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逃げた女/ホン・サンス監督

2021-09-12鑑賞

ホン・サンス監督の映画が好きで、今までに「正しい日|間違えた日」、「それから」、「夜の浜辺にひとり」、イザベル・ユペール主演の「3人のアンヌ」を見ている。今回のキム・ミニ主演の「逃げた女」は、第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)。

https://nigetaonna-movie.com/

ホン・サンスらしい長回しで「立派な」雄鶏が一羽と数羽の雌鶏が映し出される。これがプロローグだろうか。今度は庭いじりをする中年の女性(ソ・ヨンファ)の後ろ姿。家庭菜園のレンガの囲いからはみ出した雑草を、シャベルで掻き取る。若いスーツ姿の女性が彼女に声をかける。就職試験らしいのだが、庭の主を慕っている様子だ。たわいのない会話。チルトアップし、青い網が張られた小屋のショット。先程の鶏小屋だろう。ここまでが長い長い1カットだ。

ガミ(キム・ミニ)が訪ねてくる。ショートのパーマが印象的だが髪は自分で切ったという。先輩ヨンスンとの久々の再会。ガミは、夫が出張中で今回が初めての外泊だと告げる。「5年間一度も離れたことがないんです」。ヨンスンのルームメイトのヨンジ(イ・ユンミ)が、ガミの手土産の高級な肉を焼く。リラックスした女性たちのたわいない会話が繰り広げられる。「雄鶏が怖いんです。」とヨンジが言う。隣の家の飼うニワトリのことなのだが、雌鳥の首を後ろから突いて羽をむしりとるらしい。暫し山並みが映し出される。

このメンバーのまま話が進んでいくと思い込んでしまうのだが、ブティックの紙袋を肩から下げて外出から戻った先が、また別の先輩スヨン(ソン・ソンミ)の高級マンションだったことに少し驚く。

「5年間一度も離れたことがないです」。ガミはスヨンに言う。スヨンの方はどうやら自由を楽しんでいるようだ。女どうしのたわいない話は、カットでの切り返しではなく、固定カメラの長回しからパンで画面を振り分ける。窓の外はやはり美しい山並みが見える。

今度はカフェにいるガミ。そこで偶然の再会に驚くウジン(キム・セビョク)。この二人はかなり訳ありのようである。「あなたは結婚したの?」とのウジンの問いに、やはり、「5年間一度も離れたことがないの」と。ここから先がこの話のクライマックスのはずなのだが、やはり淡々と…。だだ、たわいのない話はみな全てに意味があり、そして全て意味がないことだとも言える。じわじわと「逃げた女」の意味を考える。キム・ミニがますます素晴らしい。

監督:ホン・サンス  
出演:キム・ミニ | ソ・ヨンファ | ソン・ソンミ

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