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自伝小説 ままごとかあさん17  ソフトクリーム

もちろん家族との楽しい時間もたくさんあった。


母は料理を作ること

食べることは

好きだったので

夕飯のおかずは毎日3品以上あった。


食べ物に関しては

母の‘’面倒くさい‘’が発動することは無く

オーブンを使って

大きなチキンを焼いたり

スパゲティ入のグラタンを焼いたりと

手間をかけて

ご馳走を作ってくれた。


4歳の誕生日に

母が手作りのケーキを作ってくれた。

スポンジが膨らんて行くのを

オーブンにかじりついて

眺めた。

結局、スポンジは膨らまず

ぺしゃんこだったけれど

母と一緒にクリームを塗ったり

いちごを並べたりするのが

とても楽しかった。

カタチはガタガタだけど

最高に美味しいケーキだった。



父は泊まりのある仕事をしていて

平日が休みになることが多かった。

休みの日によく父と電車でお出かけした。

駅までは父の自転車の後ろに乗った。

いつもは怖くて

近づくことも手をつなぐことも

しなかったけど

お出かけの時は別だった。

自転車から落ちないように

父の背中を掴むと

おしりのあたりに

慣れないモゾモゾした感覚が湧いてきた。

恥ずかしくて

照れるような気持ち。

ほんの5分ほどの時間が

大好きだった。



父は出かけるのが嫌いな母の代わりに

映画やいろんなイベントなどに

連れて行ってくれた。

父の職場が経営している

レストランが

駅の構内にあったので

帰りに必ず寄って帰った。

ワタシは父の職場に行くのが

大好きだった。

いつも職場の人が

ワタシにソフトクリームを作ってくれた。

バニラ味とチョコ味とメロン味

を山盛りにした

スペシャルソフトクリームだ。

ソフトクリームを味わいながら

細い通用口から

早足で駅を行き交う人を眺める。

ねえ!ホラすごいソフトクリームだよ!

いいでしょ!

みんなに大声で自慢したかった。

家と違って

父は怒らずフツーに職場の人と

世間話をしている。



大きいので

溶けたクリームが手について

ベタベタになってくる。

ワタシは黙って

スペシャルソフトクリームを味わった。




家に帰ると

いつも通り

父は母に駄目出しをして怒り出す。

家族が揃うと

とたんに居心地が悪くなる。



ワタシがもっと賢くて

身体も丈夫で

何でもできる子だったら

父も母もフツーでいられるのかも

しれない。


ワタシはなんて駄目な子だろう。


やり場のない思いは

自分自身へと向かって行った。



つづく

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