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[MMPI研究0]最新の妥当性尺度の源流~Greeneの妥当性尺度解釈ストラテジー

  このノートは、MMPIヘビーユーザー向けです。
 MMPIの妥当性尺度の、最新のものはすでに昔にそのプロトタイプがあった(のかもしれない)、ということを示します。

最新の妥当性尺度


 今までのノートで示していますが、MMPI-2/2RFでは、妥当性尺度が色々増えたり様変わりしています。(これとかこれとか。これもね。MMPI-2RF/3の妥当性尺度も2を引き継いでいる模様です)
  MMPI時代の妥当性尺度は、L,F,Kの三つがあってそのバランスを見ようね、だったんですが。
 MMPI-2以降の妥当性尺度は、この図表になるのかなと思ってます。

MMPI-2妥当性尺度解釈プロトコル
MMPI-2妥当性尺度トレーニングスライドをもとに作成)

  注目は、「過剰報告overreporting」「過少報告underreporting」です。MMPIをみて、自分の症状や状態や問題を、「過剰に」報告すること、より問題があるように症状があるように示す傾向です。「過少」はその逆。どちらも冷静に/”正確に”自分の状態をとらえているのではありません。「過剰」はヒステリックにオーバーに、自分の病気を本来以上にひどくとらえています。「過少」は、引き算しすぎ、否認・抑圧・抑制のはたらきが疑われます。

 でもMMPI時代に(MMPI-2移行期に)すでに「過剰報告」「過少報告」の概念はでていました。

Greeneの妥当性解釈ストラテジー


それが、これ。

 

Greeneの妥当性尺度解釈ストラテジー

 
 最新の図と、上から順に実は対応しています。
 「非内容ベース」→ 不応答CNSの除外
         → 項目が一致の認証
 「内容ベース」→ 項目の正確性の認証

 ということ。
 まずは「不応答CNSの除外」。「無回答」かどうか、をみるわけですね。
 次いでMMPI-2でいう「ランダム回答randum responding」「とらわれ回答fixed respoding」は、greeneでは「項目が一致の認証consistancy of item endosement」という概念でとらえています。項目がちゃんと答えたいのとあっているか、一致しているか、ということ。「はいはい」傾向(Yea-saying)「いいえいいえ」傾向(nay-saying)みたいに「とらわれた」回答をしていないか、ランダムにこたえてないか、をみようというものです。 そう、ここまではほとんどおなじですよね。

  ここからが違います。続く「内容ベース」に相当するもの。greeneでは「項目の正確性の認証 accuracy of item endorsemen」。ここで「過剰報告」と「過少報告」をみます。でも使っている尺度がちがうんですよね。これは、MMPI-2RF/MMPI-3にはつかわれないであろう尺度たちも含まれてるわけです。

Greeneの「過剰報告」「過少報告」の見方

 過剰報告と過少報告をみるために、最新のもの「Fb,Fp,FBS」など新しい尺度を当てていくのですが、Greeneは既存の尺度の、力業の組み合わせをしていきます。
 図表で略されている尺度を解説すると、
 「明瞭隠蔽尺度」:Wiener&Harmonの明瞭隠蔽尺度の総T値差を指します。明瞭隠蔽項目は、一部の臨床尺度(2,3,4,6,9尺度)の下位尺度であり、尺度内容が明瞭に病理を示す方向か(明瞭)、そうではないか(隠蔽)を示す尺度です。明瞭項目のT値の総和と隠蔽項目の総和の差を用いている。数値が高いと過剰報告となります。
 (※なお明瞭隠蔽項目自体が、MMPI-2RF/MMPI-3では、そのあいまいさのために除外されていく運命の項目です。この尺度を使ったやり方そのものが、新しい見方では不可能になると思われます。)
 「Lachar&Wrobel critical item」は、Lachar&Wrobe危機項目の総数を当てています。11カテゴリー、全111項目からなるもの。項目を「そう」と答えた数の総数を用いています。数値が高いと過剰報告となります。
 F-K index、Dis-rは、既存のテキストにも出ていますから探してみてくださいね。
 MpはMalinger potitive Scaleといわれており、それ以上わかりません。名称から「詐病」を探すための尺度、なのでしょう。

 ぼくはMp尺度以外は、自分の採点プログラムに導入してしばらくつかっています。経験上、過剰報告と過少報告の傾向をみることはとても役に立ちます。印象としても「オーバーでヒステリックで、自分の経験を強く」語る過剰報告傾向の人と、「抑圧否認抑制」の過少報告傾向の人は、Greene
の尺度たちがしっかり見てくれているように思います。

 Greeneの提出した概念が今に引き継がれる源流なのかどうか、そこまではわかりません。ただ「過剰報告」「過少報告」という概念の有用性が引き継がれていることは確かのようです。

文献


 Green,R.L.(1991)The MMPI-2/MMPI An Interpretative Manual. Allyn and Bacon

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