最近読んで面白かった本。『世界は「関係」でできている』他。
世界は「関係」でできている、アポロンと5つの神託、物語とふしぎ
・世界は「関係」でできている
ループ量子重力理論の提唱者、カルロ・ロヴェッリによる量子論の本。
最近読んだ本の中でダントツで一番面白かった!
面白すぎる本を読んでいると、読むスピードに感情の処理が追いつかなくなってしまい、思わず本を閉じて、気持ちが落ち着くまで待つことがある。
小説以外の本を読んでいるときにそんな風になるのは稀なんだけど、この本はそんな稀な現象を引き起こした。
話は以下のような流れで進んでいく。
1.量子論誕生までの歴史
2.奇妙な量子的現象を解釈する奇妙な理論達、そしてそれらの限界(多世界解釈やQBイズム等)
3.カルロが支持する、量子論の関係論的解釈
4.関係論的解釈による、哲学的問題への回答
毎度のことながら、話し方がめちゃくちゃ上手い。科学的な内容の面白さだけじゃなく、ドラマチックな文章自体にワクワクさせられる。
だって、若き日のハイゼンベルクが荒涼としたヘルゴラント島の海岸に佇むシーンから始まる量子論の本が、面白くないわけがない。
一方、内容に関して、関係論的解釈で1番感動したのは、
観測はなんら特殊な操作ではなく、二つの物理的対象物の間のすべての相互作用を観測と見なすことができる。
という発想。
自分の中には全く無い発想だったので、度肝を抜かれた。
そこから導かれるのは、対象物は他の対象物との関係においてのみ属性を持つという世界観。つまり、物自体なんてなくて、全ては関係でできている。
関係論的解釈によって、哲学に挑戦する章も面白かった。
この本と一緒に、『なぜ世界は存在しないのか』という、哲学者マルクスガブリエルの、これまた存在論についての本を読んでいたので、それと対比して楽しんだ。
マルクスガブリエルは『なぜ世界は存在しないのか』で、科学の権力を縮小しようとしていた。
一方カルロロヴェッリは本書で「思うに、わたしたちは科学に哲学を順応させるべきなのであって、その逆ではない。」
と、マルクスとガッツリ敵対するような意見を述べている。
それだけでなく
・世界はないけど、物はある。派のマルクス。
・世界はあるけど、物はない。派のカルロ。
という点も、素朴に見れば対立している。
一見対立関係にありそうなマルクスとカルロだけど、世界(=系)を外側から観測する視点の否定という一点においては共通した立場をとっている。
そういった相違点と共通点が面白かった。
↓『なぜ世界は存在しないのか』の感想
↓カルロロヴェッリの前作、『時間は存在しない』の感想
・アポロンと5つの神託 太陽の神
ギリシャ神話の登場人物達が、アメリカを所狭しと暴れ回る児童向けファンタジー、パーシージャクソンシリーズのシーズン3最終巻。これでシリーズは完結らしい。
正直に言ってシーズン2以降の話には、シーズン1ほどの面白さは感じられなかった。これは僕が大人になって感性が変わってしまったこととは無関係だと思う。
だって、初期の頃はミノタウロス等メジャーどころの怪物と戦ってたのに、最後の方では二足歩行のアザラシとかと戦ってるんだもの。いやいや、アザラシて。流石に出涸らし感が否めない。
それでも小学生の頃から親しんできたシリーズの完結ということで、しんみりしながら楽しく読んだ。
実は、パーシージャクソンシリーズは以前に映画化されたことがあるんだけど、それはそれは酷い出来で、当時小学生だった僕の心はひどく傷付けられた。
しかし、この度新たにドラマシリーズ化が決定したので、とても楽しみにしている。
期待してるぞディズニープラス。あの日の僕を救ってくれ。
・物語とふしぎ
児童文学のもつ不思議について書かれた本。正直言ってこの本自体はそんなに面白くなかったんだけど、以前読んだ同系統の本、『ファンタジーの秘密』(脇明子)と比較して楽しんだ。
「面白かったあの本と、そんなに面白くないこの本、何が違うんだろう」みたいな。
この本は児童文学を読むことが子供にどんな影響を与えるかという、児童文学の効能に注目して書かれていて、それがあんまり気に入らなかった。
精神医学的なアプローチではなく、あくまで児童文学に内在する不思議を追ってほしい。その方が好み。
というのが二つの本を比較して得た僕の結論。
↓『ファンタジーの秘密』の感想
余談
カルロロヴェッリの本にハズレなし。
途中で『銀河ヒッチハイクガイド』のダグラスアダムスが引用されていたのも嬉しかった。
そういえばスパイダーバースでも"42"という数字が引用されていたな。
ダグラスアダムスを引用したエンタメにハズレなし。
↓本の感想まとめ