#1 【成長と期待の果て】

つまらない子供になってしまった。
あの時夢見ていた子供は
こんなんじゃなかった。
あの時夢見ていた子供はもっと、
無邪気で、
無垢で、
純粋で、
ピュアだった。

それに比べて今の俺はどうだろうか。
こんなにも辛気臭くなってしまった。
どうしよう、もしかしたら僕は
死ぬのかもしれない。
死因はこの世界がノンフィクション
だから。
きっとどんな
敏腕探偵でもこの事件は解決できないだろう。
指紋もDNAも証拠が何もないし、
血しぶきも飛ばない。
パッと見ではそもそも
死んでるかどうかも分からない。
犯人は誰だろうか。

僕が大人だった頃
この世界はもっと楽しかった。

お金を持っているから、
なんでもできた。
なんでも買えるし、
どこにでも住めたし、
なんでも好きなものを食べれた。
結婚もして、子供もできた。
休みの日は毎回
隣の県まで車を走らせ
ドライブをした。
妻が助手席、二人の子供は後部座、
僕が運転。
みんなが好きな音楽をかけて、
この後行く、
海の上に架かる橋を晴天の中
車で突っ走っていく。
みんな笑顔だった。
友達もたくさんできた。
自分の意見に賛同してくれる人が
どんどん自分の周りに集まってきた。
楽しみや嫌なことどんな事も
共感してくれるし、
笑うツボもみんな同じ。
楽しかった。
もう一度大人に戻りたいと思った。

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