#11 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第10話 「モートレートタウンでの出会い」

　ーーーとある焼やけた森もりの中なかーーー

メリッサ『こちらマードック部隊ぶたい司令室しれいしつ。ポーランド少尉しょうい応答おうとう願ねがいます』

クリフ「こちらクリフ・ポーランド」

メリッサ『現在げんざいの状況じょうきょうを報告ほうこくせよ』

クリフ「現在げんざいの状況じょうきょうはガートシティとモートレートタウンの間あいだの森林しんりんの中なかを探索たんさく中ちゅう。森林火災しんりんかさいが起おきた現場げんばにて鎮火ちんか作業さぎょう後ご、ただちに調査ちょうさに入はいります」

メリッサ『了解りょうかい。そのまま調査ちょうさを続つづけて下ください』

クリフ「了解りょうかい」

　通信機つうしんきを切きった後あと、火ひが消防班しょうぼうはんの手てで消きえ黒炭くろずみとなった木々きぎだけが残のこる森もりを見みながらクリフ・ポーランドは考かんがえていた。あの墓地ぼちで出会であった2人ふたりの親子おやこのことを。

クリフ（あの2人ふたりに俺おれが教おしえたのはモートレートタウンへのルート…だがマップ通どおりのルートを避さけて直線ちょくせん距離きょりで進すすめば、ここに来くる確率かくりつがかなり高たかいはずだ…）

ブライアン「どうした？ポーランド少尉しょうい？何なにか考かんがえ事ごとか？」

　クリフの横よこに立たっているのはスキンヘッドの黒人こくじんの大おおきな体からだの男おとこだった。

クリフ「ブライアン・ライル中佐ちゅうさ…」

ブライアン「普段ふだんは考かんがえるより身体からだが動うごき出だすし思おもったことをすぐ口くちにするタイプの君きみがそんな顔かおをするのは随分ずいぶん珍めずしいと思おもってね」

クリフ「……いえ、ガートシティでの一斉摘発いっせいてきはつを逃のがれたとして、次つぎにミーモスト一味いちみがモートレートタウンに行いくとすればここを通とおる可能性かのうせいは非常ひじょうに高たかい…」

ブライアン「…ほう…？」

クリフ「…しかし…仮かりにここを通とおったとしても、わざわざ逃走とうそうに成功せいこうしておきながらこんな場所ばしょで火ひを起おこす様ような真似マネしたら、我々われわれマードック部隊ぶたいに『ミーモスト一味いちみはここに逃にげているぞ』ってアピールすることになる」

ブライアン「…なるほど…？」

クリフ「考かんがえられる可能性かのうせいは3つある…」

ブライアン「１つ目めは？」

クリフ「ミーモスト一味いちみ内部ないぶでアジトの情報じょうほうをマードック部隊ぶたいに漏もらした密告者みっこくしゃがいるんじゃないかと疑うたがいを持もち合あい仲間割なかまわれの戦たたかいが起おきたってこと」

ブライアン「２つ目め…」

クリフ「一味いちみの下したっ端ぱがここで休憩きゅうけいしようと火ひをつけてキャンプをしようとしたが、手違てちがいで山やま火事かじ事故じこが起おきてしまったか」

ブライアン「フン…それは随分ずいぶん間抜まぬけな理由りゆうだな…」

クリフ「3つ目めは…ここでモートレートタウンからガートシティに来きた別べつの組織そしき、賊ぞく、犯罪集団はんざいしゅうだんと遭遇そうぐうし運うん悪わるく戦闘せんとうになってしまったか…」

ブライアン「まぁいずれにせよ詳くわしく現場げんばを調査ちょうさしなければ何なにも分わからねぇからな」

クリフ「……」

？？？「ライル中佐ちゅうさ！！」

クリフ「！サークス…！？」

ブライアン「どうした！？ハリベル少尉しょうい！？」

　黒くろい焼跡やけあとの中なかから黒髪くろかみの白人はくじんの隊員たいいんが2人ふたりに駆かけ寄よってきた。

サークス「火災かさい現場げんばから3人にんの男おとこの遺体いたいとも思おもわれるものが発見はっけんされました！！」

ブライアン「！！遺体いたいがあったのか！？」

クリフ「3人にん！？」

サークス「ええ！！とにかく着ついて来きて下ください！！」

　3人にんはサークスの言いっていた遺体いたいのある場所ばしょに駆かけ寄よると、そこには黒くろずんだ塊かたまりの様ような物ものが地面じめんに転ころがっていた。3人にんは手前てまえ近ちかくあった焼死体しょうしたいに近付ちかづき死体したいの顔かおを確認かくにんしようとした。

