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「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の感想。

複雑な気持ちだ。

本当にみんなが言うほど完璧な追悼映画ですか?

展開として、母親を殺してシュリを復讐者にしたことに対して、どうしても微妙な顔になってしまう。

「大好きだった偉大な兄を亡くしてしまった。しかも誰のせいでもなく。」
という怒りの向けどころのない喪失から立ち直る話のはずだったのが、安い復讐話に堕ちてしまったなという感じ。憎しみと赦しってテーマ何度目だよ。こういうのしかできないわけ?

昔から数々の映画で憎しみと赦しってテーマは描かれているが、それに対して陳腐だとかマンネリだとかいうつもりは毛頭ない。それぞれ独立した映画なんだから。しかし、MCUは作品同士を繋げることによって利益を得てきたのだから、作品のテーマが似通うことをマンネリだと言われるコストは支払うべきだと思う

とにかく、今作ではこれまでのMCUにはなかった(それどころかこれまでのヒーローものにはなかった)アプローチが見れるのかなと期待した分、結局いつもの定食が出てきてガッカリした。 

これまでのMCUにはなかったというのは嘘で、MoMはワンダにとっての怒りの向けどころのない悲しみの話といえる。

というよりはもっと単純に、ティチャラの追悼映画というのなら、彼の喪失にもっと真正面から向き合えよと思ったのかもしれない。さまざまな苦難のうちの一個としてではなくてさ。

このグダグダな展開を、「故人を悼む間も無く続いていく人生の無常」と捉えることも可能で、その場合「この映画は急な死を受け入れられないファン達とパラレルなんだ」ということも可能だ

あとタロカンの描写はかなり微妙だった。
海底王国は暗くてよくわかんねーし、羽が生えて飛ぶから強え〜!って意味不明だし、結構不満は多い。足から羽が生えるだの声で人を操るだの、それヴィブラニウム関係ねーじゃん。

ヴィブラニウムという同じ超素材を元にしているのにまったく異なる発展を遂げた技術体系が見たかった。ミュータント方向ではなく。

とまあ色々言ったものの、最初と最後はかなり心に来た。
これだけで良いじゃんもう。最初のMARVELロゴもやばかったけど、最後にお兄ちゃんとの思い出が流れてきて、シュリが静かに喪に服すところではおもわず泣いてしまった。

また子供だぁ……。

しかし、その後のリトルティチャラ登場はちょっと……。
別にこの映画だけだったら「へーそうなんだよかったね〜」ってなってたと思うけど、MCUシリーズの流れで見たときに、シーハルクのラストの唐突なハルクjrの登場とこれが連続しちゃってるせいで「もう子供とか良いって……」と辟易してしまった。
子供がいなかったとしてもティチャラの意志はシュリに受け継がれている訳で、であればこのサプライズには「私は天涯孤独じゃないんだ」って風にしてシュリを(あるいはティチャラの血が残ることに価値を置くファン層を)慰めてあげるだけの意味しかない。
正直蛇足だし残念。

とはいえ僕はナターシャロマノフ(と彼女を喪ったファン達)の孤独を慰めてあげたかっただけの映画「ブラックウィドウ」でボロ泣きしているので、この不満については誰が言ってんだよという感がある。

まとめ

感動したので良い映画だったとは思う。
それはそれとして、フェーズ4に入ってからだいぶ心が揺らいでいたけど、今作を見たことで、もうMCUは劇場で観なくても良いやと決心がついた。

MCUの前作「ソー/ラブアンドサンダー」の感想。

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