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第7話 誘導【聖者の狂気】(小説)

-14- 誘導

『文朝の編集部に男が抗議。けが人はなし、桜田公園事件の関連か』

いくつかの新聞が速報で報道したそれは、文朝が掲載した記事の内容は事実無根だとして、記事に書かれた当事者が編集部に抗議に来て、騒ぎになったというものだった。

(金居さん……?)

どうやら、文朝が事件について続報を出したらしく、泉水はすぐに調べて確認すると、奥歯からギリっという音が聞こえた。

『容疑者である猿倉澪から相談を受けていたバーの店員、K氏は、自分の女にするために猿倉を焚き付けた可能性があると、情報筋は語った。

他にも、店で話す二人の姿は、店員とお客というより、もっと深い仲に見えたという証言もあり、猿倉から八木沢のことで相談を受けていたとされるK氏からすると、八木沢は邪魔な存在だったとも考えられる。

そうなると、いったい誰が本当に問題だったのか、分からなくなってくる。こんな結末しかなかったのだろうか。悔やまれるばかりだ』

(こんなこと書かれたら、抗議もしたくなるわよね。情報筋って何処の誰よ。
……!)

スマホが震えて、泉水は応答ボタンをタップした。

「はい、真木です」

『有栖川です。今、電話いいかい?』

「有栖川さん? はい、大丈夫ですけど、どうされました?」

『文朝の件、気になってると思ってね』

「あ……はい、今記事を読んでました。抗議に行ったのって、金居さんですよね?」

『うん、そうなんだ。私も記事を読んだが、まあ、気持ちは分からないでもない』

「そうですね、私もそう思います。
金居さんは今、そちらに?」

『そのことで、前山くんが話したいと言うんだけど、いいかい?』

「前山さんって、事件を担当してた刑事さん?」

『うん、前に一度、真木くんと話したと聞いてる。事件のことで』

「ええ、確かに話しました」

『じゃあ、このまま電話を代わるよ』

「あ、はい」

(前山さんが話? 金居さんに何かあったのかしら……)

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