ブライアン「死体したいを解剖かいぼうしなければ詳くわしいことは分わからねぇが…こいつの身元みもとが確認かくにんできるモンはっと…ん？…」

　黒くろくなった死体したいの首元くびもとを見みると、そこには持もち主ぬしの名前なまえと生年月日せいねんがっぴを記しるしたペンダントがあった。そこに記しるされた名前なまえを見みて、ブライアン・ライルは息いきを飲のんだ。

サークス「この男おとこ！もしかして…！！」

ブライアン「…ワイルズ……ダーヴィッチ……！！」

　2人ふたりは恐おそる恐おそる振ふり返かえりクリフの表情ひょうじょうを見みた。

サークス「……クリフ…？」

クリフ「…………」

　クリフは目めを丸まるく驚おどろいた顔かおをして、まさか…と考かんがえを巡めぐらせていた。

クリフ（こいつの死体したいがここにあるってことは……もしかしてあの親子おやこ…ワイルズを倒たおしたってのか！？）

ーーーガートシティからずっと森もりの中なかを歩あるき続つづけた藍川あいかわ親子おやこはようやく隣街となりまちが見みえる所ところまで辿たどり着ついた。

光男みつお「……おお！竜賀りゅうが！！隣街となりまちが見みえてきたぞ！！良よかったな！！」

竜賀りゅうが「はぁ…はぁ…ようやくか…！！…」

光男みつお「着ついたら早速さっそくメシ食たべような！！」

竜賀りゅうが「…うん……」

光男みつお「どうした？昨日きのうは色々いろいろあったけど…」

竜賀りゅうが「過去形かこけいじゃないよ…現在進行形げんざいしんこうけいだよ……昨日きのうの夕方ゆうがたからずっと色々いろいろあり過すぎてるんだよ…」

光男みつお「ああ…まぁ…そうだな…」

竜賀りゅうが「とにかく何なにか美味うまいモン食たべないと、疲つかれが溜たまり過すぎてるまんまだよ…」

光男みつお「それもそうだが…あとモーテルも押おさえないとヤバいからな」

竜賀りゅうが「モーテルって何なに？」

光男みつお「モーテルってのはアメリカの一般的いっぱんてきな宿泊施設しゅくはくしせつのことだよ。日本にほんで言いう所ところの宿やどだな」

竜賀りゅうが「そこに拠点きょてんをおいておくってことね…」

光男みつお「そういうこと！」

　竜賀りゅうがと光男みつおは森もりを抜ぬけ、茂しげみを掻かき分わけると、車くるまの往来おうらいの激はげしい車道しゃどうに出でて来きた。

光男みつお「……やっぱりそうだけど…ガートシティとは雰囲気ふんいきが違ちがうな…」

竜賀りゅうが「あっちはあくまで田舎いなかのスラム街がいって感かんじだったもん……ここは都会とかいだよ…」

光男みつお「そうだな…とにかくまずはモーテルだ…さっさと隠かくれれる本拠地ほんきょち探さがしだ…竜賀りゅうがお前まえはここで隠かくれてろ」

竜賀りゅうが「え？…一緒いっしょに着ついていっちゃダメなの？どっかでメシにしないお腹なか減へり過すぎて死しにそうなんだけど……」

光男みつお「……竜賀りゅうが…まずはお前まえの格好かっこうをどうにかしなけりゃ、まともに街中まちなかも歩あるけないんだぞ？」

竜賀りゅうが「え？……あちゃー…」

　竜賀りゅうがは自分じぶんの青あおい上着うわぎを見みると、すっかり黒くろく変色へんしょくしてしまった血ちを見みて、ため息いきをついた。

光男みつお「そんな血塗ちまみれのパーカーを着きている奴ヤツがそこら辺へん彷徨うろいてたらいくらアメリカでも怪あやし過すぎるし、警察けいさつに捕つかまって事情聴取じじょうちょうしゅされたら、お前まえがワイルズを殺ころしたことに辿たどり着つかれて一発いっぱつで刑務所けいむしょ送おくりだ」

