見出し画像

自伝小説 ままごとかあさん19  頭痛

小学校5年生の冬

ワタシは‘’ハンプティダンプティのうた‘’

を思い出そうと赤いソノシートを探していた。

確か

‘’ハム ハム ハムは 美味しい‘’

で始まる歌だった。

母に言っても覚えていない。

押し入れの奥に見た気がして

何度も探したけれど見つからなかった。



その翌日のこと

頭痛がしたワタシは保健室へ行った。

頭痛は悪化。

吐き戻したワタシは

そのまま意識を無くし

救急車で運ばれた。



その時のことは

断片的には覚えている。

担任の男の先生におんぶされて

自宅まで帰る道のり。

救急車の天井。

病院で何かされて

それがイヤで暴れた。

何か言おうとしても

言葉は出ず

何か悪い夢を見ているようだった。




ふと気付くと

病院のベットにぐるぐる巻きに

されていた。

「よかった。心配したんよ」

母の声がする。

先生と看護士さんを呼んでくれた。


ぐるぐる巻きをほどいてもらい

落ち着くと

母がこれまでのことを話してくれた。




学校からおんぶされて帰ったワタシは

救急車で近くの病院へ運ばれたが

そこでは診てもらえず

大きな病院へ搬送されたそうだ。

点滴やオシッコの管をつけようとすると

暴れたため

ぐるぐる巻きにされたそうだ。

検査をしても

どこにも異常はなかったそうだ。

意識が無くなって2日目、

このまま目を覚まさなければ

危ないかもしれないと言われたらしい…。




「目を覚ましてよかった」

しっかりとワタシの目を見て母が言ってくれた。

目の奥がじんわりと熱くなった。

こんなに事になってしまって申し訳ないと思った。



検査をしても

やっぱりどこにも異常は無い。

ワタシは個室から大部屋に移された。


大部屋には

生まれつき身体の不自由な子や

重い病気の子もいた。


ワタシより小さい子が

点滴やいろんな管をつながれ

頑張っている。


身体に異常も何とも無く

直ぐに退院できる自分のことが

なんだか申し訳なく感じられた。




退院してから

1度検査に行ったくらいで

大きな病院へ通うことはなかった。



…が

その後、

たびたび偏頭痛が起きるようになる。

吐き戻しをするくらいに

キツイ偏頭痛だった。

母にまた大きな病院へ行ってみては

どうかと提案したが

「面倒くさいから行かない」

で終わった。


近くの医者へ行き点滴をしてもらうと

偏頭痛は治まった。

点滴の間、

母はいつものように用を足しに行く。

「目を覚ましてくれてよかった」

と言ってくれた母はどこへ行ったのだろう。

窓の外を流れる雲を見ながら

‘’いっそのこと目が覚めない方がよかったのに‘’

と思った。



つづく

サポートしてもいいよ~!と思った方、よろしくお願いいたします🙏活動資金とさせていただきます☺