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ヒューマニズム

いつもの朝
いつものホームが
人でごった返していた

「○○駅でお客様が列車と接触し…」
「大幅な遅れが見込まれ…」
「大変ご迷惑をお掛け致します…」

確かに列を成すのは
迷惑そうなしかめっ面ばかり

ひとつの思い詰めた命が
    その肉体と精神が
冷たい塊に引き裂かれ
そこにあったはずの
たくさんの時間が奪われた

いつもと変わらない 最期の朝

数十分の時間と引き換えに
命さえ値踏みされる世界

生き方 そんなもの
学校ではちっとも教えてくれなかった
ましてや 死に方なんて

人様に迷惑を掛けずに生きていきましょう

教えられたことと言えば、
せいぜいそれくらい

この星に迷惑を掛け続け
謝罪の言葉ひとつも出てこない

善悪も無いただの現象にさえ
「禍」と名をつける図々しさ

幸せであって当たり前
被害者面した地球の征服者たちは
今日も誇らしげに 愛を語る

言葉を持たないものたちにとって
これ以上迷惑な話はなかった……

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