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『スターオーシャン:アナムネシス』、星の海の旅路の終わりに寄せて(2021/9/27追記あり)

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2021年6月24日。1つの旅路が終わった。
約4年半に渡って提供されていた『スターオーシャン:アナムネシス』がサービス終了を迎えた。
筆者がプレイヤーとして遊んだ期間は約2年半だった。次々に新作が興されては消えていくソシャゲ界隈に於いて、4年半は往生出来た方とされる事が多い。
このnoteでは、『アナムネシス』が終わるに至った原因と悲喜こもごもを、本作が終わったという事実を咀嚼しつつ本作に対する気持ち一度吐き出すために記す。
この記事は、あくまでも個人の感想であり、当時のユーザー全てがそう思っていたわけではないことをご理解願いたい。
これが初投稿ということもあり、誤り等は生暖かい目で見ていただければ幸いである。

終わりの始まり

元々、『スターオーシャン』シリーズとはスクウェア・エニックス発売、トライエース開発のタイトルとして世に出て、『アナムネシス』から見た直近のコンシューマータイトルであった『5』の評価が芳しいものではなかったのでサービス開始前は不安の声が大多数を占めていたという。

そしてサービス開始後はハイクオリティなCGがスマホでスムーズに動く戦闘シーンや、トライエース作品お馴染みの桜庭統氏による書き下ろしBGM、シリーズの流れを組むメインストーリー、多数のコラボイベントなどで盛り上がった。筆者がプレイを始めた2年目の時点で斜陽に入り始めていた感じはあったが、それでもアクティブユーザーはある程度確保出来ていたと思われる。
だが、2年目の夏に表記ミス等の不手際が相次ぐようになり、キャラの性能に直結しかねないバグが年単位で放置されるなど暗雲が立ち込め始める。

そして2年目の冬、ある意味ゲーム史上に名前を残しかねない大事件が発生。
当時の本作広報担当者がユーザーや下請けに対する蔑みを含めたコンプライアンス違反の発言をSNS上で繰り返していたことが判明し、更に当時の開発Pに一部のユーザーとの癒着や展示用非売品グッズ等の物品横領等の疑いが浮上するという前代未聞の事件であった。
その他にも癒着相手のユーザーに対するリアルイベントへの当選優遇及び未実装イベントの情報漏えい、公式生放送出演者に対するセクハラ発言、鬼籍に入られて間もなかった石塚運昇氏が演じていたキャラを笑いの種と見なしていたと取れる発言まで浮上するなど、叩けば叩くほど埃が飛び散った。
度々、ソシャゲ界隈ではガチャの結果が極端に恵まれていると「運営と癒着してるだろ」などと冗談めかしたリプライ等を見るが、アナムネシスではそれが本当だった可能性が高かったのだ。
【2021/9/27追記】
この一部ユーザーとの癒着や当選優遇等に関しては後に裁判沙汰にまで発展していたらしく、筆者は本noteにコメントされるまで知らなかった(情報提供感謝します)。
この癒着等はデマである事と決着されたそうだが、この時の運営による対応の杜撰さや当時発生した著しいキャラパワーのインフレ等も相俟って、運営に対するユーザーの怒りの爆発=炎上はどのみち避けられなかった、と思う。結局の所、運営が広報担当者の発言と後述のガチャで火薬庫に火を投げ込んだのが全ての引き金だったのだろう。

「アナムネシス 炎上」で検索すれば確実にヒットし、SNS上でも取り上げられたため、負の方面で『アナムネシス』のタイトルの名前が広まってしまった瞬間であった。

結果、広報担当者は電光石火の勢いで名前がクレジットから抹消され、Pは騒動の末にひっそりと更迭。騒動から暫くが経った5月頃にふとスタッフクレジットを見ると、何の因果なのかPの名前が広報部分へと移動しており、その後の公式生放送で言及されることも一切無かった。
広報担当者のツイートに関しては、かなり口の悪い愚痴を零した上にその内容が内容で、更にその担当者は公式生放送で度々茶々を入れていたため悪印象を抱くユーザーも少なくなかった事も要因となり事態が悪化した部分もあると思われる。速やかに謝罪して会社として何らかの対応を取っていればこんな大きな火種となる事はなかったのかもしれないが、後の祭りである。

その時期からだろうか、アクティブユーザーが目に見えて減った。ゴールデンタイムにイベントのマルチバトルを自発しても中々人数が集まらず、全滅覚悟でソロで挑むことも少なくなかった。
今にして思えば、それが「終わりの始まり」だったのかもしれない。

音もなく近付く「終わり」

それから2年半、『アナムネシス』は静かに坂を転がり落ちていくだけだった。
フレンドの一覧に目をやれば、直近のログインが「○○日前」と二桁に到達したフレンドは珍しくなかった。直近のログイン日時の表示限界である99日前に達したフレンドも日に日に増えた。
ユーザーが目減りしていくこと自体はソシャゲにとって不可避的な問題だが、それは日を追うごとに加速して過疎化が進んだ。
メインストーリーは第3部「The Leash Code」が佳境を迎えつつあったが、いやに駆け足な展開が目立つようになった。
温められていた謎があっさり答えを提示され、一応伏線自体は張られていたとはいえピンチをあっさり乗り越え、主役の1人が目的の1つと定めていた行動があっさり終わった。
それこそ、まるで急かされて第3部の結末を描かざるを得なかった事を想起せざるを得ない加速の末、所謂「俺達の戦いはこれからだ!」の結末を迎えた。

