しっかりとしたビジョンと新スタジアム計画を取り揃えた地域リーグクラブを見ながら、Jに上がるよりも大切なことがあるよと思った、というお話
GWの後半戦。5/3〜6の4連休の真ん中の4日に今年最初のムサリク、そして翌日は市原までVONDS市原のホームゲームを見るという、前半戦とは打って変わって実に負荷の少ない遠征でした(笑)
5/4 JFL@武蔵野市立陸上競技場 横河武蔵野FC 1-1 ラインメール青森
GWの後半、4連休の2日目ということもあり、朝の空港はそれほどの混雑ではなかったように感じました。それでも「おそらく、浦安行くんだろうな〜」と思しき子供連れの家族は多めで、でもそんな家族連れにはお構いなく、いつものようにカートと機材という大荷物を抱えて、この日もしれっと東京に向かうのでした(笑)
今年初のムサリク。久しぶり〜、今年もよろしくね〜!などと思いながら(あくまでも個人の)ムサリク開幕戦を迎えるのでした。
この日の相手はラインメール青森。7試合で1勝2敗4分と、昨年は最終盤まであと少しでJ参入要件でもある2位以内を狙える位置にいたチームとは思えない低調気味。対する武蔵野も2勝3敗2分とこちらもあまりいいとは言えない序盤戦。そろそろ調子を上げていかないと、今後厳しい戦いを強いられる可能性が出てくる、重要な一戦と言えるかもしれません。
とは言っても、実際の試合は実に順位相応の内容でして…(汗)。特に青森の守備の緩さは致命的なくらいでした。昨年までは、1人で何とかできる守備のスペシャリストが何人もいたから何とか守れてましたが、今年はそういう選手もいなくなったため、本当に守備のできないチームになってしまったようでした。でもそんな青森に対して、ごく当たり前のように攻めあぐねてしまう武蔵野もどうかとは思いますが…(汗)、まあ武蔵野に関してはこんなもんなのかな?などと思いつつ…。良いか悪いかは別にして…(苦笑)
それでも大したもんで、なんだかんだで試合は動くもんなのです(笑)。前半33分、ソニー仙台から移籍した松本のCKに20番長倉が頭で合わせて、青森が先制して前半を終えます。
この1点で、グダグダながらも後半も青森ペースで進むのかなと思われましたが…。後半開始して数十秒、相手ゴールキックのインターセプトから仕掛けた武蔵野は、エース石原のドリブルに対応の遅れた青森DFを尻目にシュートを放つと、それが綺麗に決まりあっけなく武蔵野が追いつきます。それにしても青森の守備の酷さはホント致命的ですね。相手ながら心配になるくらいです…。しかしその後は、どちらも攻めてはいたものの、全体的に雑なプレーが目立って決定的なチャンスも少なく、そのまま試合は1-1で終了。まあ、どちらも「負けなくてよかった」レベルのドローではなかったでしょうか。
成績が良くないからこそ、今やらないといけないことを先送りせずにやるべきでは?
それにしても青森の低調ぶりは気になるところです。チーム全体として何をやろうとしているのかが見えてきません。かなり重症ではないでしょうか。青森については以前に取り上げたことがありますが、その時とはチームを取り巻く環境が大きく変化しています。1番の大きな変化は、そこそこ上手くいっていたであろうB2リーグ青森ワッツの運営会社の経営破綻です。最大5000人収容できるマエダアリーナでもそれなりにお客を呼んでいたにもかかわらず経営破綻を招いたということは、失礼ながらそれよりももっと集客能力の低いラインメール青森が仮にJ3に上がれたとしても、果たして今のままで経営が立ちゆくのか?という地元青森の経済界から厳しい視線を浴びることとなるでしょう。
あくまでも結果論になってしまいますが、入場者数についての条件がなかった昨年までにJに行かなくて正解だったかもしれません。そこでJ3に行ったところで、果たしてどれだけの人が収容人員20000人だがアクセスの非常に悪い、マエダアリーナと同じ敷地にあるカクヒログループアスレチックスタジアムに足を運ぶでしょうか?それを考えると、このチームが今やらないといけない課題は守備の強化でもなく、はたまた2位以内に入ることでもありません。まずは本当に地域に必要とされるチームになることです。それにはクラブが、スポンサーや地元自治体、さらに地域のいろんな人を巻き込むだけの施策を考えて、それを実践するだけのクラブとしてのぱわーが必要です。