竜賀りゅうが「……そっか…」

光男みつお「大丈夫だいじょうぶ…何なんとかするさ…お前まえはここで待まっててくれるか？」

竜賀りゅうが「……うん…」

　光男みつおは竜賀りゅうがを茂しげみに隠かくし、マルチセルラーのマップに現在地点げんざいちてんを保存ほぞんして荷物にもつをそのそばに置おいて、街まちの中なかを走はしっていった。
　光男みつおは周まわりに人ひとが多おおくなってくる場所ばしょまでくると、流石さすがに物珍ものめずらしそうなものを見みる視線しせんを感かんじていた。

光男みつお「何なんかジロジロ見みられてるな…日本人にほんじんってそんなに珍めずらしいのか…？」

そんな中なかマップを頼たよりにモーテル街がいまで辿たどり着つくと、そこの中程なかほどのモーテルから老夫婦ろうふうふが出でて来きた。光男みつおは藁わらにも縋すがる思おもいでその夫婦ふうふに駆かけ寄よった。

光男みつお「すみませーーーん！！！」

老夫婦ろうふうふ「！？」

　光男みつおが近付ちかづくと、白髪はくはつのリーゼントの旦那だんなが心配しんぱいそうに光男みつおを見みていた。

光男みつお「はぁ…はぁ…すみません！…突然とつぜん声こえをかけたりして……俺おれの息子むすこを助たすけて欲ほしいんです！！」

旦那だんな「何なにかあったのかい！？君きみは！？」

光男みつお「事情じじょうは後あとで詳くわしく説明せつめいします！！とにかく今いますぐ助たすけて下ください！！」

妻つま「分わかりました！！まずは警察けいさつに！！」

光男みつお「！！待まって下ください！！警察けいさつには通報つうほうしないで下ください！！」

旦那だんな「！…何なにを言いっているんだ！自分じぶんの子供こどもが危険きけんな目めにあっているのに警察けいさつに通報つうほうしないなんて馬鹿バカなことあるか！！」

光男みつお「もし今いま警察けいさつに通報つうほうしたら息子むすこは助たすからないんです！！とにかく今いまは一刻いっこくも早はやく息子むすこを助たすけたいんです！！もうあなた方がたしか頼たよれないんです！！お願ねがいします！！」