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イベントも、ストーリーも無くただボスと戦うだけのイベントや、過去作キャラの掘り下げと見せかけて実際は普通に読んでも1本あたり5分と掛からないショートストーリー3本立てのイベント「ワドラム」イベントが連続するようになり、季節イベントすらそれらのイベントで消化された。
スクウェア・エニックスとトライエースが手掛けた『ヴァルキリープロファイル』シリーズとのコラボイベントも開催されたが、『ヴァルキリープロファイル2』コラボはまだしも、最後となった社内コラボイベントはワドラムで消化され、おまけに『ヴァルキリープロファイル』側のキャラが一切絡まなかった。
実装されたキャラも、モデルが使い回せるキャラが半数を占めており、筆者はこのコラボイベント中に「長くは持たないだろう」と予感していた。幾ら自社コラボとはいえ、シナリオに力が入れられないところまで弱っているという光景をまざまざと見せつけられたからだ。(寧ろ、3部構成かつ同作シリーズでおなじみの変態との戦いを濃く描いた過去コラボが異常だったが)。

その予感が確信となったのは、2020年年末から2021年春のことだった。

迫りくる「終わり」―エクシードキャラ実装

予め発表されていたロードマップ上にない「エクシードキャラ」の実装がその始まりである。タワー型クエスト「スフィア211」や最高難易度「神級」イベントでアドバンテージがあるキャラで、メンテナンスの前日に放送されていた本作のラジオ番組「スターラジオーシャン」で突然実装が発表され、メンテナンス明けに案の定炎上したが、体感としてエクシードキャラそのものが火種ではなかった。問題はその排出形態だった。

そのエクシードキャラは期間限定実装で、基本的にキャラが排出されるガチャチケからは排出されず、ガチャ石に相当する「紋章石」を使用したガチャでなければ排出されなかった。例外的に本アプリの課金パスのおまけについているデイリーの無料10連キャラガチャや、タワークエスト報酬のガチャチケからは排出されたが、それでも低確率である。
この仕様に関する告知は殆ど無く、そして「あの事件」を知るユーザーからすれば運営に対する失望を抱くには十分すぎる理由となった。

先述した2年目に起きた大事件の発端となったのは、あるガチャだった。名を「メモリアルガチャ」と言い、メモリアルガチャ限定と銘打たれたキャラを巡って炎上し、2年目の大事件へと繋がった。そのガチャの仕様と、エクシードキャラガチャの仕様が殆ど同じだったのである。
そのメモリアルガチャは目玉かつ新規実装キャラである「操機のプリシス」を含む一部季節限定キャラのみが最高レアリティ(☆5)として排出対象とされていたが、排出率はそれらのキャラで一律に設定された闇鍋かつ天井のない泥沼ガチャであった。
無課金でも入手可能な紋章石で最高レアリティ確定ガチャチケを含むアイテムパックが毎月個数制限があるものの購入可能であったため、どうせガチャを回しても目当てのキャラが望み薄ならとそちらを購入していたユーザーも少なくなかった。
その矢先に「操機のプリシス」はガチャチケからの排出は無しという仕様が同ガチャの開催時に明らかとなり、事前告知のない排出仕様にユーザーは激怒。「ここで逃せば推しの期間限定版が来年まで取れない」と課金してでも深追いをし、このガチャの復刻対象(目玉が操機のプリシスであることを考慮すると所謂外れ枠)にそのキャラが含まれていたユーザーもまた悲嘆に暮れた。そのガチャを10連で1度回す実績報酬でしか手に入らないチャットスタンプがあったこともかなり悪どいとしか言いようがない。

これに対し、それまで我慢を続けていたユーザーが怒りを爆発させ、上述の広報担当者のTwitterアカウントを掘り当ててしまったことが、一時はスクウェア・エニックスの主力アプリとして名を連ねていた『スターオーシャン:アナムネシス』という作品のブランド崩壊へ繋がっていった。

メモリアルガチャ自体は当時の炎上を受けて仕様を変更し、「一部キャラの期間限定版の不定期開催復刻ガチャ」となったことで一応は沈静化したが、筆者としては「もうこの手のガチャは流石に開催しないだろう」と思っていた。
だが忘れた頃にやってきた。帰ってきてしまった。あれから何も学んでいなかったのか」と、スマホをリビングのテーブルに置いて頭を抱えた。
その後、結局エクシードキャラは3人実装された。その内2人が実装を待望されながらも延々実装されないままだった『SO2』『SO3』それぞれのキーキャラであり、実装間隔そのものもそれほど空いていなかった事を考慮すると、終わりを悟ったがまだある程度の猶予があったのか、少しでも稼ごうとしたのかもしれない。
或いは、もうその時点で終わりは確定していたので、せめてモデルが出来上がっているキャラだけでも出そうとしたのかもしれないが…。

迫りくる「終わり」―ユニバースパス

最近のソーシャルゲームアプリでは決して珍しいものでは無くなったサブスクリプション機能が、本作にも「ギャラクシーパス」としてあった。
その内容はこのようになっていた。
・武器/アクセサリー保管用倉庫+400枠
・アイテムや強化素材を回収出来る「ディープスペース探査艦」+2隻
・コラボ及び復刻の期間限定キャラを除いた最高レア1名確定の専用ガチャ
・マルチバトルの場合、他の参加者も一定確率で恩恵を受ける事が出来るイベントミッションにおけるアイテムドロップ+1枠
月額980円で日々のプレイを快適にする機能が凡そ備わっており、継続的に購入していたユーザーも少なくなかった。特にイベントマルチバトルでのアイテムドロップ枠を1つ増やす機能は非常に有用で、それを目当てにしているという声も度々聞いた。

しかし、2021年1月21日。
同日のメンテナンスで突然ギャラクシーパスのプレミアム版に相当する「ユニバースパス」が期間限定で販売開始、実装された。
このパスは3回まで重複購入が可能で、特典内容は
・キャンペーンと重複可能なキャラ強化/進化費用-15%(ギャラクシーパス重複購入で効果が上乗せ)
・ギャラクシーパス専用キャラガチャを10連で3回回せる権利
であった。前者ははっきり言っておまけ未満であり、長く遊んでいるユーザーはゲーム内通貨をダブつかせていたため何の足しにもならず、即座に後者が本命だろうと看破する声が相次いだ。
ギャラクシーパス専用キャラガチャは10人目排出時のエクシードキャラ排出率が18倍とされており、☆5キャラが排出された場合は☆5内の更に細かいレアリティである「非エース/エース/エクシード」の中からエース若しくはエクシードキャラが確定排出とされていた。
排出率18倍、そう書けば魅力的に見えるかもしれない。だが元の排出率が1%しかないそれが18倍。そのガチャを回せるチャンスはたった3回しかない。

