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関係代名詞と接触節どちらを先に学ぶべき?

中学校の英語の教科書は昔と大きく変わっています。内容が増えて難しくなっただけでなく、各社で特徴が際立ってくるようになりました。ここでは、NEW CROWNとNEW HORIZONでの、関係代名詞と接触節の教科書での扱われ方の違いについて紹介します。


関係代名詞とは

whoやwhichやthatを使って、人や物を詳しく説明するための表現のことを関係代名詞といいます。関係代名詞には主に2パターンあり、主格(何が?を説明する)と目的格(何を?を説明する)に分けられます。

関係代名詞(主格)
 I saw a boy who broke the window. 
 窓を割った少年を見た。
関係代名詞(目的格)
 I saw a picuture which the artist painted.  
 その画家が描いた絵を見た。

関係代名詞の例

接触節とは

英語は後ろから詳しく情報を追加して説明する傾向があります。後ろから節(主語と動詞の構造があるもの)を使って説明するものは接触節と呼ばれます。接触節は関係代名詞(目的格)のwho、which、thatの省略と捉えることも可能です。

I saw a picuture the artist painted.  
その画家が描いた絵を見た。

接触節の例

そもそも、英語は様々な語句を使って後ろから詳しく情報を追加して説明する傾向があります。全てひっくるめて後置修飾といいます。現在分詞(ing形)や過去分詞、その他前置詞(in、 on、 atなど)を含むものなど、様々なものを後ろから付け加えるのです。接触節は、後置修飾の一種です。分詞の後置修飾はwho isの省略と捉えることもできるようです(a boy who is running in the park)。

分詞の後置修飾
 a boy running in the park
 公園を走っている男の子
 a T-shirt made in China
 中国製のTシャツ 
前置詞句の後置修飾
 a girl in a red skirt
 赤いスカートを履いた女の子

後置修飾の例

このように、関係代名詞と接触節や分詞の後置修飾は、関係代名詞の使い方から省略形と捉えることで導き出すことも可能です。複雑な構造の関係代名詞や接触節を理解するには工夫が必要です。そのため、教科書で扱われる順序は、教え方や学習者の捉え方に影響を与え得る要素です。

教科書で出会う順序

教科書毎に異なる順序

新課程NEW CROWN3では、以下のような順序でレッスン中に学習します。

①分詞の後置修飾
the girl playing soccer, a book written by Nishi
②関係代名詞(主格
I have a book that has beautiful photos.
③関係代名詞(目的格)
This is the book that I read yesterday.
④接触節(関係代名詞の省略)
a story everyone knows

新課程NEW CROWN3

まず、①分詞の後置修飾で人や物の後ろに説明を置くことを学び、②③関係代名詞で節を使った説明の仕方を学び、④最後に関係代名詞の中でも省略できるパターンがあることを学ぶという順序です。

一方、新課程NEW HORIZON3では、扱われ方が異なります。

①分詞の後置修飾
例:an athlete passing by, instructions given by the teacher
②接触節(関係代名詞の省略)
例:a picture I saw, a gift my uncle gave me
③関係代名詞(主格)
例:a man who has influenced the world

※目的格については補足頁での記載

新課程NEW HORIZON3

分詞の後置修飾をまず学ぶのは同じです。しかし、次に学ぶのは接触節(関係代名詞の省略)になっています。最後に関係代名詞の主格を学び、関係代名詞の目的格は補足頁での『入れることもできる』との記載に留められています。

どうしてこの順序?

NEW CROWN3では、関係代名詞の知識を覚え、そこから論理的に接触節を導き出すことを意図する配列です。文法知識の積み上げが前提ならば、関係代名詞が先のはずです。では、NEW HORIZON3の順序は何を意図しているのでしょうか。以下は私の推測です。

実はNEW HORIZON3は旧課程でも関係代名詞の前に接触節を配置していました。確かに文法を積み重ねるならば、関係代名詞を学んでから接触節の省略形にするほうが理屈にかなっています。しかし、言語は理屈でいかない場合が多いです。例えば、例外ない文法事項などありません。関係代名詞について言えば、目的格は省略され接触節が使われることが自然です。わざわざ関係代名詞を使うと不自然な英語になります。つまり、NEW HORIZON3では、より頻度の高い自然な英語に触れるように文法事項を配置したためではないでしょうか。

これは文法シラバス(文法知識の積み重ねで習得する)から脱却しようとしていることが鮮明に出たとも言えます。 文法シラバスとは、文法知識の積み上げで言語を習得するという学習観で教えていくことです。しかし、このような考えでの習得では知識が一つでも欠けるとうまくいきません。また、このような考えでの英語教育は今までうまくいってもいません。『英語の授業は英語で』のように、自然な英語にたくさん触れることで自然と英語を習得するという方針に学習指導要領も変化しています。

文法の積み重ねからの脱却

手元の新課程NEW HORIZON3 (p.77、リーディング本文)を見てみると、実は目的格の関係代名詞thatはレッスン中では何も説明がないまま、リーディング本文でさり気なく使われていることが分かります。この点は、同一ページ内(または以前のページ)で文法説明をされてから本文で出会う、という旧課程での扱いと異なります。 つまり、説明されない文法事項でも自然な英語表現ならどんどん出会うことになります。今までの文法シラバス前提から、編集方針が変わっているのではと感じます。

まとめ

関係代名詞において中学校検定教科書での扱われ方の違いを紹介しました。教科書の文量が増え内容も高度化していく中で、出版社毎の特徴が鮮明に現れるようになっています。NEW HORIZONからは、文法の積み重ねを重視する指導から脱却せよというメッセージを感じます。文法知識の積み重ねを図るのではなく、自然と英語に触れる中で習得するという狙いがあるのではないでしょうか。

引用文献

旧課程 NEW CROWN3

旧課程 NEW HORIZON3

新課程 NEW CROWN3

新課程NEW HORIZON3


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