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「BBC プーチンと西側諸国 (Putin and The West)」DVD3巻(東野篤子監訳)、予約開始となりました

今年春にオーストラリアから帰国してから、もっとも力を入れた仕事の一つが世に出ようとしていますので、お知らせします。

BBCのDVD全3巻シリーズ「プーチンと西側諸国(Putin and The West)」の日本語字幕版が、丸善出版から出版されることになりました。
私は全3巻の監訳を担当しました。

私が担当したのは、
・ 各巻の監訳

・ 本シリーズの解説および各巻の内容紹介(どちらもDVD本体とHPに記載)。リンクは以下。

・ 各巻の解説(HPにのみ記載。こちらは私の解釈を含めており、「内容紹介」よりも大幅に長いものとなっています)

https://www.maruzen-publishing.co.jp/smp/info/?action=detail&news_no=20861

・ 監訳者の言葉

https://www.maruzen-publishing.co.jp/fixed/files/pdf/306052/catalog_pdf_306052.pdf

DVDカバーの表と裏です。

以下のリンクは各巻の内容紹介です。
それぞれに関して2分程度のサンプル動画もありますので、どうかご覧いただきたいと思います。

第1巻  ロシアの「縄張り」 [My Backyard]
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306051.html

第2巻  アラブの春での復讐 [Back with a Vengeance]
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306052.html

第3巻 ウクライナ侵攻への道 [A Dangerous Path]
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306053.html

「ロシアによるウクライナ侵略は、西側が十分な外交努力を尽くさなかったせいで起きたのだ
(=よって西側のせいでもある)」。

このような指摘を耳にした際、なんとなく納得してしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし、このDVDで描きだされるのは、ロシアに翻弄され、戸惑いながらも、必死でロシアとの外交に食らいついていこうとしたヨーロッパ諸国の姿です。
ロシアとの対話を追い求め、結局のところまともに相手にされないヨーロッパ諸国の姿は、時に滑稽に映る時すらあるでしょう。
それでもこの一連のプロセスを観て、
「西側の努力が足りなかったせいで、プーチンは『やむなく』戦争を始めなければならなくなった」と言い続けることは本当に可能なのでしょうか。
監訳者としては、まさにこの点を世に問いたいと思っています。

価格は1巻あたり46,200円ですので、とても気軽に買ってくださいとお願いできるお値段ではありませんが、
高校・大学の先生方には資料としての購入をご検討いただければと思いますし、皆様におかれましては最寄りの図書館等にリクエストを入れていただければ大変ありがたく存じます。

また、この映像資料を元にした解説講義・講演なども、関東に限らず可能な範囲で精一杯対応いたしますので、必要がありましたらお声をかけていただけますと幸いです。

ここまでの大規模な監訳は初めて担当しましたが、
DVDの監訳って、本当に「字数との闘い」なのですね。
私はついつい大学教員の悪い癖で、翻訳に出来るだけ情報を詰め込んでしまう結果、字幕が長くなりがちなのですが、
やはり映像を見て一瞬で確認出来る字幕の文字数は限られている・・・ということで、私の用意した翻訳は大幅に削られることも多く。
担当さんとも何度もやりとりしましたが、折り合いが付かないことも大変多かったのでした。
それでも、なんとか分かりやすいものを作りたいと努力しました。

「東野なんか、ロシアの専門家でも、ウクライナの専門家でもない。
ただのヨーロッパ専門家じゃないか。こんなやつを解説に使うな、こんなやつを信用するな」という罵声を、侵略が始まってから何度浴びせられたかしれません。

そうしたご批判は理解しますし、重く受け止めますが、
このDVDシリーズに係わる仕事ーーつまり、ロシアによるウクライナ侵略を巡る、ロシアとヨーロッパ諸国との外交交渉の過程に関する翻訳と解説ーーに限って言えば、この仕事を引き受けることが出来る研究者は日本では非常に限られており、そして私はその一人だったと、僭越ながら自負しています。
私にお声かけ下さった丸善のご担当者さんには、心から感謝しております。

この仕事をしていた今年5月から6月にかけては、私の研究者人生で最も過酷な時期でした。
勤務先で新しく就任したポジションの業務を、右も左も分からない状態でこなし、
少しでも時間が空けばこちらの翻訳に手を入れ、
厳しさを増すウクライナの状況を絶えずチェックし
そして(これまでも報道されているとおり)、SNSでの私への激しい中傷をめぐり、弁護士の先生を中心に対応を進めていました。
もちろん、他の仕事も山のようにありました。

ご自分の仕事まで後回しにしてまでも中傷の証拠を集め、まとめ、私を支えて下さる人がいなかったら、この監訳をはじめとした大事な仕事を前に進めることは、絶対に不可能でした。

改めて、心から感謝します。

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