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当時、筆者はチベットスナギツネのような顔になった。最早怒りも何もかもを通り越して「」を取得した。画像は最初のエクシードキャラであり丁度フォルダ内に残っていたチベスナめいた表情の本作ヒロイン、イヴリーシュである。
ギャラクシーパスは有効期間1ヶ月で980円。対してこのユニバースパスは有効期間2週間で4900円。ガチャを30連回す代金と考えれば安いのかもしれないが、そこまで払ったのならいっそ最低保証としてエクシードキャラの排出は確定にすればよかったのではないのだろうか。
最早存在そのものが罠のようなこのパスを購入したユーザーがどれだけいたのか、そもそもこれを重複購入したユーザーはいたのかは永遠の謎だが、ロードマップにないこのユニバースパス実装で、筆者はただ「さてはなりふり構っていられなくなったな」と感じることしか出来なかった。勿論買わなかった。

迫りくる「終わり」―「使い回し」

先述の「ワドラム」イベントが開催回数を重ねて来た頃、ちょうどバレンタインイベントが始まった時期だった。
年が明けても一向に開示されないロードマップ、最早見飽きてきた「ワドラム」で使い回されるステージの背景と何度も顔を合わせてきたボス達に辟易としてきた時、バレンタイン限定キャラが2人実装された。
片や初代作ヒロインの数年ぶりとなる新規バージョン、片やPSP版準拠のため声優が釘宮理恵女史という顔ぶれだったが、様子がおかしかった。
その原因は「声」だった。季節限定キャラは凡そ新録ボイスであることが多かったのだが、2人揃って戦闘ボイスがライブラリと思われるボイスの使い回しだったのだ。
2人ともなんとかバレンタインという季節柄に合わせたボイスを当てていたが、それでも違和感が凄まじいボイスがちらほらと当てられていた。
少なくともハロウィンの季節限定キャラは新録されていた(クリスマスキャラはそもそもガチャを回していないので不明)。だというのに急に年明けになってからボイスが使い回されるキャラが実装された。

一方で、最後のコラボとなった『ヴァルキリープロファイル』から登場した2人と、その後に実装されたアイドル衣装に身を包んだ『アナムネシス』オリジナルキャラ2人は新録という異様な状態となった。

「まさか、パートボイスを録る余力すら無くなったのか?」

1つの懸念がよぎった。長くは持たないだろうと思っていたこのアプリにも「終わり」が近付いているのではないかと。

そして「それ」はやってきた

「それでも、それでもまだ少なくとも年内は持つはずだ」
筆者はいつしか祈るような気持ちを抱いていた。『ブルースフィア』名義のキャラに未実装が多く、実質最後となった公式生放送内で「夏にまた無観客であっても星海祭(公式オフラインイベント)をやりたいね」という趣旨の発言があったからだ。

だが、界隈に衝撃が走ったのが2021年2月25日。トライエースがスクウェア・エニックスとタッグを組んで提供していた『ヴァルキリーアナトミア -ジ・オリジン-』が同年4月27日15時にサービス終了となる発表が成された。
この発表は『アナムネシス』ユーザーにとっては他人事ではなかった。似たような低空飛行状態だった『アナトミア』が一足先にヴァルハラ送りになるということは、『アナムネシス』の自沈処分(サービス終了)は時間の問題である可能性が非常に高かった。
その時点での『アナムネシス』ユーザーの声と反応は様々だった。諦観、焦燥、悲壮…或いは「アナトミアが終わった分、こちらに注力するのではないか」というある種の楽観視。
そして、『アナトミア』の終了が確定した以上、トライエースが抱えるソシャゲは『アナムネシス』のみとなってしまう。スタッフの求人情報は出されていたがトライエース関連タイトルのSteam等への移植を含めた新作の情報も一切ないため、スクウェア・エニックス側が延命に走るのではないかという声。

それらがあっさりと打ち砕かれたのは約2ヶ月後の4月22日。丁度『サクラ革命』が約4ヶ月(後に終了が延期され約5ヶ月)でペインキルされることが発表され、Twitterのタイムラインが騒然となったその日の15時頃だった。
その日、『アナムネシス』は毎週木曜14時から行われる定期メンテナンス中で、普段なら15時を少し過ぎた頃にその日から開催のイベント情報やガチャの更新内容が公式サイトで発表されていたが、15時を過ぎても一向に公式サイトが更新されない。
「なにかあって更新が遅れているのだろうか」
呑気に考えながら、時折コミュニティサイトのLobiを開いているタブの更新ボタンを押しながら別のソシャゲの日課を消化していた。
そして16時が近付いた頃。Lobiの『アナムネシス』コミュニティにある書き込みが投下された。

終わった

その意味を悟りながら別のタブで開いたままだった『アナムネシス』公式サイトに駆け込んでブラウザの更新ボタンを押した。
「嘘であってくれ」という願いも虚しく、お知らせ一覧に無情な言葉が踊っていた。

「【重要】運営サービス終了のお知らせ

『サクラ革命』のサービス終了発表時、明日は我が身だと思っていた。
それは明日でもなんでも無い、その日の内に、もっと言うなら約3時間後にやってきてしまった。
共倒れというべきか、極小規模なドミノ倒しというべきか。トライエース提供ソシャゲの全滅が確定した瞬間であった。