昨年は青森の現地に足を運べていませんし、今年も現時点でその予定はありません。仮に今年行ったとしても、今回もまた弘前開催でホームタウンである青森市内に足を運ばないので、あまり参考にならないのですが…。この1年で変わったのかどうかは分かりませんが、側から見ている感じでは変わったかどうかは怪しいです。なので今年のラインメールとしては「東北に落ちない程度の成績でもいいからまずはJFLに残留して、その上で地元に必要とされるチームになること」が大事ではないでしょうか。
名前は変わってもやってることは変わらない。それが「武蔵野の生きる道」
チーム名が変わって(戻って?)2試合目のムサリクでのホームゲーム。GWの真っ只中、しかもJリーグが一切開催されていないこの日の観客動員数は865人。4/14の武蔵野市立陸上競技場の916人には及ばなかったものの、ホーム開幕の駒沢が563人、AGFフィールドこと味の素スタジアム西競技場では406人ということを考えると、Jや大学といった「競合他社」がなければこれくらいの集客能力はあるんですよね、武蔵野って…(笑)
今年から、いや正確には昨年からアマチュアクラブに戻った横河武蔵野FC。名前が変わっても試合会場は武蔵野陸上のまま。会場の中の緩〜い雰囲気も以前のまま。スタジアムを盛り上げるスタジアムDJもずっと同じ人が担当されています。そして、鳴り物が一切使えないのも変わらず…(笑)。そうそう、佐川大阪時代のことですが、ドラムのバチで手すりを叩くのは鳴り物ってのは分かるのですが、うちのメンバーが吹いた指笛も鳴り物認定されて「え〜、マジかよ〜」とみんなでボヤいたこともあったな〜と…(笑)。そうです、武蔵野は東京武蔵野シティFCでも、東京武蔵野ユナイテッドFCでも、横河武蔵野FCでも、やってることはいつも同じ。それが武蔵野のいいところと言えるのではないでしょうか。これも結果論ですが、もし東京武蔵野シティの時にJリーグに行ってしまっていたら、一体どうなっていたことでしょう…。もしかしたらそれでも何ら変わらなかったかもしれませんが、間違いなく雰囲気はガラッと変わったことでしょう。
そう、今のこのスタイルが「武蔵野の生きる道」なんです。それでいいんです、たぶん…(笑)。変にガツガツせず、サポーターと言いながらもそんなに必死に応援もしない。なんなら、この日のように天気が良ければ芝生席に行ってゴロゴロしたって全然いいんです。それが許される雰囲気、それこそ武蔵野と言えるでしょう。
そして、JFLという今のカテゴリーにいるからこそ集まってくる人たちもいるでしょう。選手は今のカテゴリーだからこそ、これだけ能力の高い「しっかりとした」子たちが集まってくるのも忘れてはいけません。上位を狙うとか門番になるとか、そんな大層なことは言いません。せめて、終盤に苦しい思いをすることなく、普通にJFLに残留できればそれでいいんです。そんな緩〜い雰囲気を良しとする武蔵野。そのことを「ホームムサリク」で改めて感じることができたのは良かったです。
また今年も何試合か通うことになるでしょう。今年もよろしくお願いしま〜す!
5/5 関東リーグ1部@ゼットエーオリプリスタジアム VONDS市原 2-0 東京国際大学FC
この日は関東リーグを見るために市原まで。市原には何回来たことだろうか…。ジェフのホームで2、3回、ジェフリザ(ジェフリザーブズ、のちのジェフクラブ)で1回か2回、そして地域決勝で何回か…。もうはっきりと覚えてないくらいですが、最寄りの五井駅の周辺はずっと変わらず昔のままですね(笑)あっ、変わったと言えば駅の外壁に掲げられていた「頑張れ!ジェフユナイテッド千葉・市原」の看板がなくなったことくらいか(笑)まあ、チーム名から「市原」が抜けた時点で掲げる意味ないですからね…
試合会場に向かう前に最寄りの五井駅で、かつて佐川滋賀を一緒に見ていた市原在住の知り合いと待ち合わせをしました。実はお渡ししないといけないものがあったので、それをお渡ししつつちょっとだけ立ち話を。チームがなくなって、互いに別々の方向に興味が向いたにも関わらず、こうやって交流を深め合えるというのはありがたいことです。また機会があれば、一緒にサッカー見ましょうね!
