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【労働災害】転倒事故予防について

こんにちは。
渋谷、大宮、岐阜にてパーソナルジム「Sharez」を運営している岡崎秀哉(@hide_sharez)です。

今回は、パーソナルトレーナー、フィットネス事業者として、健康経営や働く人々の健康に対して、どう関わっていくのか?ということについて考察していきたいと思います。

昨今は健康経営、サステナブル経営などのワードもよく聞くようになり、従業員の健康管理に対して企業が積極的に取り組むことで、より良い環境で仕事ができるような環境づくり、長く働いてもらいやすい環境づくりを進めています。
そこに、健康という文脈で専門家ともいえる、パーソナルトレーナー、フィットネス事業者がどう関わっていけるのか?
今回は、労働災害の文脈から考えをまとめていきたいと思います。

1.労働災害の状況

厚生労働省が発表している労働災害の状況報告によると、令和4年度(2022年)に発生した労働災害による休業4日以上の死傷者数は132,355人となっています。そのうち、最も多いのは転倒災害で、全体の26.7%を占めています。さらに、墜落・転落災害と合わせると42.5%に上り、約半数が足元に起因する事故であることがわかります。

https://www.simon.co.jp/fall_disaster/fall_disaster_roudou/

令和4年度(2022年)の転倒災害の件数は35,295人となっていますが、これは年々増加傾向にあります。

https://www.simon.co.jp/fall_disaster/fall_disaster_roudou/

これらの情報から、このnoteでは、主に転倒災害、転倒事故予防について考察していきます。
では、なぜ転倒災害の件数が増加傾向にあるのでしょうか?

2.なぜ転倒災害が増えているのか?

転倒災害が増えている要因は、労働者の高齢化が影響しています。主に、現場作業や転倒リスクのある仕事において高齢化が進んでいるということです。

2016年の年齢別労働災害の死傷者数を見てみると、50歳以上の転倒災害による死傷者数は50歳未満の2倍以上となっています。

https://www.simon.co.jp/fall_disaster/fall_disaster_roudou/

では、なぜ50歳以上で増えているのか?
一つの大きな要因は「筋力の低下」です。
年を重ねることで、運動量の低下などから、全身の筋力の低下が起こることはイメージしやすいと思います。
さらに、部位別に見たときに、体幹部はあまり減少せず、上半身は微減、下半身は明らかに減少するというデータもあります。https://www.jstage.jst.go.jp/article/rengosokendio/30/4/30_4/_pdf/-char/en

また、筋力だけでなく、「平衡感覚の機能低下」も起こります。
平衡機能検査の一つである「閉眼片足立ち」 での平均持続時間は、20歳代で90秒なのに70 歳代では20秒弱になっていた、というデータもあります(日本人の体力標準値第3版.不昧堂出版,1982)。

さらに、「視覚機能の低下」もあります。動体視力が低下することで反応が遅れ、事故に繋がるリスクが高まります。緑内障などで視野が狭くなる可能性もあります。
その他、「聴覚機能の低下」も。製造業などで、20デシベルの聴力損失により14%の災害発生増加が認められたことも報告されています(Farrow Aら.Occup Med 2012;62:4- 11)。
「脳機能の低下」も影響します。記憶力の低下、判断力の低下などは作業効率の低下、事故に繋がるリスクを高める可能性があります。

3.労働災害を減らしていくには?

これまでの情報から労働災害を防ぐ、減らしていくにはどうしたら良いのか、パーソナルトレーナー、フィットネス事業者の視点から考えてみます。

今回は主に転倒災害を予防することにフォーカスして考えていくと、上記で示したように

・下半身の筋力低下
・平衡感覚の機能低下
・視覚の機能低下
・聴覚の機能低下
・脳機能の機能低下

といったものがキーワードとなっています。
ですので、これらの低下を抑止する取り組みが必要になってきます。
一つずつ対策について考えをまとめていきます。

3-1.下半身の筋力低下を防ぐには?

