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ルフィは最終的に「天下無敵」の存在になる


思想家の内田樹先生の新著「武道論」を読んでいると、次の文章が目に留まった。

「天下無敵」とは「天下に敵なし」ということである。「敵がいない」というのは「いたけれど排除した」ということではない。「そもそも、いない」ということである。世界を見渡したときに、「敵」と呼ばれるようなものが存在しない広々とした、穏やかな境位に至ること、それが武道修行の目的である。私はそう考えている。(『武道論』より抜粋)


この文章を読みながら、私はルフィの顔が頭に浮かんだ。ルフィは敵を作らずに人を巻き込んでいくのが非常にうまい。


特にインペルダウンから頂上戦争編では、ルフィの敵を作らない才能がいかんなく発揮されている。

バギー、ボンクレー、白ひげ、マルコ、ハンコック、クロコダイル、イワンコフなどなど。

ワンピース世界の強キャラやかつての敵キャラたちが、(いろんな形で)一時的にルフィに力を貸すシーンがたくさん描かれている。


もちろんインペルダウンや頂上戦争編に限らず、目的達成のために敵になってもおかしくないキャラを一時的に味方にするシーンは多い。

ドレスローザ編では一時的な共闘だけでなく、共闘した海賊たちを子分にしてしまった。しかも興味深いのがルフィが彼らを子分にしたわけではないところだ。

子分盃を交わすと言って、共闘した海賊たちが勝手に子分になったのだから面白い。



ところでワンピース世界には覇気と呼ばれる一握りのキャラしか使えない特殊能力がある。その覇気の中でも取り分けレアなのが「覇王色の覇気」だ。

覇王色の覇気は、それを使うだけで相手に触れずに気絶させることができる。ワンピース世界では、海賊王になるための必須能力的な扱いだ。

実はこの覇王というのは、武力や策略で王になった人をさす言葉だ。覇王の対義語は王道。つまり人徳により王になった人をさす。


当然ルフィも覇王色の覇気が使えるのだが、私は最終的にルフィは覇王色の覇気や武力を行使せず、むしろ覇王と反対の王道による海賊王をめざすと考えている。

いや、もっといえば、王道=海賊王=天下無敵(敵がいない状態)だ。


何も根拠のない話をしているわけではない。ルフィは海賊王は誰よりも自由だと作中で言っている。誰よりも自由とは誰よりも好き勝手に振る舞うことではない。好き勝手に振る舞えば迷惑を被る人が出る。それは敵を生むことになる。

敵がいると、襲撃に備える必要があるし、常に警戒をしないといけない。それは緊張とストレスを生み、自由とは程遠い。


誰よりも自由であるとは、ワンピース世界における海賊、海軍、世界政府、革命軍などの枠を超えて誰とでも仲良く交流できる(=敵がいない)ということだ。

おそらくルフィの「誰とでも」は人に限らず、海王類をはじめとしたワンピース世界の生物すべてをさすだろう。


作中でそこまで描かれるかは分からない。黒ひげと戦ったり、イム様と戦ったりするかもしれない。

しかし、ルフィは必ず敵のいない天下無敵をめざす。マンガがどこで完結になろうとも、それをめざすことを予感させるシーンは描かれるだろうと私は思っている。

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