五井駅から会場の市原臨海競技場、ゼットエーオリプリスタジアムまでは歩いて行けるものの、今回はタクシーで。まあ1500円くらいなので、これなら全然乗る価値ありますよ。タクシーの運転手から「野球ですか?」と聞かれました。どうやら隣の球場で大学野球をやっているらしく、試合中にかなり盛り上がっていたので気になって見てみたら、上智大vs学習院大って「それって完全な定期戦じゃん!」などと思いつつ。あ〜、だから球場の前にチアとかいっぱいいたんだね〜、などと後から気がついたり…と、まあどうでもいい話ですよね(笑)
関東リーグの第4節、ここをホームとするVONDS市原と部員数が400人以上いる(たしかそれくらいいたはず…)の大所帯、東京国際大学のセカンドチーム、東京国際大学FCとの一戦。VONDS市原といえば昨年は関東リーグを制し、地域チャンピオンズリーグでは同じく関東リーグの栃木シティFCに次ぐ2位となり、JFLとの入替戦に進むことになりました。そのJFL最下位の沖縄SVとのアウェイでの入替戦で惜しくも0-1で敗れ、JFL昇格を逃しました。2年間指揮を取られた布監督も退任されて新体制でのシーズン、どんな雰囲気なのか?今年も地域CL優勝候補と言えるのか?その辺を確認していきたいと思います。
開始から東京国際大学がスピードを活かして市原陣内に果敢に攻め込みます。しかし、プレーの精度の低さが災いして決定的な場面やシュートまで持っていくことが出来ません。そんな東京国際大学のターンを凌いだ市原は、相手DFの軽率なプレーを見逃さず一気にDFの裏へ抜けてシュートまで持っていくと、途端にペースは市原へと流れていきます。ペースは握れたものの、相手の雑な流れにお付き合いするかのように最後の詰めが甘く、前半は共にシュート2本づつというやや低調な試合展開で前半を終えます。
後半も市原が前半途中からのいい流れを引き継いで東京国際大学陣内に攻め入ります。57分、CKの際にエリア内で市原の選手を東京国際大学のDFが倒してしまい、市原がPKを獲得します。それを一木が冷静に決めて、市原が先制します。さらに攻勢を仕掛ける市原でしたが、東京国際大学も追加点だけは許さないと必死に守ります。しかし、右からのクロスが流れたところに中央から走ってきた8番の加藤がゴールを決めて、待望の追加点。この日の両チームの出来からして、この2点目でほぼ勝負は決したかと思います。最後まで守備も集中を切らすことなく守り切ったVONDS市原が、終わってみれば2-0の快勝。3試合ぶりの勝利を飾りました。
堅実さは大事。でも、それだけでは上(JFL)へは…
勝ったVONDS市原。昨年までの布監督のサッカーを引き継ぐような堅い守備と、機を見るに敏な攻撃を駆使した試合展開でした。しっかりと凌ぐ時に耐え忍んで自分たちの方に流れを引き寄せておいて、流れを掴んだら徐々に相手ゴールに迫っていく。実に試合巧者なサッカーを見せてくれました。4節でまだ無敗なのはVONDS市原だけと、リーグ戦の戦い方をよく心得ていると言えるでしょう。
ただ、昨年もそうでしたが、11月の地域チャンピオンズリーグを勝ち抜くには堅実さも大事ですが、爆発力もまた求められるかと思います。昨年はその爆発力に欠けていたのが、最終的に栃木シティFCに勝てなかった要因でもあり、また入替戦でも勝つことが出来なかった要因ではないでしょうか。同じ轍を踏まないためにも、今年は堅実さと爆発力を兼ね揃えることが出来れば念願のJFL昇格も見えてくるのではないでしょうか。
一方の東京国際大学FCは、学生らしいパワーとスピードのサッカーでした。ただ、それだけで簡単に勝てるリーグではないのはよ〜く分かっていると思います。近年、関東でも1部と2部とを行き来することの多い東国大FC。そう簡単にサッカーのやり方を変えるのは難しいでしょうが、何かしらひと工夫を講じる必要はありそうですね。
「沖縄の悲劇」から約5ヶ月。VONDS市原は元気でした!
