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【コラム】「議事要旨は存在するが議事録は不存在」: 経済産業省に大阪・関西万博の情報公開請求をしたら、驚きの結果が返ってきました

つい先日、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の公式キャラクターの愛誦が「ミャクミャク」と発表されました。

デザインが発表されたときから「蛙の卵を連想させる気色の悪いキャラクターだ」と思っていたものの、これは私の主観ですから、特に何も申し上げることはありません。

しかし、この大阪・関西万博に向けて2016年から2017年にかけて経済産業省が主催した「2025年国際博覧会検討会」を巡って、いくつか不可解な事実が判明したので、本稿で明らかにしていきたいと思います。

合同結婚式を惹起させる「万博婚」

まず、経済産業省の「第3回 2025年国際博覧会検討会」では展開例・展開事業例として、あまりにも尖りすぎたコンセプトの企画の数々が検討されていました。

経済産業省の「2025年国際博覧会検討会 報告書(案)」には統一教会の合同結婚式を惹起させる「万博婚」のほか、「辞世の書」「執行の日」といった尖った(というか、あまりにも尖りすぎた)価値観や死生観の企画が並んでいます。

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なお、この「2025年国際博覧会検討会 報告書(案)」は現在、なぜか経済産業省のWebサイトから削除され、閲覧できなくなっています。
※私が別のルートから入手したものを、上記URLで公開しています。

経済産業省からの「議事要旨は存在するが議事録は存在しない」不可解な回答

この「万博婚」ほか尖ったコンセプトの企画の数々が検討された経緯を検証しようと経済産業省のWebサイトを閲覧してみました。2025年国際博覧会検討会のうち、第1回と第2回の議事要旨のみ公開されており、議事録は非公開です。また、第3回は議事録どころか、議事要旨すら掲載されていません。

そこで、2025年国際博覧会検討会の詳細な議事録を経済産業省に情報公開請求してみました。しかし、第1回と第2回の議事録は「経済産業省では作成も取得もしておらず保有していない」との回答が返ってきました。

第3回についても、議事要旨のみ「開示する」とし、やはり詳細な議事録は「作成も取得もしておらず保有していない」と不存在を理由に不開示でした。

しかし、議事要旨とは一般に議事録を基に作成される文書です。また、実務に鑑みても、議事録なくして議事要旨の作成は明らかに不可能もしくは困難を極めます。もし本当に2025年国際博覧会検討会の詳細な議事録が存在しないとしたら、どうやって議事要旨を作成したというのでしょうか。

  1. 議事録が存在しないので、仕方なく職員がでたらめな内容で作成した、もしくは記憶力の良い職員が頑張ってすべての内容を思い出してまとめた

  2. すべての発言内容は台本で事前に決まっていたので、わざわざ議事録を作成せずとも台本をもとに議事要旨を作成できた、もしくは台本がそのまま議事要旨になった

  3. 実際には議事録が存在するものの、何らかの理由で開示できない

考えられるとしたら、この3つでしょう。巨額の税金が使われる国家プロジェクトで1は考えにくいし、それはそれで別の問題が発生します。もし2だとしたら「何のための検討会だ」と指摘されかねません。やはり「実際には議事録が存在するものの、何らかの理由で開示できない(隠蔽している)」と考えるのが自然です。

「大阪産ワクチン」のアンジェス(株)創業者 森下竜一さんを巡る謎

次に、大阪・関西万博の「大阪パビリオン」の総合プロデューサーには森下竜一さんが就任しています。この森下竜一さんは創薬ベンチャーアンジェス(株)の創業者であり、大阪府と大阪市の特別顧問も務めています。

同社は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを「国内初のDNAワクチン」との鳴り物入りで開発を始め、吉村洋文 大阪府知事が「大阪産ワクチン」として太鼓判を押したのみならず、厚生労働省などから75億円もの補助金を受け取ってきました。しかし、昨年11月に同社は「大阪産ワクチン」の最終段階の臨床試験を断念して、今年9月には開発中止を発表しました。
もちろん、医薬品に限らず研究開発は「やってみないと分からない」部分もあるでしょう。最初から成功が保証された投資はあり得ませんから、ワクチンの開発失敗は幾分か擁護できるかもしれません。

しかし、先週の現代ビジネスの記事によると、森下さんは「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーを務めながら、自身が顧問を務める企業を大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」のスーパープレミアムパートナーに押し込んだ、との疑惑が浮上しています。

