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映画感想:リバー、流れないでよ

年始早々、コロナとノロに感染しました明けましておめでとうございます。

2024年にもなってコロナて…もう終わった感染症、オワカンじゃん…とか思ってましたが現役ビンビンでしたね。39℃越えの高熱にうなされて大の大人が泣きそうになりました。

まあ、この話どう掘ってもオモロないので、さっさと映画感想にいきま

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リバー、流れないでよ

山口淳太(2023)

簡単なあらすじ
京都の観光地、貴船にある旅館「ふじや」で仲居を務めるミコトは、仕事の合間に裏の貴船川のほとりで、物思いにふけっていた。まもなく仕事に戻り、客間の食器を片づけていたところ、気づけば2分前にいた貴船川のほとりに戻されていた。

2分間というかなり短い尺がループしていき、かつループに巻き込まれた登場人物たちはループを”自覚”しており、ループの体験をちゃんと”記憶”している、というありそうでなかった設定。

ループものといえば

いろいろとありますが

主人公、プラス相方ポジの少人数だけが”時間遡行”を認識している

ってのが大半、そこが違う。

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どんな人たちにオススメか

キャストをみて、あまりピンとこないだろうがそれは仕方ない。製作がヨーロッパ企画という日本の劇団で、キャストの9割は劇団員で構成されているから。

前知識なく観た私は「なんかえらいオーバーリアクションな、臭い演技だなあ」だなんて思ったが、それは劇場の上での演技手法をそのまま持ってきたからで、ベロベロバー演技の説明口調は許すまじ!という映画好きの方は

すぐに受け入れられないかもしれないが、設定がオモロいので物語に引き込まれて気付けば気にならなくなりました。

そういう意味では地上波のドラマの演技に近いものがあります、笑えるテレビドラマ好っきゃねん!って方は大好きな雰囲気だと思います。

加えてめちゃ優しい作風なので

グロ、ホラー、サスペンス、暴力描写きっちーっすって方は観やすくていいと思いまっ!

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2分間という短いスパンでの繰り返しのオモロさ

きっかり2分で過去に巻き戻る、という設定故に

86分というそこまで長くない上映時間の中で、30回以上のループが行われます。なので、タイムループ大喜利が何度も何度もできるですよ。

熱燗がいつまでも温まらないとか
〆の雑炊が食っても食っても無くならないとか
タイピングしてもすぐに巻き戻って小説の執筆が進まない作家とか…

すんごいわかりやすいボケが行われるので誰でも笑えそう。老若男女が笑えるって凄くない?

また観客からすれば「もうすぐ2分ぐらい経つんじゃない?」みたいな時間間隔がずーっと持続されるので、観てて飽きないんですよ。作品に没入できてないと少し目を離したくなることもあると思いますが

無意識のうちに時間を測ってたり

2分という短い尺故に「この2分で何が起きそうか」といった推理が誰でもできたり、かつすぐに答え合わせが行われるところなど

2分間のループ、という設定の巧妙さ!!
すばらっ!

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やはり人間は、物事に意味を求める生き物である

2分間のループが発生した原因は何か、物語の中盤で仲居であるミコトは「貴船川に祈ってしまった自分のせいだ」と告白します。

交際相手である料理人のタクが、自分に黙ってフランスへフレンチの修行を考えていること。このままじゃタクはフランスへ行ってしまうので、流れないでよ…と祈る。

実際には原因はまったく別のところにありましたが

ミコトはループがはじまって、そこまで経たずに原因は自分にあると考えついていました。

時間の流れをゆがめて、多くの人を巻き込み、世界をループさせる。だなんてとんでもないパワーが消費されてると思いませんか。それと自分の恋の悩みを紐づけられるだなんて、少し傲慢だと思いませんか。

でも、原因は自分だと思えれば、自分の悩みはそれだけ多くのパワーが捻出されるモノ、私の悩みとタクの悩みは到底同じレベル感に思えないが、時を歪めるほど真剣に私は悩んでるんだと…

自分を肯定できるように思いませんか?

人間って感じでよくない?
そしてそれを作中でキッパリ否定されるところも

ちゃんと前を向いて歩かんかいと、背中を押される。足踏みを肯定してくれるし、とはいえ先へ進む必要性を示してくれる。

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ずーっと優しい。

京都の老舗の旅館のスタッフたちの所作や言葉遣いが綺麗なんすよ品がある。ループが何度も繰り返されることで、登場人物の心身が乱れていくんですがそれでも品が良いのよ。

なんなら宿泊客でさえ品がいい。

運悪く初期位置が温泉になってしまう編集者の扱いなんて、ちょっと可哀そうじゃん。ブチ切れて全員ぶん殴られても仕方ないと思うけどそんなこと起きないし。

犯罪しても巻き戻される、という異常事態に変な方向へアクセルを踏んでしまう人がいてもじぇんじぇんおかしくないのに、あんま起きない。ぜんぜん暴力が起きない、みんな優しい。

これは悪くいえば漂白された嘘んこの世界、ともいえるが徹頭徹尾描かれる、この優しい世界はそれでいいよね、と思える説得力があったし

観終わった後に

「これなら誰にでも勧められるじゃん!」

という嬉しい気持ちになれた。

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さいごに

物語の設定上、同じ時間が何度も繰り返される、はずなのだが

撮影都合上、気候や気温といった外的要因が均一な訳もなく

めちゃ雪が降ってたりめちゃ晴れてたり場面によって異なる貴船の景色がみられる。そういった変化は、物語の中で「世界線が変わったから」と説明されたが

実際には撮影中に異例の寒波が来たりと大変だったらしい。

同じ場面の繰り返しの中で

登場人物の化粧ノリなどが微妙に変わってるのに注目するの良い。

鑑賞後に、親しい人にすすめてもっかい観てくれ。

オススメです。

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