昨年12月3日、JFL15位の沖縄SVのホームでの入替戦に臨んだVONDS市原は、70分に先制されるものその8分後には同点に追いつき、15分ハーフの延長戦へ。延長前半終了間際に勝ち越されてしまい、そのまま試合終了。惜しくもJFL昇格は出来ませんでした。
この入替戦、地域チャンピオンズリーグの翌週というタイトなスケジュールに加え、沖縄遠征ということでチームにとって想像以上の負担となったようです。しかも試合当日に那覇マラソンが開催されるとあって、飛行機の手配からホテルの空室探しに相当苦戦したとか、そういう話をチラッと耳にしました。さらにこの1戦に掛かった費用が250万円という噂もあります。そこまでしてでも勝てばいいものの、負けて帰ってくるとなるとチームとしては、絶望以外の何者でもない、大きなダメージを受けたことは間違い無いです。下手したらチームが消滅しかねない、それくらいのダメージだったのではないでしょうか。
実はVONDS市原というチームは、今までも何度かこのような絶望的なシーズンを経験しています。特に印象的だったのは2017年の地域チャンピオンズリーグです。元川崎のレナチーニョを軸に圧倒的な強さで臨んだこの大会。しかも決勝ラウンドは地元市原開催と、どう見てもVONDS市原が勝ち抜けるだろうと思われたこの大会。初戦のアミティエSCにスコアレスドロー。当時のレギュレーションにあったPK戦に敗れ、短期決戦に必要な勢いを削がれた市原は、翌日のコバルトーレ女川戦でも同じくドローでPK戦。そして、この日も女川に敗れてしまいます。最終戦、勝てば昇格条件の2位に入れるにもかかわらずこの日もやはりドロー。この時点で2位以上が消滅したVONDS市原はこのPK戦も敗れ、最強チームと言われたこの年、JFL昇格を逃してしまいました。その年と同様、昨年はJFL昇格が目の前に見えていましたが、またもやあと一歩のところで昇格を逃してしまいました。それに次ぐ、いや今回は負けたダメージもさることながら金銭的な出費というダメージも大きかったはずです。
そんなVONDS市原ここの日の試合会場である、ゼットエーオリプリスタジアムに着くと外には何台かキッチンカーが止まっており、少ないながらもいわゆる「スタグル」もありました。また、選手と子供たちが触れ合うことのできるイベントスペースなども設けられており、ベンチ外の選手と子供たちとが楽しそうにボールを蹴ったりしていました。規模こそ小さいものの、JやJFLの会場でよく見かけるような光景が見られました。
入場無料ですが、スタンドに入る際にこの試合のマッチディプログラムをいただきました。最近、特にJでは電子MDPが増えたので紙のMDPって貴重ですよね。さらにスタジアムのコンコースではグッズなどの物販スペースもあり、ここでもベンチ外の選手が何人か立って物販を行っていました。
さて、スタンドの雰囲気ですがざっと見たところ、若い人から小さい子供を連れた家族、あるいはサッカーをやっているのかなと思われるお子さんのいる家族やそんなお孫さんを連れた年配の方、また年配のご夫婦の姿も見られました。幅広い年齢層の客層の方々が来られていたのにはちょっと驚きました。無料とはいえ、この日の入場者数は466人。後から調べたら毎試合、だいたいこれくらいは入っている様子。試合終了後、スタンドの外での選手のお見送りにもたくさんの子供達が並んで、選手と一緒に勝利を喜びあっていました。地域リーグでしかも首都圏にあるクラブで、これだけの固定客があるというのは評価に値すると思います。これもクラブが行ってきたこれまでの努力の賜物と言えるのではないでしょうか。
普段はなかなか知ることのできない、クラブスタッフのお話をちょっとだけ聞いてみた…
VONDS市原といえば、佐川滋賀のOBで現役を続けている数少ないプレイヤーである清原翔平が今年もプレーしています。この日も終盤に交代で入り、元気にプレーしていました。もちろん彼のプレーを見に来たのはそうなのですが、実はもう1人どうしても会いたかった人物がいたのです。同じく佐川滋賀でプレーして、チームが無くなってからはVONDS市原に移籍。現役引退したのちはそのままチームに残り、スタッフとして活動している山根伸泉さんです。忙しい合間を縫ってちょっとだけ話をする時間がありました、というか実は試合後に清原に声を掛けたところ、彼の方から「山根さんとは会われましたか?」と尋ねられて「まだなんです。試合前はいろいろ忙しいだろうから、ちょっと待ってみる」と答えると彼が気を利かせて探してくれたのです。本当に感謝、感謝です、いろいろとありがとう!
