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Ep5 霊界とリチャード

ムスメがスクールバスに乗り込む前に、ささっと走りより人差し指でちょんっとつっついていったのが、リチャードの右腕に彫られた「イカリのマーク」のタトゥー。"Swallow the anchor"ってフレーズ知ってるか?イカリを飲みこむと重くて動けないだろ。だから、その場に止まる。つまり「退職した」って意味なんだ。英国海軍のOBはみんなそう言うのさ。そんなうんちくで始まった今朝のリチャードとのトーク。

イスラム国はterribleだな。ビデオに出ていた兵士の身元は既に割れているらしいぞ。声紋と目の虹彩から各国の諜報機関が分析をして、イギリス出身のパキスタン人の誰それというところまではもう突き止めているんだ。やつらも時間の問題だな・・・そんな時事ネタに続き、”Dear Friend”とリチャードがかつて呼んでいた「Jamesという友人」の話になった。

かつての海軍仲間で、パタヤに住んでいたが、ガンが進行してしまい、バンコクの病院で治療を受けた末亡くなったDear Friend, James。

そいつは余命わずかになり、よく私に聞いてきた。死んだらどうなるんだろうな?ってな。無になる、生まれ変わる、天国に行く・・・まぁ色んな説があるよな、と私は判然としない感じで答えてたんだ。Jamesは、女癖が少々悪いやつだったんだが、男気があってな。約束したことは必ず守る男だった。病床の最期「おい、Richard、君に絶対に会いに行くからな。」彼はそう言い残して亡くなってしまったんだが、その2、3週間後に、私は不思議な体験をしてな。

ある晩のことだ。家で寝ていたら、気配がするので眠りから覚めると、どこからか"How're you doing?"って聞こえて来たんだ。これは彼のお決まりの挨拶でな。「Jamesが約束を守りに来たんだ!!」と、ハッと目を開けると、そこに見えたのが、「8人、9人ぐらいの女性に囲まれ楽しそうにしているJames」だったんだ!唖然とする私に彼はこう告げたんだ。「Richard、見てみろよ、天国は本当にあったよ!」と。

生前好きだったことがその人の天国になるらしい。野球が好きだった人は、ずっと野球を観戦し続けられる世界に。飲み食いが好きな人は、飲んでは食べての中世ローマのような世界に。そして女性が好きだった彼は、女性に囲まれる世界にいってしまったってワケさ。「オレだけの天国さ、"individual heaven”だよRichard!」 Jamesは私にそう告げると、どこともなく消えていったんだ・・・

そんな死後の世界なんて聞いたこともなかったし、にわかには信じられなかったさ、もちろんな。でも、理屈や説明なんていいんだ。Dear Friend, Jamesにまた会えたんだからな。本当に嬉しかったよ。リチャードは特に「話を盛っている」そぶりも見せずに、親友との再会話を淡々と語ってくれた。長く生きていると、そのような不思議な体験の一つや二つ、もしかしたら誰にでも起きるのかもしれない。僕にとってのindividual heaven。どんな世界が待っているのか。

画:久保雅子 www.masakokubo.com/

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