君の呪縛。

君の呪縛。

君の不思議な魅力はえも言われぬ。
君を知る前の世界を君一色に塗り替えた。
君以外は全て偽物な気さえしてしまう。
君の存在感は、他に類を見ないと、未だ私は、君に敵う人を認めたことがない。
君は、いったい、どんな力で私を縛るんだろう。

君の呪縛。

あのとき、半身を失ったくらいの呆けた私の前に、君は突然現れた。
欠けた半身を探すように、私は君の姿を求めた。
必然だった。あのときは。

もう、君はここに居ないのに、
目標だった君の側を私は、今も探していた。
もう、君は過去に還ったのに。
今の時間に、君の存在感を求めてしまっていた。
もう、君は思い返す必要さえ残していかなかったのに。
私は一日も忘れたことはなかった。

君の呪縛。

いつの間にか、私は君の隣を夢見て、君の存在感を願い、無い物ねだりを重ねてきた。
いつしか君の幻影に囚われて、日常が凍りついたまま、ただ通りすぎた。

そこで私を動かしたのは、君と過ごした短い時間にあった、過去の記憶だ。

君の呪縛。

私は自分に、君のまじないを施したんだ。
けして、忘れることがないようにと。
君の呪縛の術者は私。
この魔女は、君の存在を借りて、自分にのろいを掛けたんだ。
けして、他所を振り返ったりしないようにと。

君だけに縛られたくて。
君だけに染まりたくて。
君だけに誓いたくて。
君だけを想っていたくて。

それは、魔女が半身を失った過去から学んだ知恵らしい。
否、魔女は過去を酷く憎み、恨んでもいたから。
魔女は、その時点より前を全て、切り去ったのだ。

未熟な魔女見習いの魔女。
魔法の掛け方を間違えた。

君の呪縛。

単純に、【他人の領域】を願った私の、凡ミスだ。
願えるのは【本人の領域】、それだけなのに。
【自分自身を見つめずに、君との過去を見つめた】私の因果。【自分自身】を怠った証。私の甘え。
私は【自分自身】を生きれなくなっていた。
【自分の領域】を省みなかったから。
【自分の領域】を願えるのは自分だけなのに。

【過去】に縛られた【不自然】なしもべとして生きていた。

私は君の呪縛の凄まじい力に惑わされて、
君の魅力にほだされて、
君という人を【逃げ】の理由にしていたんだ。
傷を負った過去も、君を失った瞬間も、全て。
現実を見ないようにしていた。

君の呪縛。

今夜、君の呪縛を解く。
君は、【君の領域】で生き、それは【他人の領域】で。
私は、【自分の領域】を一人生きることを選ぶんだ。

いつしか、君の呪縛に依存していた私は今夜眠りについて、明日朝、どんな私が目覚めるだろう。
願わくは、
【君の呪縛】を【過去の記憶】として、
【希望に変わる明日】を生きたい。

君の幻はもう追わないことにする。
私は、私を生きることにするのだから。
【君の記憶】に縋ったりせず、【自分自身】を見つめて生きるのだから。

君の呪縛を過去の時間にお返しする。
君が気付かせてくれた過去を今へ結び、明日へ託すよ。
凍っていた日常が動き出す。

明日からは、【自分自身】の力で君のことを想いたい。

君を一番に近くで願ったはずの私が、一番遠くで君を見ていなかったんだね。

君の呪縛。

君を呪詛に変えた私の日常は今日で終わる。
今この瞬間から。

君と私の存在は、私の中で、やっと一人の人間に戻り、私は、過去ののろいをやめて、今を見つめる。

そのことに気付けた今が目覚ましい。

さぁ、まじないをやめた私は、明日をどう生きるだろう。

今日もお疲れ様でした。
読んでくださって、ありがとうございます。

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