さらに、森下さんは「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーと大阪府・大阪市の特別顧問を務める以前から、先述の経済産業省の「2025年国際博覧会検討会」の委員に就任しています。

森下さんが大阪府・大阪市の特別顧問に就任したのは2020年3月、また「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任したのは2021年2月です。

しかし、森下さんが委員を務めた2025年国際博覧会検討会が開催されていたのは2016年12月から2017年3月です。また、2019年1月には経済産業省が開催した「大阪・関西万博具体化検討会」でも委員を務めています。

まるで森下さんは当初から特別顧問や総合プロデューサーに就任するのが内定していたかのような印象を受けます。その他にも、森下さんは大阪府・市統合本部 医療戦略会議特別参与や内閣府の規制改革推進会議委員のほか、内閣官房 健康・医療戦略本部の戦略参与を務めており、政府や大阪府・大阪市との近い関係が伺えます。

そこで、森下さんが委員を務めた「2025年国際博覧会検討会」について、議事録のほか委員の選定経緯の分かる資料や、運営に用いたロジ資料も経済産業省に情報公開請求しました。しかし、経済産業省は情報公開法の特例規定を適用して、この開示決定の期限を来年9月まで延長しました。やはり経済産業省が公開を渋る何らかの理由があるように思えます。

また、森下さんとアンジェスについて経済産業省が保有している資料も情報公開請求してみたものの、こちらも同様に特例規定の適用により延長されてしまいました。

やはり「巨額の税金が投入される国家プロジェクトにも関わらず、経済産業省が検討経緯を隠蔽している」と言えます。

大阪・関西万博は会場建設費だけで1,850億円

大阪・関西万博は会場建設費だけで最大1,850億円になると見込まれています。設費は国と地方、経済界で3分の1ずつ負担するため、それぞれ約617億円です。

先月の安倍晋三さんの国葬の費用は約12億円です。つまり、国が大阪・関西万博に支払う金額は会場建設費だけで国葬費用の約50倍です。

その他にも、既に内閣官房や経済産業省の職員の人件費や既に開催したイベントの開催費用といった費用を考えれば、もっと多くの税金が投入されていることは想像に難くありません。

せっかく税金を使って開催するなら、みんなが納得して楽しめるイベントにして欲しいものです。

いまこそ、有権者・納税者として声を挙げるべき

2021年の東京オリンピック・パラリンピックを巡っては疑惑の数々が取り沙汰され、スポンサー契約を巡る汚職事件では経済界に多くの逮捕者を出しています。

2025年の大阪・関西万博でも、もし開催途中やもしくは閉幕後に不祥事が発覚したら、日本や大阪・関西の威信が傷ついてしまいます。また、巨額の税金が投入される以上はクリーンな運営が求められるのは明らかです。

きちんと行政に声を届けよう!

いまこそ、私たち市民が有権者・納税者として声を挙げるべきです。
必ずしも「大阪・関西万博を中止せよ!」との意見でなくても良いでしょう。「大阪・関西万博そのものは楽しみだが、税金を使う以上は透明性のある運営をして欲しい」とか「せっかく開催するなら、みんなが納得できるイベントにするべきだ」というのも、真っ当な意見です。

たとえば、私なら、
・「大阪産ワクチン」を断念したアンジェスの創業者、森下竜一さんのほか、2025年国際博覧会検討会の委員の選定経緯の速やかな開示を求める
・2025年国際博覧会検討会の詳細な議事録やロジ資料の速やかな開示を求める
といった要求が思い浮かび上がります。

以下に大阪・関西万博を所管している行政機関を載せておきます。ぜひ皆様の声を届けてください。「クレーム」「苦情」というと忌避されがちながら、きちんと言うべきことを言うのは私たち有権者・納税者の権利であり、また市民としての責務です。

経済産業省 商務・サービスグループ 博覧会推進室
電話: 03-3501-0289(直通)・03-3501-1511(内線:4031)
FAX: 03-3501-6203(FAX)
E-mail: hakurankai@meti.go.jp
Twitter: @meti_NIPPON

内閣官房 国際博覧会推進本部事務局
電話: 03-3519-3613(代表)
Twitter: @expo2025_cas

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
電話: 06-6625-8651
E-mail: info@expo2025.or.jp
Twitter: @expo2025_japan


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