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第7話 雪の花(小説/ラブストーリー/ヒューマンドラマ)

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「まずい……
おい谷上(やがみ)!! 先生を呼んできてくれ!」

34インチほどのモニターを見ていた村田は、立ち上がって叫んだ。立ち上がった拍子に椅子が倒れ、灰色の無機質な室内の静けさを破った。

「なんです? ネットでいかがわしい動画観てたのがバレたんですか?」

背中を向けて座り、仕事をしていた谷上は、パソコンから目を離さずに言った。

「のんきなこと言ってる場合じゃない!」

「なんなんです? 何を騒いで……」

椅子をくるりと回して振り返った谷上は、モニターを見て固まった。

「え? なんですこれ……壊れたんですか?」

「そうじゃない! もういい、おまえはここにいろ!!」

村田は銀色のドアノブを回してドアを開けると、副医院長室と書かれたプレートの部屋まで走り、ドアを開けた。

「神村(かみむら)先生……!」

10畳にも満たない部屋の奥、無機質な灰色の机に置かれたノートパソコンを見ていた男は、特に驚くふうもなく、ゆっくりと顔を上げた。
ふちなしメガネの奥で光る目は、一瞬見るものに緊張を与えるが、威圧感はなく、口元には穏やかさが浮かんでいる。

「村田さん、ノックぐらいはしてほしいな」

「すみません……急がなきゃって、思って……」

「まずは息を整えないとね」

神村は立ち上がって、棚の上に置かれたダンボールから、500ミリリットルの水を一本取ると、村田に手渡した。

「すみません……」

村田は水を受け取ると、一気に半分ほどを飲み干して、呼吸を整えると、仕上げのようにゆっくり息を吐いた。

「それで、急がなきゃいけなかった理由は?」

神村は、机に体重を預けながら言った。

「水無月優香が危険な状態です……」

「危険?」

神村は乗り出すように前に出た。

「何があった?」

「とにかく、彼女を見てください。そこで説明します」

村田が慌ただしく出てきた部屋に入ると、椅子は倒れたまま、谷上がモニターの後ろの接続や、パソコンの状態を確認していた。

「映像はどうした? 故障か?」

「違います……」

村田が言うと、谷上も手を止めた。

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