一個人から見た終了の原因―「何もかもが歪すぎた」

サービス終了に至ったということは、確実にそれに足る理由がある。
運営の発表によれば「ユーザーが満足できるサービスの提供困難」とのことだが、真相は恐らく売上の低迷と思われる。
或いは、トライエースがコンシューマータイトル開発や移植等に注力するため、売上が低迷していた2タイトルを足切りしたという可能性もあるし、単純ほぼ年中通してハイクオリティなキャラを提供することに対し、トライエース側の体力が尽きたという可能性もある。
だが約2年半ほど遊んでいて、それを招いた原因として実感があったのは3つ。「調整不足」と「信用失墜」、「過度の依怙贔屓」だった。

1つ目の「調整不足」は文字通り売上に直結している事は想像に難くない。
『アナムネシス』のガチャはイベントボックスガチャと武器ガチャ、キャラガチャに分別され、キャラガチャはそもそもの開催内容に当たり外れが別れていた。
ガチャに限って言及するならば、サービス終了までに相当売上を伸ばしただろうと思ったのはアニバーサリーイベント中に開催されていた「10連全て最高レア武器確定ガチャ」だっただろうと筆者は考えている。
「お祭りゲー、そしてキャラゲーである以上、キャラガチャが回されるべきなのでは」と思われるかもしれないが、これにはキャラの性能に大きな原因がある。

『アナムネシス』はキャラの性能のテコ入れに恐ろしく消極的であり、基本的に一度テコ入れを行ったキャラはよほどのことが無い限り再度のテコ入れは行われていなかった。季節限定キャラやコラボキャラの場合、復刻時にスキル等の多少上方修正されて終わりである。
恒常キャラの場合「覚醒」というシステムが絡んでおり、それに要求されるアイテムもある程度のキャラ数が要求され、UIが本作最悪レベルの自動探索コンテンツ「ディープスペース探査(通称ゴミ拾い)」で拾ってくるか、ガチャ石を消費してまとまった数を購入するしかない。

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ディープスペース探査は探査ポイントが無駄に広い画面に点在しており、それを一々スワイプで探査したいポイントを探す必要があり、探査率が100%に到達すると報酬も貰えたが、この茫漠な宇宙を探らされる苦行の前では微々たるものである。
出来るだけ並行して複数の探査を進めたいところだが、左上の「艦数」は手持ちキャラのレアリティ及び限界突破数に応じて増えていき、無課金の場合最大6隻となる。

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探査ポイントは一覧での表示にも対応していたが、画面をスライドさせて探そうとすると、どこにどの探査ポイントがあるか覚える必要があるので非常に面倒くさかったので、「もう一覧だけでいいじゃん」という声も何度か聞いた。
覚醒用アイテムは毎回それなりにまとまった数が要求されるが、一度に拾える数は少ない上にいわゆる「ハズレ」探査も存在していたので、有償/無償石で購入して解決して手を付けていなかったプレイヤーも少なくなかった印象が強い。
このテコ入れのためか、何度もディープスペース探査に期間限定の特殊探査ポイントを混入させるキャンペーンも行われていたものの、テコ入れとしては不十分としか言えなかった。

更にそのテコ入れは、あくまでそのテコ入れが行われた環境準拠の性能であり、例えば2019年秋にテコ入れを受ければその時点での一線級の性能にはされるものの、2021年春に見たその性能は完全に時代遅れである。
故に早期にテコ入れを受けたキャラほど武器の性能と、パーティーメンバーの4人中自身を除いた3人の性能に大きく依存していた。
そんな環境の中で、ナンバリングタイトルの発売記念日に差し掛かるとアニバーサリーと称して発売記念日を迎えたタイトルの登場キャラをピックアップしたガチャを開催していたが、そこでピックアップされているキャラの殆どはテコ入れを受けてなお開催時の環境に於ける第一線で活躍出来るかと問われればプレイヤースキルと装備、周りを固めるキャラによるとしか言いようがなく、基本的に見える地雷扱いを受けていた。
故にキャラガチャを回すとしても、新規キャラのピックアップや季節限定キャラのピックアップ程度に絞られてしまい、常設されているキャラガチャやナンバリングタイトルピックアップガチャは手を伸ばしにくい。

一方で武器ガチャはイベントの有利属性かつ新規実装武器が1本確定排出されるものは回さなければ死活問題であることが多く、愛用しているキャラが対応している武器種、そもそもの実装数が少ないため逃せば致命傷になり得る武器種(例:杖、剣鞘、片手剣)に関しては、10連ガチャを回せば毎回2~3本実装されるピックアップ武器のうち1本は最低保証として出るとはいえ出るまで深追いするユーザーは少なくなかったように思える。
一応武器ガチャにも常設ガチャとして武器種別ガチャが存在したが、イベント報酬等で最高レアリティ武器確定の単発ガチャチケが頻繁に配布されていた上、先述の新規武器確定ガチャの存在もあって、よほど特定の武器種の手持ちに困っていなければ回されていなかった印象がある。

「信用失墜」はこの3つの中でも一等深刻で、「ユーザー/下請け会社に対するコンプライアンス違反の発言」、「開発Pによる特定ユーザーとの癒着、非売品グッズの物品横領、セクハラ発言」というソシャゲ運営である以前に社会人としてアウトな行為に開発側が関与している末期状態で、しかもゲームそのものには殆ど関係ない盤外戦で信用が失墜するというなんとも情けない話である。
コラボの連発は信用を回復するための手段の1つだったのかもしれないが、一方で開発Pが交代した事を告知していない上に、代替わりした開発Pが一切公式生放送等に顔を出さず、プロデューサーレターを含めた発言もサービスが終了しても一切無く、「本当に新しい開発Pが関わっているのか」すら分からない状態で信用は出来るはずもない。

