見出し画像

#8 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第7話 「はじめて握る真剣と刃の感触」

 戦火せんかつつまれるもりなか藍川あいかわ光男みつおとワイルズ・ダーヴィッチがかいっていた。光男みつお竹刀しないにぎいままでにない緊張きんちょうかんじていた。光男みつお息子むすこ竜賀りゅうがはそんな2人ふたりのただならぬ緊張きんちょうかん圧迫あっぱくされ心臓しんぞうつぶされるよう感覚かんかく見舞みまわれた。

竜賀りゅうが(こんな真剣しんけんおこってるとうさんはじめてた。いままでてきたどんな試合しあい緊張きんちょうかんともちがう!!とうさん本気ほんきおこってる…!!)

 光男みつおはワイルズをにらけながらジリジリと距離きょりめてった。

光男みつお「ワイルズ…たたかまえに1つ確認かくにんしておきたいんだが…」

ワイルズ「なんだ?誕生日たんじょうびでもりたいか?」

光男みつお「クリフ・ポーランドって名前なまえおぼえがないか?」

ワイルズ「クリフ…ポーランド?」

光男みつお「おまえがかつてころしたつみ母子ははこにくしみを背負せおってハドノア連合れんごうはいったマードック部隊ぶたい隊員たいいんおぼえてるかっていてるんだよ!」

ワイルズ「残念ざんねんながら、その程度ていどのこといちいちおぼえてないね」

光男みつおなに?その程度ていどのことだと!?」

ワイルズ「ああ…光男みつおだっけ?…アンタはいちいちころした家畜かちくぶた名前なまえおぼえようとすんのか?人間にんげんわれるエサとしての目的もくてきためつくられてんのさ。でもエサってうと倫理モラルかるから、あえて家畜かちくって表現ひょうげんにして商品しょうひんとしてスーパーなんかに販売はんばいしてんのさ」

光男みつお「てめえにとっては適能者デュナミスト人間にんげんで、無適能者アンチステージ家畜かちくぶただっていてぇのか?おんな人間にんげんとしてのながれててもか?」

ワイルズ「おれたち適能者デュナミストだからってことにかぎらないだろ?人類じんるいなが歴史れきし…その時代じだい環境かんきょうつく価値観かちかんって物差ものさしがちがえば、世界せかい支配しはいするためのルールがわる。いま伽霊能力ギアルスキル適能者デュナミスト圧倒あっとうてき覇権はけんにぎるこの時代じだいにアンタみたいな弱者じゃくしゃ綺麗事きれいごとってねぇってだけのはなしだ」

光男みつおおれはやっぱりアンタのことがきらいだな…」

ワイルズ「理論りろんたいして感情かんじょうろんかよ…意外いがいとつまんねぇおとこだな」

光男みつお人類じんるい進化しんか歴史れきし同胞どうほうたがいにちが価値かちかんともいながら共存きょうぞんすることでってきたはずだ。自然しぜんかいでのちから優劣ゆうれつだけがすべてじゃない!!」

ワイルズ「ほお…感情かんじょうろんだけしかえない馬鹿バカでもないようだな。だがそれを証明しょうめいしたけりゃまずおれめてみろよ!」

 それからワイルズは左手ひだりてから伽鍵礼符キーカードした。礼符カード銀色ぎんいろかがやすとワイルズのから無数むすう球体きゅうたいてきてちゅうした。

光男みつお「ゲイドの空圧膨張エアロパンクか?」

ワイルズ「ククク…あれだけすぐれた能力チカラじゃねぇさ…だがな…」

 そこまでうとちゅうにフワフワといていた無数むすう球体きゅうたいが、ワイルズの右手みぎてうえがったときピタッ!とうごきがまり、右手みぎて光男みつおねらいをさだめてろすと

 無数むすう球体きゅうたい光男みつお目掛めがけて一気いっきんでた!!

     ギュオン!!!

光男みつお「!!!ウオッ!!?」

   ガガガガガガンッ!!!!

