見出し画像

サイレントチーム。

恥ずかしながら、実は僕はある「族」に属している。

実は何を隠そう、僕は年甲斐もなくある「族」に席をおいている。

僕の属している族は、爆音を立てたりすることはないし、信号無視をしたり交通法規を破ることもやらなければ、
それこそ、他の族との抗争も行なわない。

どちらかと言えば、
周りに迷惑にならないよう細々と活動するサイレントチーム。

そう「ほたる族」だ。

健康志向や禁煙ブームの真っ只中。
肩身を狭くしながらも、隅に追いやられながらも、細々と活動するチームなのだ。

何度も「族」を脱退するように周りの者にも勧められたが、僕は成人してこの方、未だに「族」を抜けることはなく、幾つかの「族」を転々としながらも入隊し続けている。

そしていま、僕はこの近辺を束ねるチームの初代親衛隊長に就任している。

勝手に。


僕の「族」に所属するメンバーたち。

お向かいのマンションの302号室のヘビースモーカーのおやじがチームリーダー。
僕は彼を「総長」と呼んでいる。

総長は大手の企業に勤めていて仕事のストレスが多いのか、かなりのヘビースモーカー。
職場で吸えない分、マンションのベランダで1時間以上も煙を楽しむ。

たぶん彼の愛飲は「KENT」だ。

そしてその隣のアパートの1階の若者が特攻隊長の「源」だ。
仕事が大工らしいのでそう呼ぶことにした。

ヤンキーっぽい源は、少し声を掛けずらいいかつい顔つきだが、子煩悩な青年で、子供のいる前では決して煙草を口にしない。

源の愛飲はきっと「ショートホープ」だ。

最近入隊したのはお隣のパパさん。
新築した家ではやはり煙草を吸わせてもらえないようだ。
僕は彼を「ルーキー」と名付けた。

新婚さんの彼は、奥さんが現在妊娠中ということもあり、家で煙草を吸わせてもらえないというより、自ら家の中では煙草を吸わないように決めている愛妻家なのだ。

彼の愛飲はおそらく「マイルドセブン改めメビウス」。

そして初代親衛隊長の僕は、暑い熱帯夜でも、凍える真冬でも、夜空を見上げながら煙草を吸う、
変にロマンチストなチェーンスモーカー男なのである。

愛飲の銘柄は「セブンスター」。

男は黙ってブンタ。
これに限る。

この4名が僕たち「ほたる族」の現役メンバー。
少数精鋭だ。


今夜も静けさ全開バリバリでいくぜ!

朝の出勤時間に軽く挨拶を交わす程度の近所付き合いだが、
夜になると申し合わせたかのように僕たちはそれぞれの場所に現れる。

ベランダ、ウッドデッキ、庭先、玄関前。

月明かりに照らされながら、
僕たち「チームほたる」の静かな集会が今夜も繰り広げられる。

しかし、寒さの厳しい冬のこの時期は、
僕らの活動がかなり厳しいことは言うまでもない。

※この記事は喫煙を推奨しているわけでありませんので、ご理解頂きたいと思います。


「一場面小説」という日常の中の一コマを切り取った1分程度で読めるような短い物語を書いています。稚拙な文章や表現でお恥ずかしい限りではありますが、自分なりのジャンルとして綴り続けていきたいと思います。宜しくお願いします。