前会ったはまだ彼が現役だった頃の和歌山全社の時でした。「お久しぶりです!」とその頃と何ら変わらない姿で声をかけてもらいました。苦労も絶えないと思っていたので、そんな元気な姿にちょっと安心しました。そして立ち話ではありましたが、少しだけチームのことを聞いてみました。
今、VONDS市原のチームスタッフは全部で5人いるとのことでした。「どこもこんなもんじゃないでしょうかね」と言ってましたが、おそらく地域リーグのクラブとしてはスタッフ5人は多い方じゃないでしょうか。もしかしたらJクラブでもこれくらいの人数で回しているところもあるのではないかと思われます。トレーナーと兼任とか、複数のタスクをこなすケースが多いと思うので、たとえ5人いたとしてもやはり大変なことには変わりないと思います。それに加えて、試合の日にはボランティアの方が常時、だいたい5人くらいは来てもらえるらしく、あとはジュニアユースの子たちにも手伝ってもらって、みんなで試合会場の設営をやっているとのことでした。Jの会場でよく見られるバックやゴール裏にある立体看板が何枚もあり、それらの設営も含めるとなるとなかなか大変なことだと思います。
そしてこの日、実は夕方からはVONDS市原の女子のチームの試合がVONDS市原グリーンパークという自前のグラウンドで開催されるとあって、そっちにもスタッフが何人か行ってるのではないかと思うと、果たして5人で足りるのかな?と心配してしまいます。他にも女子のソフトボールチームも持ってるので、もしかしたらそっちにも専属のスタッフがいるのかもしれません。そう考えると、クラブ運営的にはかなりの規模と言えるかもしれませんね。
そして話は昨年の入替戦について。あまり深くまでは話せませんでしたが、やはり大変だったみたいです。それでも「いい経験でした」という前向きな言葉が聞かれました。確かに金銭的にもいろいろと大変だったとは思いますが、それを糧にさらにステップアップを図ろうとする姿勢が見られたのは良かったです。選手もスタッフもサポーターもみんなが前向きじゃないと、それを支えるスポンサーや地元の人たちも引き寄せられません。前向きなクラブだからこそ、あれだけのダメージを負いながらもスポンサーさんからの厚い支援をいただいているのでしょう。
そんな大事なスポンサーさんの幕がちょっと弛んでいたのが試合中どうしても気になったので、彼に「バックに張ってあったスポンサー幕がちょっと縒れてたので、あれはピンと張っておいた方がいいよ」と、ちょっと小姑みたいなことを言ってしまいました。もしかしたらそれくらいで文句を付けるようなスポンサーではないのかもしれませんが、彼も「あっ、次から注意しておきます」との回答があったので、次回のホームゲームからはちゃんと張ってもらえると思います(笑)。そういう細かいことって意外と重要だったりすると思いますので、もし贔屓のチームでスタッフの方とも仲の良い、または何でもお話が出来るという方は、試合運営で何か気になったことがあればどんどん指摘してあげてください。そういう「小姑精神」がチームの質の向上に繋がりますので…(笑)
VONDS市原には今後の新たなビジョンが…
そんなVONDS市原。実は将来的には自前でJリーグ開催可能なスタジアムの建設計画があるのです。今でも自前のグラウンドを持ち、そこで公式戦も開催はしていますが、JFLや さらにJリーグに上がった時のことを見越しての、新しいスタジアムの建設を考えているようです。その詳細の資料はこちらです。
実はVONDS市原のオーナーというのが、市原市内で病院や老人ホームなどを運営している医療法人社団緑祐会なのです。今持っている、自前のグラウンドのVONDS市原グリーンパークも、実はこの緑祐会の敷地内にあって近くにある特別養護老人ホームとはほぼ隣り合う場所に作られています。また、この特別養護老人ホームの職員としてVONDS市原の選手が実際に何人か働いています。
私の持論としては、医療現場とスポーツとは親和性が高いと思っています。以前、アスリートの雇用の場として医療機関や特別養護老人ホームを活用する方法があるのではないかと書いたことがあります。VONDS市原の場合は、雇用の場だけでなく実際のチームの活動現場までも医療機関や特養とリンクさせようとしているのが、この新しいスタジアム建設計画と言えるでしょう。まさに画期的な発想です。
今のグリーンパークでも、試合の日やそれ以外の練習の時に近くの特別養護老人ホームの入居者や家族、職員の人たちが見に来られるケースが多いようで、入居対象となるであろう高齢者とプレイヤーである若い世代との交流が日常的に盛んに行われています。もし新しいスタジアムが出来たならば、そうした交流がさらに拡がっていくことでしょう。そしてそういう環境の構築こそ、高齢者が活き活きと快活な生活を送ることができる社会づくりへの第一歩ではないでしょうか。