下半身の筋力低下を防ぐには、下半身に負荷がかかる筋トレが有効です。労働状況を考えると、可動性よりも筋力の方が優先順位は高そうです。
定番種目としては、スクワットなどですが、意外と細かいフォームが間違っていたりする場合も多いので、我々専門家が指導する価値はありそうです。
また、スクワットは両足で行う安定性の高い種目なので、足を前後に開いたスプリットスタンスで行うスプリットスクワットや、ジャンプを取り入れた動きにプログレッションしていくことで、効率良く筋力アップが図れますし、平衡感覚にもアプローチすることができます。

3-2.平衡感覚の機能低下を防ぐには?

平衡感覚の機能低下を防ぐためには、平衡感覚がどのように機能しているかを理解する必要があります。
シンプルにいうと、視覚からの情報、前庭系からの情報、固有受容器からの情報によってバランス調整は行われています。
前庭系とは、いわゆる三半規管の部分で、頭の位置や角度などを感知し、その情報をもとにバランス維持に役立てています。
固有受容器とは、立位でいえば足裏の感覚や、姿勢を変えた時の関節や筋肉の状態を感知するものです。
これらを刺激することで、機能を向上させたり、低下を防ぐことができます。
具体的には、閉眼の状態で、視覚情報を遮断し、前庭系、固有受容器のみでのエクササイズを行ったり、片足でバランスを取りながらのエクササイズをしたり、普段行わない姿勢でエクササイズをしたり、ボールなどを使って視覚情報をもとにエクササイズをしたり、といったものが挙げられます。

3-3.視覚、聴覚、脳機能の機能低下を防ぐには?

これらの機能低下を防ぐには、これらを使った、これらを適正に刺激するエクササイズが有効です。
上記の平衡感覚と、視覚、脳機能は繋がりもあるので被る部分もありますし、音に対して反応して動くエクササイズや、音によって指定されたエクササイズを行う形にすると判断能力も含めたエクササイズになり、有効です。
また、上半身と下半身で異なるリズムで動かしたり、いくつかの動きを組み合わせたり、といった刺激を加えることで、運動機能だけでなく脳機能も刺激することができます。
こういった運動機能と視覚、聴覚、脳機能などを連携させるエクササイズは「コーディネーショントレーニング」と呼ばれ、主にジュニア期に用いられることが多いですが、大人や高齢者にも非常に有効だと思います。

4.どのように企業に落とし込むのか?

理屈としては、上記のように考えられるのですが、実際に取り組むとなると、どのように企業の中に落とし込むのか?という問題が発生します。
これはあくまで机上論ですが、考えてみます。

4-1.測定評価を行う

健康診断で、視覚、聴覚は診断しますが、筋力や平衡感覚、脳機能は測定できません。また、健康診断で診断する、視覚、聴覚は運動機能と連携していません。
現状の筋力、平衡感覚、脳機能、視覚、聴覚などを測定することで、労働災害のリスクを可視化できますし、実行した時の効果測定も可能になります。

4-2.定期的に行う

弊社でも企業にて、運動指導などを行わせていただく機会がありますが、正直単発のものも多いです。
今回改善したい運動機能を始めとした身体機能は、一朝一夕ではどうにもなりません。最低でも月1回、できれば週1回は改善のためのアクションを実施した方が良いと思います。その形は企業によって異なりますが、専門家からプログラムを提供してもらい自分たちで実施する、専門家がオンライン、もしくはオフラインで指導する、などの手段があると思います。

4-3.楽しみながら取り組む

労働災害といっても、ピンとこない人が多いのではないでしょうか?
起きてしまってから危機感を感じるケースも多いと思います。
なので、リスクヘッジ的にモチベーションを高めることは難しい側面もあると思います。ですので、最初はやや強引だとしても、気分転換的に、であったり、運動を楽しむ感覚で良いのではないかと思います。
さらに、取り組みをしっかりアピールしたり、その成果をしっかり伝えていくことでより継続に繋がると思います。
これは理想論すぎるかもしれませんが、予防というニュアンスよりも、運動を楽しんでもらうようなイメージで取り組んでいただき、結果的に予防になっていたり、労働災害の減少に繋がっていれば良いと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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また、健康経営、従業員の健康管理といった部分にご興味ある企業様もぜひお気軽にご相談ください。

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