そして3つ目の「過度の依怙贔屓」は、『SO』シリーズ及び本作を長くプレイしていないと分かりにくい要素ではあるが、本当に常軌を逸していた。
シリーズキャラが一堂に会した「お祭りゲー」にもカテゴライズ出来る本作の性質上、人気キャラのバージョン違いを実装することは致し方無い部分もある。しかしそれが特定キャラ及び特定作品に異常に偏っており、実装数は目立っているキャラで最終的に以下のようになった。
・イヴリーシュ(アナムネシスオリジナルキャラ):9バージョン
・ティカ(アナムネシスオリジナルキャラ):8バージョン
・カーリン(アナムネシスオリジナルキャラ):8バージョン
・エリス(『1』登場キャラ):3バージョン
・レナ(『2』主人公及びヒロイン):10バージョン(現在9バージョン)
・マリア(『3』登場キャラ):8バージョン
・ネル(『3』登場キャラ):9バージョン
・クレア(『3』NPC):8バージョン
・レイミ(『4』ヒロイン):8バージョン
レナが現在1つバージョンが減っているのは、『Persona5R』コラボ限定バージョンが権利の関係でオフライン化に伴い削除されたためであり、削除前は実装数単独トップであった。
運営の優遇キャラはソシャゲにおけるバージョン別キャラの王道である「ウェディング」「バレンタイン」「水着」があるのは当たり前、ネルに関しては「斬鬼(実装は5月)」だとか「華王妃(所謂アオザイ、旧正月に唐突に実装)」だとかまで飛び出すカオスである。

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内訳は画像のようになり、○は実装、×は未実装を示し、特殊なバージョンは欄外に付記している。力の入れ方のミスという言葉では済まされない偏り方であり、未実装バージョンに関しては2021年7月以降の生存が認められていれば実装予定だったのではなかろうか。
エリスは初実装が遅かった事もあってバージョン数は少なめだが、通常バージョンが実装されたのが2019年8月14日、そこからバレンタインバージョンが翌年2月13日、水着バージョンが8月27日と実装間隔がかなり狭い。それらを考慮すると優遇組と言って差し支えるないと思われる。
上記のアナムネシスオリジナルキャラ3人は全員メインストーリーに深く関わっているため優遇もやむ無しと言いたいが、一方で同じメインストーリー組でも一切バージョン違いが実装されず仕舞いであったり、バージョン違いが1~2種類程度で済まされていたりと優遇冷遇の差が著しい。

もちろん、サービス終了間際になって急ピッチで実装されたメインストーリー組や過去作パーティーキャラに関しては、最後の公式生放送時点でバージョン違いを出す計画はあったとしても、店仕舞が決定した瞬間オジャンになった可能性も否定出来ない(特に水着版は優遇組が全員実装済みなのでEP3に出たあの人を出す予定だったのかもしれないが…)。

作品毎の実装数もかなり歪であり、最終的に数であれば『3』が53バージョンと圧倒的で、『1』は合計22バージョンとバージョン違いに恵まれないままサービス終了となった。ちなみにコラボキャラの総数は最終的に実装された276人中58人で約1/5を占める結果となっている。
勿論、演じた方が引退あるいは休業状態で新録困難、或いは『3』に出演していた石塚運昇氏や藤原啓治氏のように鬼籍に入られて新録不可能という事情から実装出来なかったという面もあるのかもしれないが、それを前置きにするにしても極端であり、公式生放送で新しいバージョンのマリアやクレアが発表される度に「またかよ」「知ってた」といった呆れの声が見られた。
レナ、マリア、ネル、クレア、レイミの5人に関しては最早実装されていないバージョンを探すほうが早いという有様で、季節限定キャラが実装される度にこの5人の内誰かがほぼ確実に顔を出す異常事態が常態化していた。
10種実装されたレナは最終的に『2』の全バージョン総数(40バージョン)の約1/4を占め、『3』の優遇三人衆に関しては合わせて25バージョン、『3』の全バージョン総数の約半分は彼女達であり、レイミは『4』の全バージョン総数(31バージョン)の40%は彼女1人で占めている。
本作のコンセプトとして、運営は「トライエース大戦にしたい」という発言をしていた事があったという。だがこれではただの運営の推しのファッションショー同然である。
グラフィックのクオリティ故に1キャラ当たりの制作時間が数ヶ月単位とされていた本作の1年の工数の大半を、上記5人で圧迫し続けていたのは想像に難くない。

5人の中には「ただ単に運営がこのキャラのこんなシチュエーションを見たいだけ」という雰囲気が伝わってくるバージョンがあったが、この状況を恐らくは把握した上で「3周年記念の人気投票の結果、例えば花嫁バージョンが上位入賞した場合は翌年に花嫁衣装のお色直しバージョンを実装予定」としていた。
当時のアプリ内や公式生放送の空気感としては、人気投票であるにも関わらず同名別バージョンキャラへの投票を制限していないというガバガバ設計も相俟ってか「どうせ真面目に投票しても運営が得票数を操作するか都合よく解釈し、また優遇組のバージョン違いが増やされるだけ」という雰囲気が伝わってきていた。
人気投票の結果如何とは明言していたとはいえ、「同一キャラのバージョン違いのバージョン」は流石に聞いたことが無かった。寧ろ、この発表時点で既に設定画が完成して1位のキャラは既定路線だった可能性すらある。

異常事態は「調整不足」の項で少し触れた「武器種毎の実装数格差」と「調整不足」にも影響が出ており、運営のお気に入りキャラが扱える武器種は基本的に実装数が優遇傾向にあった。
特に女性キャラは期間限定バージョンで何故か鞭を武器として持たされていた事が多く、最初に実装された鞭キャラが女性だったため使い回しが利きやすかったのか、それとも絵になるか否かの問題だったのかは不明だが…。

また上述の優遇組が新規期間限定キャラとして実装されるということは、彼女達が環境の最前線を走るということであり、既存キャラのテコ入れが消極的な事もあって運営が贔屓にしているキャラが活躍出来る土壌が4年半の時間を掛けて腐葉土の如く熟成、形成されていった。
この暴走とも言える特定キャラに対する極端な依怙贔屓に一番辟易としていたのは言わずもがなユーザー側で、推しキャラ故に追いかけ続けるユーザーの財布は圧迫され続け、逆に全く音沙汰がないユーザーの中には冷ややかな眼差しで見る者もいた。時には特定タイトルや特定キャラに対して「嫌いになりそう/嫌いになった」という感情を吐露するユーザーも見られた。
一度は運営側でも「これはいかん」という認識は辛うじて出来ていたのだろうか、2019年年末時点で未実装のシリーズメインキャラを全員実装予定としていた。

