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#1 "即興芝居" とは何か

"即興芝居" について解説したいと思います。

"即興芝居" をご存知なくても、"芝居" ならすぐに理解できる方もいらっしゃると思います。
「あぁ、台本があって幕が上がって役者が出てきてセリフ喋るアレね。
 シェイクスピアとかでしょ?」
と。
なかには学芸会でやった (もしくは やらされた) 方も
いらっしゃるかもしれませんね。

 
では、"即興芝居" とはいったい何なのか。
わざわざ "即興" というぐらいですから普通の芝居とは何かが当然異なります。
それは、台本が存在しないということ。

 
通常の芝居であれば、まず "脚本家" によって台本が作成されます。
役者は台本に書かれた自分の役のセリフを覚える必要があります。
(ちなみに "作品の土台となる" という意味から「台本」という呼ばれ方をするようになったとぼくは聞いたことがあります)
さらに "演出家" と呼ばれる人が、
「よし、この作品は主人公の想いを強めに描こう!」などと決め、
役者にあぁせぇこうせぇ言いながら本番までの稽古が重ねられていきます。

まとめるとこんな感じです。
・脚本家が台本を作成
・演出家がその台本をどんなタッチで描くかを決める
・役者がそれを演じる。
 
しかし、"即興芝居" にはその台本が無いのです。
 
ではどうやって物語が進められていくのか。
 
演者(役者)たちがその場でセリフを生んで
相手役とコミュニケーションを取っていくことで
物語を紡いでいきます。
 
つまり、脚本家と演出家が存在しないのです。
役者は当然、不在となった脚本家や演出家の役割まで
こなさなければなりません。

この役はどんな人物(キャラクター)なのか。
相手役との関係は? 親子? それとも恋人?
この物語の最大の葛藤は?
等、物語のすべてのピースを
演者同士が息を合わせて埋めていくのです。
  
当然、今目の前で繰り広げられている芝居が
どんな展開をして、どんな結末を迎えるのか、
客席に座っているお客さんはもちろん
演者たちも知らないのです。
こりゃもうハラハラもんです。

アメリカのコメディアン、ジョン・べルーシも
「インプロ(即興芝居のこと)はドラッグよりもいいぜぇ」と
言っていたという逸話があります。
(そんな彼は皮肉にもドラッグが原因で亡くなりました)

 
土台の無い中で作品を紡いでいく事は
非常にチャレンジングで多くの能力を求められます。
こける事もあれば、奇跡のような物語が生まれる事もあります。
そしてその奇跡が生まれる瞬間は、
その場にいるすべての人が同時に目撃する事になるのです。

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