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救急車に乗る、病院に着く

担架にのった主人と一緒に部屋を出る。娘の手を引きながら。
1Fでマンションの管理人さんがいつものようにほうきをもってお掃除していて、とっても驚いた顔で「どうしたの?」と声をかけてくださった。
その顔を見たら、ちょっと泣きそうになった。

救急車に乗るなんて、学生時代に駅で倒れてしまって以来。

どうやって救急車に乗り込んだのか、道中の主人がどんな様子だったのか、娘と何をしゃべっていたのか、記憶がない。見慣れた道を救急車の中から見ているうちに、サイレンの音が鳴りやんで、病院にたどり着いたことを知る。

救急搬送口に案内され、主人はどこかへ消えた。
娘とわたしはまだほの暗い病院中へ案内されて、座って待つように言われた。

ここにきて、誰かに連絡しなきゃと、まずは主人の会社に電話する。
電話口に出てくださった方に簡単に状況を説明して、伝言をお願いする。
退院するときのための持ち物を準備するように言われたのだから、病院に着いたし、急に眼を覚まして、もしかすると今晩には退院できたりして…なんて本気で考えてみる。

会社には大げさに伝えすぎたかな?

でも、やっぱり違う、そんなに都合がいいわけがないと、どきどきする胸の音が言っている。そうだ、主人のたった一人の妹にこのこと伝えなきゃと思い直す。久々に、いや、ほとんど初めて妹に電話したら、「すぐに行くよ」と言ってくれた。心強かった。

実家の母に電話した。年老いた父と母に心配かけちゃうなと、混乱した頭で思った。

落ち着かない気持ちでしばらく待っていたら、看護師さんと思しき女性から「こちらへ」と声を掛けられる。

通された部屋にドクターが座っていた。
険しい顔つきのドクターはこれこれこういう状態ですぐに手術しないと危険な状態だと告げられた。

「私もすぐに手術にはいらなければいけないので、ここにサインをしてください」

紙に書かれたことを読む暇もなく、次々に何枚もの紙にサインをする。

そうか、やっぱり今日は退院できないのか。




最後まで読んでくださってありがとうございます💗 まだまだ書き始めたばかりの初心者ですが、これからの歩みを見守っていただけるとはげみになります。