筆者自身としても、『2』から2年後の設定である『ブルースフィア』名義の『2』キャラの実装を心待ちにしていた。PS版の声優陣での完全新録を約束していたし、『アナムネシス』のグラフィックで彼らの2年間の時の流れを見てみたかった。
しかし、結果として運営のお気に入りのキャラばかりが実装され、『ブルースフィア』名義のキャラは4人にとどまった。
『1』のパーティーキャラに至っては全員集合出来たのはその宣言から2年以上経ったサービス終了告知後だった。
これについて、筆者は声を大にして言いたい。「うそつき」と。

ここまで長々と書いたが、『アナムネシス』のサービス終了という結末を呼び寄せた原因は、筆者の感覚としては「ユーザー軽視」が一番大きい。
ソーシャルゲームという商売である以上、売上を求めなければ存続は不可能である。
人気キャラの別バージョンを実装し、ガチャによる売上を求めるのはソーシャルゲームにおける常であり、上述の特定キャラに対する依怙贔屓はそこから始まったように思える。
特定キャラの別バージョンをピックアップしたガチャが売れ、「このキャラの新規バージョンを作れば売れる」という致命的な勘違いがどこかで生まれてしまった。そしてそれがいつしか運営側の自己満足にまみれた依怙贔屓に繋がっていった。
特定キャラを性能的にも実装数的にも優遇し続け、一方で「未実装のシリーズキャラの実装を優先して欲しい」という、ユーザーアンケートでも再三取り上げられていた声を無視し続け、タイトル間で30人近い実装数格差が生まれた。
石塚運昇氏が声を担当していたキャラ「アドレー」が実装されたのは、実装告知が行われた約7ヶ月後。その際に「優遇していたキャラに回していたリソースを割いていれば、新録ボイスでの実装が間に合ったのではないか」という指摘と非難が相次いだ。その優遇キャラの1人に彼の娘が含まれていたのは皮肉なのだろうか。
長く実装が心待ちにされていた『3』のキーキャラクターの社長こと「ルシファー」もアンケートで実装が熱望されていたキャラであり、『アナトミア』の終了告知後に唐突にマイページで特定キャラが言及するようになり、間もなく実装された。
個人的には「もっと勿体つけてから実装する予定だったが、『アナトミア』が終了することになり尻に火が着いて慌てて悪足掻きとして実装したのではないか」と当時は捉えた。

そして先述した「特定ユーザーと運営関係者の癒着疑惑」という、コンプライアンス違反とユーザー軽視の極地とも言える事件が発生。新しい開発Pがどのような人物なのか一切触れないまま2年半を漫然と過ごした。
それらの問題が浮上して以降、特段ユーザーに対し釈明もしないまま、まるで「時間が全てを解決してくれる」「いずれ風化してユーザーは忘れるだろう」と考えているようにしか思えなかった。
だがそれらは炭火のようにサービス終了しても残り続けているのが現実であり、これに於いても運営の見通しが甘すぎたとしか言いようがない。

本当にユーザーの方に目線を向けていれば、こんな最期を迎える事は無かったはずである。もっと長生き出来たはずである。
だが運営は自己満足と楽観視、そしてユーザー軽視を続けた。その結末がこれだ。宇宙船は寂れ、運営に対する労いの言葉は減り、やがて自沈を言い渡された。
これが、『スターオーシャン:アナムネシス』という作品が辿った「末路」である。

それでも足掻こうとはしていた

運営の信用が失墜した事件後、運営なりに足掻こうとはしていた。
その際たる例が、発売前という業界最速レベルで実施した『P5R』とのコラボだろう。大々的に告知され、『P5R』DLCとして登場していた『Persona3』及び『Persona4』の主人公、『P5R』新規キャラのかすみ、同作ではナビゲーターキャラでプレイアブルキャラではなかったナビが戦闘可能なプレイアブルキャラとして参戦するなど、運営としても非常に力を入れていたことが伺える。新規勢も多く流入し、実際、当時のマルチバトルはかなり盛り上がっていた。

だがそれも長くは続かなかった。
後の凋落を考えると運営的に絶対に失敗は許されなかったであろうそのイベント中、マルチバトルプレイ中にアプリが強制終了する不具合が発生していたのだが、それをコラボイベント中放置し、不具合が解消されたのはコラボイベント終了時のメンテナンス明けだった。
公式ツイートをリツイートすると抽選でコラボキャラが手に入るキャンペーンも行われていたが、上述の特定ユーザーに対する優遇があったことで「結局特定ユーザーにしか当たらないorそもそも当たるユーザーはいない」と見なす声もあった。

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筆者が入手できたのは『P3』主人公の結城理だけだったが、本作の売りの1つであった非常にクオリティの高いグラフィックで描写された彼は、ATLASが描写した彼とまた違って新鮮であった。原作『P3』ではおなじみの「カッ」のカットインと原作を象徴する物の1つである大きな月も完備している。
このクオリティを維持しつつ、ド派手かつ爽快な戦闘が楽しめることも『アナムネシス』の売りの1つで、ユーザーを引き込む要因でもあったと思う。グラフィックのクオリティは本当に高かったのだ。