　必死ひっしな訴うったえる男おとこが頭あたまを下さげる様子ようすを見みて、旦那だんなはじっと光男みつおを見みつめていた。

旦那だんな「……分わかった…とりあえずアンタの息子むすこがいる場所ばしょとやらに案内あんないしてくれ」

光男みつお「！…ありがとうございます！！」

旦那だんな「とりあえず車くるまに乗のれ！急いそげ！！」

旦那だんな「ところで…アンタ名前なまえは？」

光男みつお「はい！！」

光男みつお「光男みつお…藍川あいかわ光男みつおです！」

旦那だんな「…俺おれはトニー…トニー・ベイカーだ。着ついて来こい」

　光男みつおはトニーに着ついていき車庫しゃこにあるジープに乗のって、竜賀りゅうがが隠かくれている森もりの茂しげみまでトニーに運転うんてんしてもらった。

　車くるまの中なかでトニーは光男みつおに質問しつもんしてきた。

トニー「……光男みつおだっけか？…アンタさっき警察けいさつには頼たよれないって言いってたよな？」

光男みつお「ええ」

トニー「それって警察けいさつに頼たよったとしても、アンタやアンタの息子むすこが圧倒的あっとうてきに不利ふりになる事情じじょうを抱かかえているってことだ」

光男みつお「ええ、そういう事ことです」

トニー「…アンタ見みたところ東ひがしアジア人じんに見みえるが？」

光男みつお「一応いちおう日本人ジャパニーズです…」

トニー「日本人ジャパニーズだと？……それより“一応いちおう”ってどういう意味いみだ？」

光男みつお「どうやらこの世界せかいそのものが、私わたしと息子むすこが元々もともと住すんでいた世界せかいとは全まったく別べつの世界せかいみたいなんです…」

トニー「何なんだと！？」

光男みつお「だから警察けいさつに駆かけ込こんだとしても、このアメリカに不法入国者ふほうにゅうこくしゃとして捕つかまるだけですし、事情じじょうを説明せつめいすれば異世界いせかいからやってきた実験材料じっけんざいりょうとしてどっかの怪あやしい機関きかんに身体からだを好すき勝手かってに弄いじくられるのがオチですよ」

トニー「……信しんじられない話はなしだが…」

光男みつお「とにかく息子むすこと私わたしは元もといた世界せかいに帰かえりたいだけなんです。協力きょうりょくして下ください！」

トニー「……詳くわしいことは家いえで聞きこう…」

　光男みつおはマルチセルラーを操作そうさして、竜賀りゅうががいるポイントまでナビゲートした。
　そこに到着とうちゃくすると光男みつおは車くるまから降おり竜賀りゅうがが隠かくれていた場所ばしょまで近寄ちかよっていった。

光男みつお「竜賀りゅうが…迎むかえに来きたぞ…？」

　光男みつおは小声こごえで草くさむらに向むかって呼よびかけた。しかし返事へんじがない。

光男みつお「竜賀りゅうが、お父とうさんが迎むかえに来きてやったぞ」

　そこら辺あたりに聞きこえる声こえで今度こんどは呼よびかけた。しかし全まったく返事へんじが返かえってこない。

光男みつお「フー！…竜賀りゅうが！！せっかくお父とうさんが探さがしに来きたんだから返事へんじしろ〜！！！」

　　　　　ガサガサッ！

　草くさむらの茂しげみから音おとが聞きこえ、光男みつおとトミーがビクッとリアクションし音おとのする場所ばしょに近付ちかづいた。

光男みつお「竜賀りゅうが？…そこにいるのか？」

　光男みつおはその茂しげみを手てで掻かき分わけると地面じめんにぐったり力ちからなく横よこたわった竜賀りゅうがを見みつけた。

光男みつお「竜賀りゅうが？おい！どうした！？竜賀りゅうが！！」

トニー「ヘイ！！この子こがアンタの息子むすこなのか！？」

光男みつお「ええ！！竜賀りゅうが！！大丈夫だいじょうぶか！？」

トニー「とりあえず！俺おれの車くるまに早はやくその子こを乗のせろ！！」

光男みつお「はい！！」

　光男みつおは竜賀りゅうがを抱だきかかえてトニーの車くるまの後部座席こうぶざせきに乗のせ竜賀りゅうがの倒たおれていたところに置おいてあった荷物にもつも車くるまに投なげ込こむと、助手席じょしゅせきに飛とび乗のった。

トニー「よし！急いそいで家いえに連つれて帰かえるぞ！」

光男みつお「はい！！お願ねがいします！！」

　竜賀りゅうがと光男みつおを乗のせたトニーの車くるまは元もとの車庫しゃこに着つき、トニーは光男みつおに竜賀りゅうがを部屋へやに案内あんないした。

トニー「こっちだ…！」

妻つま「アナタ…その子こは…！？」

トニー「光男みつおの息子むすこだ。かなりぐったりしているんだ。この子この体調たいちょうを診みてやってくれるか？」

妻つま「ええ」

光男みつお「Mr.ミスターベイカー…奥おくさんは医療いりょう関係かんけい者しゃか何なにか？」

トニー「ああ…紹介しょうかいしてなかったな…妻つまのシャーリーだ」

シャーリー「シャーリー・ベイカーです。昔むかし病院びょういんでドクターをやっていたこともあるんだけど、少すこし前まえまでは心療科しんりょうかだった引退いんたいした“人間にんげん“だからそんなに期待きたいしないでね」

光男みつお「いいえ、凄すごく助たすかります」

　シャーリーは竜賀りゅうがの身体からだに触診しょくしんして身体からだの異常いじょうを探さがしていた。光男みつおは心配しんぱいそうな顔かおをしていたのか、トニーが光男みつおの肩かたにポンッと手てを置おいた。