 光男みつおはかろうじてけた球体きゅうたいうしろ木々きぎ直撃ちょくげきするとはミシミシとおとてバタバタとたおれた。光男みつおがるとたおれたみガサゴソとなにかをさがした。

ワイルズ「なにやってんだ?」

 すると光男みつおたおれた木々きぎなかから2つ先程さきほどワイルズがばしてきた球体きゅうたい両手りょうてにぎってた。

光男みつお「これすっごくおもいな!これ金属きんぞくじゃねぇか…こんなもの直撃ちょくげきしたらひとたまりもねぇぞ」

ワイルズ「まぁ…ほねの1ぽんや2ほんはご愛嬌あいきょうだな」

光男みつお「だったら…」

 光男みつお右手みぎてっていた鉄球てっきゅうをハンマーげの要領ようりょう身体からだまわしながらワイルズ目掛めがけてほうげた。

光男みつお「おまえがこれをらえ!!」

 自分じぶん目掛めがけてんで鉄球てっきゅうをワイルズはまったける素振そぶりもせず右手みぎて鉄球てっきゅうれる。その途端とたん鉄球てっきゅうかたちえブーメランのようかたちになった。

光男みつお「まだまだぁ!!」

 光男みつおがそうさけんだかとおもうともう1鉄球てっきゅうがワイルズにかってんでた。

ワイルズ「ッ!」

 ワイルズが面倒メンドくさそうに左手ひだりて鉄球てっきゅうけると、鉄球てっきゅう左手ひだりての1m手前てまえでピタッとまりちゅうをフワフワいていた。

竜賀りゅうが「やっぱりダメか…」

 ちかくでていた竜賀りゅうが溜息ためいきをついた。2つの鉄球てっきゅうなんなくめたワイルズに父親ちちおやすべがあるのかと。

光男みつお竜賀りゅうが!どんなときでも希望きぼうてるな!相手あいてろ!そして勝機しょうきさぐれ!そう言ってるだろ!」

ワイルズ「クク…いま攻撃こうげき失敗しっぱいしたことでかるのは、アンタのっている武器ぶきおれ決定的けっていてき一撃いちげきくわえられるものはなに1ついってことだ。アンタの息子むすこほう利口りこうだとおもうがね」

光男みつお「そうでもねぇぞ」

ワイルズ「?」

光男みつお「アンタにさっき鉄球てっきゅうを2つげたのと、アンタがヒューズをころしたことで、アンタの伽霊能力ギアルスキル正体しょうたいが3つえたよ」

ワイルズ「なに?」

光男みつお「まずひと液体えきたい金属きんぞく身体からだから発生はっせいさせる能力チカラと、2つ身体からだれた金属きんぞく自在じざい変形へんけいさせあやつ能力チカラ、そして3つ自身じしん一定いってい範囲はんいない磁力じりょくあやつ能力チカラの3つだ」

ワイルズ「!?」

光男みつお「どうやら全部ぜんぶたったみたいだな」

 ワイルズは自分じぶん伽霊能力ギアルスキルすべてた光男みつお驚愕きょうがくした表情ひょうじょうかくせなかった。いままでの人生じんせいでたった1かいしか能力チカラせていないにもかかわらず、それを的確てきかくてられた経験けいけんがほとんどかったのだろう。

ワイルズ「……クククククク…すべ正解せいかいだよ…何故なぜわかった?いままでの攻撃こうげき防御ぼうぎょしかせていないはずだ…それともさっきってたクリフってヤツからいたか?」

光男みつお「いや…さっきまでのアンタの能力チカラ使つかかたてたらわかったよ」

ワイルズ「ほう?」

光男みつお「さっきの液体えきたい金属きんぞく鉄球てっきゅうえておればすまでは、『身体からだからした液体えきたい金属きんぞく自由じゆう自在じざいあやつ能力チカラ』だとおもってた。でもおまえおれ鉄球てっきゅう無警戒むけいかいっていたにもかかわらず、鉄球てっきゅう変形へんけいさせてあやつっておれ両腕りょううでとしたりおれにぶつけたりしなかった。いやできなかったんだろう?」

ワイルズ「…」

光男みつお「おまえは、液体えきたい金属きんぞくがおまえ身体からだれていないかぎり、操作コントロールできなくなる。だからおれがこの距離きょり鉄球てっきゅうを2っていたときあやつれなかったんだ。金属きんぞく能力チカラあやつ能力チカラはそれぞれ別々べつべつだ」

ワイルズ「…もしそうだとしたら、おれ鉄球てっきゅうちゅうかばせていたトリックの説明せつめいにならないとおもうが、あのときおれ液体えきたい金属きんぞくさわってなかったが?」

光男みつお「それが3つ能力チカラ磁力じりょくあやつ能力チカラだろ?無数むすう鉄球てっきゅういているとき、そしてんでた2つ鉄球てっきゅうめたとき鉄球てっきゅう不安定ふあんていにフワフワいていた…だろ?」

ワイルズ「見事みごとだよ。おれ能力のうりょく霊段階ステージ2ツー鉄液状化メタルリキッド身体からだれる金属きんぞく液体えきたいしてあやつ能力チカラ霊段階ステージ3スリー白銀の涙シルバーティアー身体からだからぎん生成せいせいする能力チカラ霊段階ステージ4フォー磁気斥力マグネトロン周囲しゅうい磁力じりょく発生はっせいさせあやつ能力チカラだ」