また、『Persona5』コラボでのユーザー定着に失敗した後に行われたコラボも、終わりが近づきつつあった本作の悪足掻きだったのだろう。
大々的にコラボが行われたその作品の名前は『テイルズ オブ ザ レイズ』。RPGシリーズ作品として長寿のシリーズ作品であり、本作というより『スターオーシャン』シリーズに於いては切っても切り離す事ができない作品『テイルズオブ』シリーズのソシャゲである。
同シリーズの初代作品である『テイルズ オブ ファンタジア』の開発に携わったウルフチームが独立後に設立した会社がトライエースであり、独立の経緯的にはどうも円満独立では無かったらしく、オフラインイベントでコラボが大々的に発表された時は「歴史的和解の瞬間」とするファンの声も多かった。

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しかも、『レイズ』名義ではあるが実装されたのは『ファンタジア』のキャラのみであり、実質的には『ファンタジア』コラボと見なす事が出来る。『アナムネシス』のハイクオリティCGで描写された彼らは非常に新鮮で、『ファンタジア』ファンに対するアピールポイントにはなったはずだった。

しかし、結果は変わらなかった。手遅れだった。いくら有名タイトルや因縁のタイトルとコラボしようが、ユーザーから見れば只のコラボイベントでしかなく、状況も相俟って「悪足掻き」「こちらが向こうへ泣きついた」と嘲笑する声も見られた。それ程までに運営側とユーザーの関係性はボロボロで、失った信用と流出したユーザーの頭数を賄えれば苦労はしない。
問題発覚後、「もうどうやっても信頼は回復しないだろう、流出したユーザーが戻る事はないだろう」と諦めたように、まるでそれらは無かったかのように振る舞い続け、ユーザーの声を無視し続けた本作の先はどう足掻こうが長くはなかったのだろう。
そんな状況でありながら、最後の生放送時点ではまだ存命が許されるかもしれないという一握の希望を持っていたのか、或いはその時点で終わる事を察していたのか、それとも既に余命宣告を下されていたのか。前者だとすれば、生放送での発言全てが虚しく、甘ったれた希望的観測だと唾棄するしかない。
むしろ、メインストーリーに区切りが付けられる2年半もの間の延命が許されていた事が奇跡だったのかもしれない。

そして迎えた最期の2ヶ月は、驚くほどに穏やかで暖かい2ヶ月だった。
運営はせめて残りの2ヶ月を楽しんで欲しいと今まで渋っていたスタミナ回復チケットを大量に配り、季節限定版のキャラを順次復刻した。グラフィックの質は非常に高いため読んで字の如くの「鑑賞用」として、未所持キャラの需要は高かったのだ。

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コラボキャラをとって見ても、ただのビューアーモードでも十分楽しめる。

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『ヴァルキリープロファイル2 シルメリア』からコラボ参戦した「ルーファス」をビューワーモードで閲覧すると、右手に嵌められた大仰な赤い宝石が嵌め込まれている指輪を見つめて悔しげな表情を浮かべる時があるが、原作をプレイしていると「あっ…」となるだろう。詳しくは『シルメリア』を終盤までやろう。
そしてショッキングピンクと白のツートンカラーな照準器付き機械式弓なんて物を持たされても絵になる辺りイケメンはズルい。武器のグラフィックも本当にこだわっていた。

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同じく『シルメリア』からコラボ参戦した、『ヴァルキリープロファイル』シリーズが擁するスクウェア・エニックス発売ゲーム屈指の変態であり、所謂「変態子安」のイメージを定着させてしまった原因の1つであろう「レザード・ヴァレス」。既に初代『ヴァルキリープロファイル』で参戦を果たした彼の新規バージョンである「超越者レザード」の勝利モーションも非常に凝っていた。
バトルで勝利すると、彼が偏愛を抱いている戦乙女「レナス・ヴァルキュリア」を抱きかかえて宙から降り立ち、文字通り我が物顔で彼女にキスしようとするが、唇が触れる寸前にレナスは光の粒子となって消えてしまう。しかしレザードは画面の暗転寸前にどこか満足げに微笑む…という、原作をやっていると「こうじゃないとレザードじゃない」「キスに成功してたらレザードじゃねえ、ただの子安声の変態イケメンだ」等の声が出てくる、CEROのギリギリに挑みつつ、それでいてファンが納得する演出であった。
このように原作ネタも随所に盛り込まれ、本当に「見るだけ」でも楽しめるというのは本作の魅力の1つだろう。

未実装のまま放置されていたシリーズのパーティーキャラ最後の2人を急ピッチで実装し、本来は天井分相当のガチャのおまけコインを配布しつつ季節限定版復刻ガチャにもおまけコインを付与した。課金決算停止後も、ある程度のまとまった数のガチャ石が確保出来るタワー型クエスト「スフィア211」は残されていたのでそれを利用して欲しいと暗に指し示していたのだろう。
最後のイベントとなった『スターラジオーシャン』とのコラボイベントでは、存続が許されたならばメインストーリーで明かされただろう設定が開示されるなど、出来る限りの後始末に徹していた。
それにユーザーは罵倒混じりに「今までありがとう」「楽しかった」という趣旨の言葉で応え、

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多くないユーザーが、星の海に、それぞれの船にーーメインストーリーに於ける我が家とも言える「探査戦闘艦GFSS-3214F」に、滞在時間に差はあれど還った。

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少なくないユーザーがスクリーンショットやバトルに勤しんだ。在りし日の『アナムネシス』に近い光景がそこにあった。寒々しい最期を迎えると思った本作は、多くのユーザーに看取られた往生と相成ったのだ。

終わりに

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ここまで長々と『アナムネシス』に対する愚痴や文句を書き連ねたが、運営の姿勢はとても褒められるものではなかったが、スマホで手軽に出来るアクションゲームとしての完成度は非常に高く、過去作の要素をふんだんに織り込んだストーリーもやっつけ感の強かった第一部の出だしを除けば良質だった。

動画はまだサービス終了宣言前で筆者が無邪気に遊んでいた頃のものであり、端末の関係で若干画質は悪いものの、このクオリティのバトルがスマホで手軽に遊べていたという点が文句をいいつつ遊んでいた理由として確かに存在している。

