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映画感想:トーク・トゥ・ミー/TALK TO ME

子どもの頃に流行った度胸試しってありますか?

私の場合は、通学路の途中で大きな水路があって、そこをジャンプで飛び越えるってのがありました。

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助走をつけて怖がらずにエイヤと飛び出せば、運動神経が人並みであれば飛び越えることができる絶妙な幅でね。飛べた時には達成感があって気持ち良かったのよ。

でもさ、普通に考えれば危ない行為じゃん。水深は10cmもなかったけど、ジャンプに失敗して転げて頭をぶつけたら怪我じゃすまなかったかもしれない。

でも当時の小学生男子のコミュニティでは、一種の通過儀礼というか、当たり前にみんながやってたことだったから

「危ないから僕はやらないよ」

とは言えない雰囲気があったよね。

そして何より、飛び越えた時に気持ちいいってのがたちが悪い。度胸試し×気持ちよさによって起きる悪い化学反応、昨今の薬物の過剰摂取問題にも通ずるところがあると思う。

なんかそんなこと思ったのが今日の感想を記す映画。

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トーク・トゥ・ミー/TALK TO ME

フィリッポウ兄弟(2022)

簡単なあらすじ
睡眠薬の過剰摂取によって母を失ったミアは、母の命日に友人のホームパーティに参加する。そこでは剥製の人の腕を使った、降霊術が遊びとして流行していた。霊が憑依する時間は90秒を超えてはいけない。90秒を超えると、霊は身体に”居座る”らしい…

本作の監督、フィリッポウ兄弟は双子の兄弟で、なんとユーチューバーなんですって。チャンネル登録者数は驚異の400万人超え!モンスターチャンネルっすよ。

トーク・トゥ・ミーにおいて、物語の核となる降霊術が「90秒」という絶妙な制限時間つきってのも、ユーチューバーならではセンスなのかなって思いましたね。

お化けが憑りついて、徐々に変化があって、わかりやすく反応が現れて、みたいな観察を、Tik-TokやYouTubeショートに脳をおかされた現代人が長々と続けられないと思うんですよ。

恐らくだけど1分じゃ物足りなくて2分じゃ長すぎる、そこで90秒。90秒というリミットがあるから注目するし、画面内で大きな変化が起きてなくても、「いま何秒ぐらいだろう?」と緊張感が維持される。

賢い設定ですよねえ。

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単純にみえて色んな問題が複合された良作

話はすげーわかりやすくて

降霊術で遊んでたら洒落にならんことになってどうしよう、ってだけ。

でも作中で描かれている事象は現代の若者の抱える問題から、時代を問わず起きている問題が描かれててアッパレ!って感じ。


冒頭で記した度胸試し云々は、どんな年代の人でも経験した、みたことある事象じゃないでしょうか。それは「こっくりさん」だったり「失神ゲーム」だったり「タバコ」や「酒」「ドラッグ」だったり様々なんだろうけど…

それらに身を委ねる根源には、同調圧力や家族関係の不和があって

国や年代を問わずに、似たような事象があるんだろうなって思わされましたよね。私の娘だって、何かしら形を変えて同じような経験をするだろうな怖い。

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主人公のこと全然好きになれなかった

本作の主人公・ミアは”なんか嫌な奴”なんですよ。

ホームパーティに参加してすぐに「なんであんな奴連れてきたの?」「すぐにベタベタするから嫌なんだよ」って言われちゃうんです。

まだ物語の冒頭だから「そんなこと言わないでよ~」って思うんだけど、物語が進むにつれて「いや言ってることわかるわ」って同意してんのよ。

親しかった母親が睡眠薬の過剰摂取で亡くした!

それきっかけで父親と不仲で家に居場所がない!

みたいにわかりやすく同情できるポイントがあるんだけど、それ以上に嫌な部分が見えてきて

それは流されやすいところだったり、自分の寂しさにかこつけて親友の彼氏を家に誘っちゃうところだったり、考え無しの向こう見ずなところだったり

「あー、コイツのこと好きになれねえなあ」

って致命的なまでではなくても。思わされるんですよね。そう思われた人がコミュニティに属する為に何するかって言ったら身体を張った無茶、度胸試しですよね。やばい負のループすぎる!!!

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親として教えるべきこと

印象的だったのが、ミアの親友・ジェイドの母親が「息子に何も飲ませてなかったのね」「疑ってごめんね」とミアを許すシーンですね。

たぶん作中の世界においてジェイドの母親は厳しめの価値観をもった人で「酒タバコドラッグ婚前交渉はダメ!」って名言してるんですよね。

そこはジェイドや息子・ライリー、特別親しくしているミアにも浸透している様子なのですが、もちろん90秒の降霊術のことは知らない。

予め知っていれば、きっと「絶対にやっちゃダメ!」と釘をさしてたと思います。でもそういう危険な遊びを、あらかじめ網羅的に把握しておくなんて無理な話ですよね。

子どもに対する教育として、具体的なNG行為を教えるのと、どういった行為はNGとなるかを教えるのって、難易度にかなーり差があるんですわ。当たり前だけどね。

とはいえ、その難易度を、子どもと一緒に乗り越えていく必要性を感じましたね。

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さいごに

フィリッポウ兄弟は、近所でドラッグを使用して痙攣する子どもと、それを笑いながらスマホで撮影する子どもをみて、本作の着想を得たそうです。

どんな異常事態であっても、スマホで撮影して、コンテンツ化するって風潮も怖いっすよね。

Xでバスってるポストにメディアのアカウントが「この動画を取り上げたいんすけど」ってオファー出してるのも、他の人たちが目で見える形でやってるの良くない気がするんですよね。

なんかキショないっすか?

いやあマジ色んなことを考えらえれるいい映画だったなぁ

オススメです!!

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