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お砂糖とスパイスと塩胡椒と何か

 いくら言ってもわからないようなので俺はきみを食べることにした。

 そう言うときみは目を丸くして、冗談でしょう、だって牙も生えそろっていないのよと、女特有の小馬鹿にした態度でそっけなく見つめ返してくるのだからたまらない。

 いいか、男の大多数は女がやせほそることなんてちっとも求めていないんだ。何度言ってもどうしたって骸骨と肩を並べて寝そべろうと必死になって生命を燃やしている。勘違いもいいかげんにしろ、きみは俺の食料だ。何度も何度もその言葉が舌の端から飛び出しそうになったが、ここまで何とか堪えてきたのだからもういいだろう。砂糖とスパイスは万年品切れなんだ、塩と胡椒とバターにまみれて死ね。

 牙が生えそろっていないなら穴を開ければいい。骨に穴をあけて骨髄をすする料理があるのを知っているか? 小洒落たカフェで目にするようなものじゃないし、きみは知らないだろう、知っているような女なら頭から喰ってしまうが、おまえの頭が美味そうだと俺にはどうしても思えないんだ。

 蜂蜜を塗りたくったような色の頭髪が、見た目どおり甘ければどんなにいいか。けれどおまえはそんなに甘い女じゃないのを俺はよく知っているよ。煙草を吸う女は本当は嫌いなんだ。丸々肥えたおまえの腹が、腿が、ふくらはぎが好きなんだ。大多数と一緒にしないでくれ、俺の本性は文字通りの飢えた犬だ。

 柔らかい肌に爪を突き立てるとぷつりと赤い珠がうかんだ。命の滴を舐めたがる阿呆のつらをして、骨の奥まで一気に舌を突き通す。おまえは恍惚とした顔をして、俺の頭を撫でているだけだ。

 男を飼うって大変なことね、知ってたわと、煙草のにおいが染みついた舌で、俺の鼻の頭を舐める。今から三分後、俺はお前をオーブンに投げ込んで焼く。告知してやろうかどうか迷ったが、結局黙っていることにした。

 可哀想なんて思うわけがない。

 捕食者と男を同一線上に並べているから、おまえはいつか焼かれる女だと思っていたんだよ。


 私は骸骨になりたかったわけじゃないの。

 ただ綺麗に消えたかっただけなの、なんて。

 たっぷりと脂肪の乗った腹を揺らして、何を浮かれたことを言うんだ、××。


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