沈黙はありましたが、予定通り実施することができました。
 中学校の単元は地理的分野の「東北地方」、高等学校の単元は世界史の「世界恐慌とファシズム」でした。
 私は、それぞれの授業を次のように捉えました。
 中学校教員の授業は、東北地方を概観する場面で、地形と農業(稲作)の関係を断面図の作成を通して理解させるというものでした。作成の過程では、新たな情報(山脈や山地など)を得るたびに断面図を更新(書きかえる)させ、稲作が行われている地形と稲作に必要な水の存在に気付かせます。こうした作図体験を通して、他の地域の学習でも使える知識が身に付くものと思います。
 高等学校教員の授業は、ヒトラーに対する生徒がもっているイメージと当時のドイツ国民が描いていたイメージの違いからファシズムについて考えさせるというものでした。生徒がもっているスマートフォンを駆使して生徒の考えを引き出し、それをもとに意見交換するという展開でした。ヒトラーに対するイメージの違いから生徒に課題解決の意欲をもたせ、今の日本に共通することはないかを考させる、まさに歴史に学ぶ展開だったと思います。
 全体協議では、校種を越えて疑問や意見が交わされました。
 講座終了後の受講報告には、次のような記載があり(要約しています。)、受講者同士が刺激しあい学びあっている様子がうかがえます。
 
▶︎中学校教員:他の先生の模擬授業を見て、自分にももっとやれることややらなければいけないことが山のようにあると、あらためて実感しました。「どれだけ授業に意味をもたせられるか」、「それを学ぶことが今後の人生にとってどう生きていくのか」などについてもっと考えます。
▶︎高等学校教員:生徒自身が断面図を作成しながら地形を理解するという取組がユニークでした。教師から新たに与えられた情報を踏まえて断面図をアップデートすることを通して、地形について体験的に理解させる方法は、今後取り入れていこうと思いました。

 さて、私たちが直接かかわる2年目教員の研修は終わりました。
 来年度に向けての課題として、2年目教員には指導教員がつかないことから、私たちの早期のかかわりが必要ではないかと思っています。管理職等に日常的な指導を期待したいところですが、現実的にはかなり難しいと思われます。たとえば、今回の研修テーマの表現を見ていても、「それ、社会科のテーマ?」と感じるものがいくつかありました。
 そこで、来年度も年間3回の研修機会とするなら、第1回を年度の早い時期にWebで実施できないかと思います。自身の課題やその課題解決を図るための研究計画を提出させ、対象の2年目教員と担当所員が計画書等をもとにやりとり(研究テーマの設定や内容、方法等へのアドバイス)し研修への自覚を高めさせられればと思います。また、第2回と第3回に求めている研究の成果報告のまとめ方、発表の方法も工夫できないかと思います。たとえば、第3回の最終報告なら、自身の成果を3分以内の動画にまとめてクラウドに提出させ、対象者全員が事前に視聴して講座に参加する。そして、当日は徹底的に協議するなど、コロナ禍で当然となったICTの活用やオンラインと集合、事前と当日のメリハリがあってもいいのではないかと思います。

 3年目からは、自律的な学びになります。2年目研修の終了時点で、多くの先生が、受講報告に「学び続けたい。」と表明してくれました。もしかしたら、各学校の現実の中で、この思いは長続きしないかもしれませんが、現時点でこのように決意してくれたことをうれしく思います。同期や私たちとのつながりを大切にして、当自治体の教育、特に社会科、地理歴史科・公民科の授業を充実させてほしいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?