トニー「大丈夫だいじょうぶだ…そんな死しにそうな顔かおをするな」

光男みつお「！…すみません」

トニー「なぜ謝あやまる？」

光男みつお「…どうやら…この子こ昨晩さくばんから一睡いっすいもしていなかったらしいんです…しかもこの子こも俺おれも水分すいぶんは摂とっていましたが、昨日きのうの昼ひる以降いこう何なにも食たべてなかったので…」

シャーリー「昨日きのうから何なにも食たべてなかったですって！？だったら栄養失調えいようしっちょう起おこしてるじゃないこの子こ！何なんでそんな状態じょうたいになるまで放置ほうちしていたのよ！？」

光男みつお「…完全かんぜんに親おやである僕ぼくの責任せきにんです」

トニー「まぁまぁシャーリー…車くるまの中なかでも話はなしていたが……光男みつおとこの竜賀りゅうがって子こには複雑ふくざつな事情じじょうがある様ようなんだ…後あとでゆっくり聞きこう」

光男みつお「感謝かんしゃします」

トニー「とにかくここはシャーリーに任まかせて…君きみと俺おれは向むこうで先さきに食事しょくじをしていよう…いいなシャーリー？」

シャーリー「ええ、お先さきにどうぞ」

光男みつお「え！？いやでもそこまでしてもらうのは…それにこんなになった息子むすこよりも先さきに食事しょくじをいただくなんて…」

トニー「遠慮えんりょするな…さっき言ってただろ？2人ふたり共とも昨日きのうの昼ひる以降いこう何なにも食たべてなかったって言いっていただろう？君きみもずいぶん空腹くうふくで身体からだが悲鳴ひめいを上あげているはずだが？」

　　　　　ぐううううう

　光男みつおのお腹なかが示しめし合あわせた様ように鳴なり、光男みつおは顔かおを真まっ赤かにした。

光男みつお「いっ…今いまのは！」

トニー「強つよがっていても、身体からだは正直しょうじきだな？さあ！話はなしは後あとにして今いまはとにかく腹はらごしらえだ！」

　トニーに半なかば無理むりやり食卓しょくたくに連つれて行いかれた光男みつおはテーブルに置おかれていた料理りょうりの品々しなじなを見みて息いきを飲のんだ。

光男みつお「…！！？」

トニー「今日きょうはシャーリーが腕うでによりをかけて作つくってくれた御馳走ごちそうばかりでね」

　光男みつおは洗面台せんめんだいで手てを洗あらい椅子いすに座すわるとキラキラした目めで料理りょうりを見みた。

光男みつお「……いただきます！」

トニー「はい、どうぞ」

　空腹くうふくは最高さいこうの調味料スパイスとはよく言いったものだ。

　昨日きのうの昼食ちゅうしょく以降いこう何なにも食たべていなかった反動はんどうで、光男みつおの身体からだは本能ほんのうに生いきる獣ケモノの様ように七面鳥しちめんちょうの丸焼まるやきやパン、サラダ、スープを口くちに放ほうり込こんだ。

光男みつお「…！！…！！…！！」

トニー「そんなにがっつかなくても、料理りょうりは逃にげていかんぞ？」

　料理りょうりを美味うまそうに頬張ほおばる光男みつおを見みたトニーは嬉うれしそうにしていた。

光男みつお「……！！…はぁ…メチャクチャ美味おいしいですね！」

トニー「ありがとう…その言葉ことば後あとでシャーリーに直接ちょくせつ言いってやってくれ」

光男みつお「はい！！」

トニー「それより光男みつお…君きみのマルチセルラー充電じゅうでん大丈夫だいじょうぶか？」

光男みつお「え…？」

　光男みつおは襟えりにずっと付つけっ放ぱなしだったマルチセルラーを取とり外はずして電気残量でんきざんりょうを見みると、残のこり2％パーセントと表示ひょうじされていた。