光男みつお「わざわざご丁寧ていねい能力のうりょく名前なまえまで解説かいせつしてくれてどうも」

ワイルズ「なんだよそっけないなぁ〜もっとうれしそうにしたらどうなんだ?クイズ番組ばんぐみなら全問ぜんもん正解せいかい表彰ひょうしょうものだぜ?」

光男みつおおれむかしからマンガが大好だいすきでね…とく超能力ちょうのうりょく戦闘バトルけいきなんでアンタが能力のうりょくせたとしてもビックリはしてもそんなにパニックになりはしないのさ」

ワイルズ「マンガ?なんだ?それ?」

光男みつお「マンガをらねぇのか…」

ワイルズ「…で?おれ能力チカラ正体しょうたいをアンタは見事みごと見破みやぶったわけだが…」

 そこまでうとワイルズはいきなり光男みつおかって体当たいあたりするようんで左手ひだりて光男みつおかおうでばしてきた。すると左手ひだりてがいきなりアイスピックのようするどトゲになり光男みつおかお串刺くしざしにしようとした。

光男みつお「うお!!」

 光男みつお竹刀しないトゲしたからげるよう逆風さかかぜをかまし、巴投ともえなげの要領ようりょううしろたおれながらワイルズの身体からだうしろばすようげた。

光男みつお「っどりゃああああ!!!」

ワイルズ「ぐっ!…めんなぁ!!」

 身体からださかさまにちゅうげられたワイルズは右手みぎてっていたてつのブーメランを光男みつお目掛めがけてけた。しかし光男みつお咄嗟とっさ受身うけみりワイルズにかえって、んでたブーメランをよこから竹刀しないたたばした。

光男みつお「ふぅ…」

ワイルズ「マジかよ…いま連続れんぞく攻撃こうげきかわせんのかよ…大抵たいていいまわざ深傷ふかでわせられんのによ」

光男みつお人間にんげんきたえりゃつよくなれるモンさ…まれながらに神様かみさまあたえられた才能さいのうってのには限界げんかいがあるもんだぜ」

ワイルズ「ふん…たかが無適能者アンチステージ分際ぶんざいかったようくちたたくなよ」

 ワイルズは左手ひだりてトゲ自転車じてんしゃ車輪しゃりんよう丸鋸まるのこ変形へんけいさせた。

ワイルズ「まれながらの才能さいのう限界げんかいだと?この世界せかいでは伽霊能力ギアルスキルこそ絶対ぜったいだ。無適能者アンチステージども科学かがくりょくってのも結局けっきょくおれたち適能者デュナミスト能力チカラ解析かいせきして発展はってんした恩恵おんけいみたいなもんだ」

 ワイルズは丸鋸まるのこちかづけると丸鋸まるのこ高速こうそく回転かいてんはじめ、轟音ごうおんてながらを2びょうらずで切断せつだんされた。

竜賀りゅうがとうさん!!」

ワイルズ「ちなみにこれもおれ能力のうりょくの1つ霊段階ステージ6シックス電磁転石エレキモーター金属きんぞく磁力じりょく回転かいてんさせる能力チカラだ」

 られた切断せつだんめんにヒビがはいっていない状態じょうたいて、竜賀りゅうが父親ちちおやがあれをらってしまったらとおも心配しんぱいこえをかけた。

ワイルズ「これでもアンタはまれながらのちからってやつに限界げんかいなんてかんじねぇってほざくのか?」

光男みつお「まあ面白おもしろいとはかんじるけどな。それが絶望ぜつぼうすることにはつながらねぇよ」

 そううと光男みつおはワイルズにかってニヤッとわらってせた。

ワイルズ「この状況じょうきょうわらってられるとはな…アンタも相当そうとう大物おおものだな」

 ワイルズもニヤッとわら丸鋸まるのこ回転かいてんさせはじめると

ワイルズ「今日きょうわすれないでおいてやるよ、藍川あいかわ光男みつおここまでよくぞこのワイルド・ダーヴィッチをたのしませてくれたことを…」

光男みつお「まだ決着けっちゃくはついていないはずだが?」

ワイルズ「ああ…だから」

 ワイルズはふたた丸鋸まるのこ光男みつおかってろしてたが、光男みつおはひらりをそれをかわした。すると今度こんどはワイルズの右手みぎてするどながつめ光男みつおこうとした。