筆者が別の目的で『アナムネシス』をプレイし始めた後、筆者がトライエース作品の中でも一番好きなタイトル『END OF ETERNITY』とのコラボが復刻されており、拾える限りのガチャ石を拾い集めて全員を加入させたのはいい思い出であり、バトル中の彼らのモーションに驚愕した。
全員、原作戦闘シーンで見たあのモーションで、主人公ゼファーがあの前傾姿勢で戦っていた。ヒロインのリーンベルは胸を盛られていた。2人の保護者であるヴァシュロンはあのダンスを披露していた。

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レベルキャップ開放機能実装直後、ゼファーを上限の120まで上げたのはいい思い出だ。身内から「ただのEOEガチ勢」と言われたが、褒め言葉だ。

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白目を剥いて「糸巻きの歌」の振り付けめいたポージングはシュールに見えるだろうが、これは原作再現である。メインストーリー中に脳内で披露した謎ダンスである。詳しくは『END OF ETERNITY』のCHAPTER5をプレイしよう。今ならPS4/Steamに移植されたHD版もあるよ。

ダイレクトマーケティングは切り上げるとして、筆者がアナムネシスをプレイし始めた本当の理由は、筆者をオッサンキャラ好きの沼へ叩き込んだ元凶が『スターオーシャン セカンドストーリー』のパーティーキャラである「エルネスト・レヴィード」、彼の実装を待つためであった。

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「へー、SOのソシャゲ出てたのか…エルネストまだなんか。どうせならエルネストが実装されるまで待ってみるか」と軽い気持ちで遊び始め、まさかそこから約2年待たされるとは思わなかった。
公式生放送での発言曰く、「エルネストは鞭を武器とするキャラの実装に着手された段階から制作は進められていたが、背中側の設定画を紛失してしまい実装が遅れてしまった」らしい。
この設定画紛失は『アナムネシス』では珍しい事では無かったらしく、特に『1』~『2』の設定資料等を紛失してしまい、イチから設定画を描き起こす必要が出たというパターンは他のキャラにも見られた。更に彼の場合は新規の武器種である鞭使い、更に最終的に鞭使い唯一の男性で、『2』は元々ドットでの描写だったので参考に出来る3Dモデルも少ないか存在しなかったと思われ、おまけに設定画の一部紛失という悪条件まみれであった。

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しかし、待った甲斐はあった。売上的に追い込まれていただろう時期(2020年10月頃)の実装だったにも関わらず、立ち絵は『スターオーシャン4』のキャラクターデザイン担当のエナミカツミ氏による書き下ろし、ボイスも東地宏樹氏による録り下ろしという豪華さだった。
本当にありがとう、天井寸前だったけど本当に嬉しかった。

このように、キャラに対するトライエースの作り込みは本物だった。設定資料にパンツを書き込むぐらいには本当だった。
サービス終了発表後、そしてサービス終了した後、本作に投げかけられている言葉の中には確かに辛辣な物も多い。だがそれと同じぐらいに作品愛やキャラ愛に富んだ言葉も投げかけられていた。「もっと長く生きてほしかった」とその臨終を惜しむ言葉も同じぐらいにあった。
運営側もサービス終了に至った後、プロデューサーレターにてそれを悔やんでいた。そして今後も『アナムネシス』というタイトルを続けていきたいという意志を見せていた。
すなわち、『アナムネシス』は、確かに「愛」で支えられていたソーシャルゲームだったのだ。

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そうでもなければ、同社作品のみならず他社作品や公式ラジオのMCをここまでのクオリティで仕上げる事は出来ないはずである。コラボイベントが催される度、知った作品であれば「あのキャラがこのレベルのグラフィックで」とテンションも上がったしガチャへの意欲も上がった。

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戦闘シーンの1つ1つを撮っても、ここまで生き生きと動くCGを見たことは無かったし、サービス終了から3ヶ月間が経過した今も見たことがない。「目が肥やされてしまった」とでも言うべきだろうか。
運営の依怙贔屓と致命的なやらかし、事後処理のミスさえなければまだまだサービスを継続出来るだけのポテンシャルはあった筈だった。本作の寿命を一気に縮めてしまったのは紛れもなく運営側であった。

直近(と言ってもリリース自体は半年前だが)のソシャゲで「グラフィックがすごい」とよく耳にするのはCygamesの『ウマ娘 プリティーダービー』だが、あちらを「かわいい系」3D最高峰だとすれば、『アナムネシス』はある意味反対である「リアル系」3D最高峰だったと思う。
サービス終了となった今、オフライン化した本作で閲覧出来るのはメインストーリーとサービス終了までに入手できたキャラの鑑賞と恐ろしく簡素になった。
バトルやキャラのデコ機能はサーバー側との通信が必須となるため、特にバトルは残して欲しいという声も多かったものの惜しむらくもオミットされており、実容量にして2GB以上の強制ダイエットである。
閲覧出来るコラボキャラも、契約の関係で「スクウェア・エニックス発売のトライエース作品」のみであり、大多数のコラボキャラは削除された。公式ラジオコラボも例外ではない。

だが、記憶の中にあるあのハイクオリティなバトルは色褪せる事はないだろう。間違いなくスマホ媒体ソシャゲとしては無二の物だったのだから。
スタッフの暴走とも言える行為の極地により、本作を支えていたユーザーからの信頼ともども作品の肝の大部分を滅却することになった本作を、どうか悲劇という意味で忘れないで欲しい。
劇作家オスカー・ワイルドの言葉に「話の種にされるより悪いことがたった一つだけある。それは、話の種にもならないことだ」とある。どんな最期を遂げたソシャゲにせよ「話の種にもされなくなる=忘れ去られる」事が一番の悲劇となる。

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そうならないためにも、どうか。どうか本作が終わるに至った顛末も含めて忘れないで欲しい。

参考資料:スターオーシャンアナムネシス データベース(β)
SPECIAL THANKS:執筆・投稿にあたりアドバイスを下さった皆様
2021/9/27 追記



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