光男みつお「ほんとだ！！」

トニー「充電器じゅうでんきはあるかい？ここで充電じゅうでんしよう。その間あいだはゆっくり食事しょくじを楽たのしめばいい」

光男みつお「何なにから何なにまでありがとうございます」

　光男みつおはポケットの中なかに入はいっていた充電器じゅうでんきと、マルチセルラーをトニーに預あずけた。トニーは光男みつおの後うしろ側がわにある丸まるい変かわった形かたちのコンセントの様ようなものに充電器じゅうでんきのプラグを取とり付つけ、マルチセルラーを取とり付つけ充電じゅうでんが始はじまった。

　光男みつおはその様子ようすを見みた後あと、椅子いすに座すわるトニーに向むかって拙つたない英語えいごで心こころを込こめて笑顔えがおで言いった。

光男みつお「サンキューベーリーマッチ」

トニー「You're welcome.どういたしまして」

　身体からだにのしかかる疲労ひろう感かんが徐々じょじょに抜ぬけていき、重おもい瞼まぶたを開ひらくとそこには知しらない天井てんじょうが広ひろがっていた。

竜賀りゅうが（ここは…どこだ？……）

竜賀りゅうが（確たしか……森もりの中なかにいて……父とうさんが先さきに泊とまれる場所ばしょ探さがして来くるからって言いって…）

シャーリー「Ohあら？? Have you woken up yetもう目を覚ましたの？?」

　竜賀りゅうがは声こえのする方ほうに頭あたまを傾かたけると、そこには白髪はくはつのオールバックのお団子だんごヘアの女性じょせいが部屋へやに入はいって来きた。

　竜賀りゅうがは身体からだを起おこし部屋へやを見回みまわしてみて、自分じぶんが知しらない内うちにここに連つれて来こられたという結論けつろんに辿たどり着ついた。

シャーリー「How are you feeling身体の調子はどう？? Is there something badどこか悪いところはない？?」

　竜賀りゅうがは自分じぶんに話はなしかけてくるこの女性じょせいに対たいして、通つうじないと分わかっていながら日本語にほんごで話はなしかけてみた。

竜賀りゅうが「ここはどこですか？僕ぼくの父親ちちおやはどこにいますか？」

シャーリー「？……Wait a minute, okayちょっと待っててね？? I'm going to call your father now.今あなたのお父さんを呼んできますからね」

　その女性じょせいは立たち上あがって、隣となりの部屋へやに歩あるいていくと誰だれかを呼よんでいた。向むこう側がわから女性じょせいが誰だれかを呼よぶ声こえがした。

　竜賀りゅうがは知しらない場所ばしょにいることに困惑こんわくしていたが、なんとなく女性じょせいには害がいが無ないような気きがしていた。

　すると向むこうの部屋へやから何人なんにんかがこちらに向むかって来くる足音あしおとが聞きこえてきた。

　部屋へやに真まっ先さきに入はいってきたのは父親ちちおやである光男みつおだった。

光男みつお「竜賀りゅうが！目めが覚さめたのか！？」

　光男みつおは竜賀りゅうがに駆かけ寄よると力ちからいっぱい抱だき締しめた。

光男みつお「無事ぶじで良よかった！！」

竜賀りゅうが「ぐあ！！…と…父とうさん！…痛いたいよ…！」

光男みつお「おお！すまんすまん！！」

　光男みつおは竜賀りゅうがを放はなすと目めを見みつめながら聞きいた。

光男みつお「身体からだは大丈夫だいじょうぶか？どこか痛いたくないか？」

竜賀りゅうが「……とにかく今いまは腹はらが減へって死しにそうかな？」

光男みつお「…ハハッ…そんな事ことが言いえるんだったら大丈夫だいじょうぶだな」

トニー「とりあえず先さきに食事しょくじにしたらどうだ、光男みつお？今いまの君きみの息子むすこの状態じょうたいじゃ、満足まんぞくに話はなすこともできないだろう？」

光男みつお「ええ！…それじゃ竜賀りゅうが、まずはあっちの部屋へやで料理りょうりを食たべて腹はらごしらえしよっか？歩あるけるか？」

竜賀りゅうが「…うん」

　竜賀りゅうがは戸惑とまどいながら光男みつおの手てを借かりながら隣となりの部屋へやに歩あるいていった。

To Be Continued