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バッファロー'66/ヴィンセント・ギャロ監督

2021-04-20鑑賞

『バッファロー'66』を憶えているだろうか。ヴィンセント・ギャロが監督・脚本・主演・音楽まで手掛けた映画だ。その昔ビデオで見たはずなのだが、ヴィンセント・ギャロの顔は浮かべどその内容が全く思い出せない。久々(20年ぶり)のリバイバルということで映画館に見に行って来た。


5年の刑期を終え刑務所を出たビリー(ヴィンセント・ギャロ)は、用を足すために入り込んだダンススタジオでレイラ(クリスティーナ・リッチ)を拉致・誘拐。ニューヨーク州バッファローの実家の両親の前で「自分の婚約者の振りをする」ことを強要する。すでに「話」は破綻してはいるのだが、レイラはそれを了解する。

ビリーは1966年生まれ(自分と同い年ではないか!)で、それがニューヨーク州バッファローに本拠地を置くバッファロー・ビルズが最後に優勝した年らしい。母親の振る舞いは典型的なネグレクトのそれで、贔屓のアメフトチームのことにしか興味が無い。父親は息子に対して抑圧的だ。崩壊した家族関係をレイラが懸命の演技で取り繕う。なんとなく小津を思わせるカット割りで、この段階で映画は本格的にコメディに突入しているのだが、ビリーの暴力性と潔癖症とそれと相反する純粋さ生真面目さとの意味が、少しづつ可視化されるようになっている。

正直に言えば、21世紀の現在からすれば、奇妙な展開ではあれ古臭いラブストーリーだと言えよう。レイラという女性(ティーンなのか少女顔なだけなのか、自分は28歳だと言う場面がある)についての背景は描かれず、何故かタップダンスを披露したボーリング場での出来事以外には、彼女について意味付けが行われない。ひたすらビリーの「気持ち」を支える非対称な役柄を負うことになるのは、脚本としては少し都合が良すぎるか。

ヴィンセント・ギャロの演技はなかなか鬼気迫るものはあるのだが、それも例えばグザヴィエ・ドランのような才能がこういう映画のスタイルを更新していったのだとと思う。20年前よりは少しは色々なことがわかるようにはなったのか。英語版のトレーラーは見ると面白い。

監督:ヴィンセント・ギャロ  
出演:ヴィンセント・ギャロ | クリスティナ・リッチ | アンジェリカ・ヒューストン

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