今後、高齢化社会から超高齢化社会へと進んで行くことになります。これからは、年齢を重ねてもいきいきと健康な生活を送ることができる人が増えていかないと、社会全体が停滞し活気を失われていきます。ただでさえ少子化で活気が失われるのではないかと危惧される日本。そんな先の見えない世の中で、歳をとっても活力を失う高齢者を少しでも減らす為には、このような高齢者の入居する施設や病院などの医療機関、あるいはデイサービスなどの介護施設などとスポーツとのリンクという新たな動きが必要でしょうし、それが実現出来れば明るい未来が開けてくるような気がするのです。
ちなみにこちらの事業計画は、2022年3月にスポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革推進事業」という、スポーツ施設の整備を通じてあらゆる世代や人たちがスポーツをやりやすい、スポーツに触れやすい環境づくりを進めるとともに、それらの整備に対して国や行政から補助金や助成金を支給するために公募しているものの一つです。このような優れた計画案が毎年、スポーツ庁のHP上で公開されていますので、もし興味のある方は一度覗いてみてください。それが証拠に、この「スタジアム・アリーナ改革推進事業」では以前お話ししたスタジアム建設に纏わる回で触れた相模原のケースや今年完成する長崎の新スタジアム、また秋田のケースでご紹介した県と市とがそれぞれ出した案についても、その詳細な資料が公開されています。さらに京都サンガの亀岡の新スタジアムやC大阪のヨドコウ桜スタジアムの改修計画、 FC今治の新しいスタジアムである里山スタジアムの事業計画も同様に公開されています。つまり、ここで公開される事業計画は近い将来、実際に建設されるくらい良く練られた案と言えるのではないでしょうか。
壮大なビジョンも、チームが結果を出さないことには…
そんな実現した事業計画と並び立つ「VONDS市原による医療・介護施設併設型のスタジアム整備事業」もおそらく近い将来、実現されることとなるでしょう。しかし、このレジュメに書かれている事業計画スケジュールでは、2023年に着工・建設が始まることになっていますが、現時点ではまだ始まっている気配はありません。そして、チームもまだJFLには昇格できていません。でも心配ありません。この建設計画には、地元市原市も協力的なのです。建設予定地についても、市原市が2020年3月に発表している、市原市総合計画の中にもちゃんと盛り込まれているのです。
市原市は、過去にジェフ市原にホームタウンから逃げられたという苦い過去があります。今のゼットエーオリプリスタジアムの大幅なスタンド改修工事行ったにも関わらず、川崎製鉄千葉製鉄所の跡地に建てられたフクダ電子アリーナが完成すると、ホームタウンを市原市と千葉市の併用とし、最終的には市原市とはホームタウン関係を解消しました。なので、市原市としてはこのVONDS市原はどうしても地元に根を張ってもらいたいと、必死にアプローチしているのです。
VONDS市原と市原市、地元の人たちとを繋ぐように計画されている新スタジアム計画。そして、それを実現出来そうなしっかりとした長期ビジョンを持ったクラブ。地域リーグレベルでこれだけしっかりとしたビジョンを提示したクラブは、おそらくファジアーノ岡山とFC今治くらいではなかったでしょうか。VONDS市原はそれくらい優秀なクラブだと思います。
これらを合わせれば、たとえ1度や2度JFLへの昇格を逃しても、スポンサーは早々手を引かないでしょう。それでも1年でも早く昇格する必要はあります。なぜなら、以前のような「昇格のみで降格はなし」といったレギュレーションではなくなり、昇格と降格が同時に発生するため、昨年のような入替戦や、成績次第では降格という危険性も起こりうるのです。昇格へのハードルが明らかに高くなったのです。なので、上がれるタイミングで上がっておかないと、いろいろなタイミングを失うことになりかねないのです。いつ、スポンサーから愛想を尽かされるか分かりません。その意味でも、今年は本当の意味で「勝負の年」と言えるのではないでしょうか。
今のVONDS市原を見ていて、正直なところ「圧倒的な強さ」はありません。でも安定感のある強さはあります。長いシーズンにおいては安定感が必要ですが、最終的に勝ち抜くためにはチームの強度が必要でしょう。先にも触れましたが、そんなチームの強度をどうやって付けるのか?そのあたりが、今年のVONDS市原の鍵となるかと思われます。そして、仮にJFLに昇格できたならは、先ほどの新スタジアム計画もぼちぼちと動き出すことになるでしょう。今年こそ、そのような流れになるように期待したいですね。あっ、地域チャンピオンズリーグでは関西勢だけにはお手柔らかに、よろしくお願いしますね!(笑)
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