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17歳の瞳に映る世界/エリザ・ヒットマン監督

エリザ・ヒットマン監督の「17歳の瞳に映る世界」を見る。こういう邦題のつけ方は間違っているとまでは言えないが、原題では「Never Rarely Sometimes Always」であり、この4つの言葉がこの映画のクライマックスではある。

「Never/Rarely/Sometimes/Always」
「一度もない/ほとんどない/時々ある/いつもある」

つまり四択の選択肢である。
https://17hitomi-movie.jp

17歳のオータム(シドニー・フラニガン)の住むペンシルベニア州では、親の同意なく中絶手術ができないため、従姉妹のスカイラー(タリア・ライダー)とともに長距離バスでニューヨークへ行く。要するにそういう話だ。

オータムは無口というか表情が少ない子だ。不安に懸命に耐えているのだが、感情が表に出ない。彼女の身に実際に何が起こっているのか、本人共々それが見えない状況のまま物語は淡々と進んでいく。スカイラーもオータムを執拗には問いただしたりぜずそれに寄り添う。スカイラーにしてもバイト先では理不尽なセクハラを受けてもいる。

ニューヨークのメディカル・センターでは、少なくとも地元の危機妊娠センターの(つまりこれはキリスト教保守派の人たちが運営する施設)ような頭ごなしの否定は無いものの、彼女の人権と決断を尊重するが故に慎重な手続きが続き、本手術は翌日に持ち越される。

直前のカウンセリングでは、過去の性的経験とパートナーとの関係性、性暴力の有無を問うのだが、回答の負担を軽減する、つまり本人をさらに傷つけてしまうことを防ぐ意味で、選択肢「Never/Rarely/Sometimes/Always」を選ぶ形で答えるよう求められる。彼女の感情が溢れ出る唯一の瞬間だ。

ベルリン映画祭銀熊賞。静かで強い映画。映画では実際にセンターで働く女性がカウンセラーとして出演しているそうだ。

監督:イライザ・ヒットマン  
出演:シドニー・フラニガン | タリア・ライダー | テオドール・ペルラン

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