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【MMPI研究2】MMPI-2に学ぶ妥当性尺度② ~妥当性尺度の基本(トレーニングスライド後半)

「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。
 以下は、MMPI-2トレーニングスライド、なるもの。今回は後半。各妥当性尺度について。

6,どちらでもないCannot Say (CNS/?)
• 567項目の「尺度」 
• 可能な上昇の理由: 
 – 協力態勢の欠如と防衛
 ー 洞察の欠如 
 – 強迫性 
 – 読みの困難 
 – 混乱 
• プロフィールへの効果:
 – しぼんだスコア
 – 出現場所による
   •もし1つの尺度の90%の項目が「?」だった場合、その尺度の予測的妥当性の強さがほとんどない

7,変更反応非一貫性尺度VRIN (Variable Response Inconsistency)
• ランダム回答を探すために設計された。
• 項目内容が、似ているもしくは反対の内容のどちらか。
• 47と12の対の項目が、二つの方法でスコアされる。47 Item Pairs, 12 Can Be Scored Two Ways
•T値レンジ30~120 
• 適用 
 – ランダム回答の探索 
   VRIN > 80 プロフィール解釈不能 
 – “過剰警戒”の探索
   VRIN < 40
 – F(低頻度)尺度の解釈の補助 

8,是認反応非一貫性尺度TRIN (True Response Inconsistency)
• とらわれ回答(黙認および反・黙認)を探索するために作られている。
•20対の内容が反対な組み合わせ、3対の対称的にスコアされる項目(両方「はい」もしくは両方「いいえ」)
• 粗点は、T値に変換され、つねに50に等しいかもしくはそれ以上になる。
•T値50以上は、「T」もしくは「F」がつく。
•以下は、とらわれ回答
 – TRIN > 80T OR TRIN > 80F
 [参考]13点以上は黙認(yea-saying)傾向、5点以下は反黙認(nay-saying)傾(RobertGordon
 高いスコアは黙認(yea-saying)、低いスコアはは反黙認(nay-saying)傾向(Green,1990)
• 適用  
 – とらわれ回答の探索 
  • 読みや理解の困難 
  • 反抗性 
 – L,K,Sの解釈 
9,F
• 過剰報告を認めるために使われる 
• 冊子の最初の370項目のうちの、60項目の「低頻度の答え」 
• 可能な上昇の理由 
 – 意図的な過剰報告 
 – ランダム回答 
 – とらわれ回答 
 – 重度の精神病理もしくは重度の苦悩 
 – 非意図的な過剰報告 
•ランダム回答の上昇にはVRIN 
•とらわれ回答の上昇にはTRIN 
• 意図的な過剰報告の上昇にはFp

10,Fb
• 検査の前半と後半の回答の変化を探索するために作られた 
• 冊子の後半にある、40の低頻度是認項目 
• 可能な上昇の理由 
 – 意図的な過剰報告
 – ランダム回答
 – とらわれ回答
 –重度の精神病理もしくは重度の苦悩
 – 非意図的な過剰報告
 – 疲労
• Fb> F+20 は回答の際に有意な変化が起こっている

11,Fp (Infrequency-psychopathology)
•精神病理がある人で、意図的な過剰報告を探索するために作られた 
• 精神科入院患者を含む様々な臨床サンプルによって低頻度に是認される27項目 
• 可能な上昇の理由
 – 意図的な過剰報告 
 – ランダム回答 
 – とらわれ回答 
• Fp>100 & VRIN<70 & TRIN<70 は過剰報告を示す 
• Fp<70でFが上昇する場合は、Fの上昇は深刻な病理、苦悩もしくは非意図的な過剰報告を示すかもしれない 
• Fpが70以上100以下は、症状の誇張を表す 

12,Symptom Validity Scale (FBS)
(省略)

13,希少な善良さ(L)尺度 Uncommon Virtues (L ) Scale
• 意図的な過少報告を探索するために作られている
 – 数少ない、希少な善良さが表れる 
• 15の明瞭項目 
•すべて「いいえ」で採点される 
• 可能な上昇の理由 
 – 意図的な過少報告 
 – 洞察の欠如
 – 非常に伝統的
 –無差別な「いいえ」の回答
•Lの上昇があっても、MMPI-2の実際の尺度が上昇しないことが、精神病理がない、と推論することはできない

14,K
• 非意図的な過少報告を探索するために作られている 
 – 良い適応と精神病理がないこと、の主張
• 30の”隠蔽”項目
•1項目以外は「いいえ」
• 可能な上昇の理由 
 -防衛 
 – 心理的健康 
• 臨床場面でKが上昇した場合、実際の尺度の上昇がないことが精神病理がない、という推論はできない 

15,誇張的自己提示 Superlative Self-Presentation (S)
• ブッチャとハン(1995)によるもので、MMPI-2 項目全体で、過少報告を同定するために開発された
• 50項目で、44の採点キーが「いいえ」
• 防衛の特定の領域を定めるために、下位尺度がある 
 – 人間的善良さへの確信
 – 平穏
 – 人生への満足感
 – いらだちや怒りへの忍耐と否認
 – 倫理的欠点の否認

https://www.upress.umn.edu/test-division/mtdda/webdocs/mmpi-2-training-slides/interpretation-of-mmpi-2-validity-scales
より

[コメント]
 今までMMPIにあった尺度はCNS=?、L,F,Kですが増えてます。前半を見ていただくとわかる通り、前半のまとめに沿って尺度の見方が整理されてます。 例えばFは「•ランダム回答の上昇にはVRIN •とらわれ回答の上昇にはTRIN • 意図的な過剰報告の上昇にはFp」。前半のまとめの図表ほど、すっきり整理されておらず、やっぱり今まで通り妥当性尺度のバランスの読解が重要になってくるのでしょう。
 VRIN=変更反応非一貫性尺度、TRIN=是認反応非一貫性尺度TRINという訳語は「治療的アセスメントの理論と実践―クライアントの靴を履いて ]スティーブン・E・フィンからとりました。
 (VRINは「変更」より「変則」のほうがいいんじゃないかなあ)
 VRINとTRINはちょっとわかりにくいので、さらにnote追加します。
 なによりL=Uncommon Virtuesとなっているのに新鮮さをかんじました。本質的には確かにL=Lie Scale=「嘘つき/虚偽」尺度とよぶよりも、「希少な善良さ」がより適切なわけです。めったにない、そんなことなかなかない、善良さを示す項目がならぶのがLです。だからLが高いと「過度に道徳的価値にとらわれる」「因習的」なんてされるわけですしね。

最後に、MMPI-3に向けてみていくと、S以外はMMPI-3に引き継がれるようです。(FBSをしめしていないのは、MMPI2(by1)計画では使えないためです)

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