光男みつお「なんの!!」

光男みつおはそれすらもかわした。右手みぎてつめ左手ひだりて丸鋸まるのこ交互こうごおそいかかってるのをかわしながら光男みつおはここぞの機会チャンスうかがっていた。

光男みつお「これでとどめさしてやる!藍川光男流剣術あいかわみつおりゅうけんじゅつ渦斬うずきり“!!!」

 ワイルズの右手みぎてかわし、光男みつお身体からだ回転かいてんさせながらワイルズの背後はいごまわみながら遠心力えんしんりょく利用りようしてワイルズの延髄えんずい横薙よこなぎをんだ。

光男みつおなに!?」

 しかし光男みつお竹刀しないはワイルズのクビたってはいなかった。いや、たっていないとうよりワイルズのクビ竹刀しないがすりけていた。

光男みつお「どういうことだ?いまのは絶対ぜったいたるタイミングだったはずだ…なん手応てごたえが…」

ワイルズ「ククク…ここまでおれたのしませてくれたれいわりにおれ切札きりふだともえる能力チカラをアンタにせてやるよ」

 光男みつおあわててワイルズから距離きょり体勢たいせいなおした。ちかくでていた竜賀りゅうがではなかった。光男みつお攻撃こうげきがワイルズにかない光景こうけいたりにしかおさおになっていた。

光男みつお「ふん…光栄こうえいだね。ここにてようやく本気ほんきになって切札きりふだしてくれるとはね…なんなんだその能力チカラは?」

ワイルズ「霊段階ステージ5ファイブ崩形銀像シルバリアスライム身体からだ細胞さいぼうそのものを金属きんぞく結晶体けっしょうたい変質へんしつさせ形状けいじょう自在じざいえられる能力のうりょくさ…まぁ形状けいじょうえられるのは自身じしん身体からだ体積たいせきぶんだけだけどな」

光男みつお「つまり液体えきたい金属きんぞく身体からだせるうえ自分じぶん身体からだ自体じたい液体えきたい金属きんぞくにできるってことか」

ワイルズ「そういうことだ…最初ハナっからアンタのその棒切ぼうきれの攻撃こうげきなんざなにこわくねぇんだよ」

竜賀りゅうがわりわなぎるだろ!!アンタの攻撃こうげきはこっちにいて、こっちの攻撃こうげきまったかないなんて」

ワイルズ「馬鹿バカかおまえたたかいってのはそもそもそういうもんだろうが…卑怯ひきょうなんてない!自分じぶん有利ゆうりはたらくように戦況せんきょう操作そうさするのがのこため基本きほんだろうが!!おたがいが公平フェアたたかうスポーツとはわけがちがうんだよ!!」

光男みつお「ちっ!…だったら!!」

 光男みつおはワイルズのかお目掛めがけて刺突つきんだ。が、竹刀しない手応てごたえなく、ワイルズのかおみずのようにかたち横薙よこなぎに転換てんかんしてもまるで暖簾のれん腕押うでお状態じょうたいだった。

ワイルズ「アンタもかんないおとこだなぁ…」

 ワイルズは身体からだまれている竹刀しない両手りょうてつかむとーーー

   バキッ!!!

 光男みつお竹刀しないをまるでえだようにへしった。

光男みつお「しまった!!」

ワイルズ「やれやれ最初さいしょからこうしとけば無駄ムダ時間じかんわずにんでたぜ」

 った竹刀しないしげみにげワイルズは光男みつおばした。

光男みつお「がは!!」

竜賀りゅうがとうさん!!」

光男みつお「りゅ…竜賀りゅうが!!げろ!!おまえだけでも!!!」

竜賀りゅうがいやだ!!とうさんを見捨みすてて自分じぶんだけげたくなんかない!!!」

 竜賀りゅうが先程さきほどまで恐怖きょうふうごかなかったあし必死ひっしうごかしがった。

ワイルズ「安心あんしんしろよ」

 ワイルズはいたみにうずくまる光男みつおちかくと、光男みつおみつけた。

ワイルズ「げようがげまいが、アンタをころしたあとでアンタの息子むすこもすぐあのおくってやるよ」

光男みつお「ぐあ!!」

竜賀りゅうが「!!とうさんからはなれろ!!」

 竜賀りゅうが自分じぶん竹刀しないち、ワイルズにかって物凄ものすごいスピードでんで竹刀しないをワイルズのあし目掛めがけてった。

ワイルズ「やれやれ…おやおやなら馬鹿バカってことか?かねぇってーーー」

 ワイルズの液体えきたい金属きんぞくした身体からだ竜賀りゅうが竹刀しないさった状態じょうたいめ、

ワイルズ「ってんだろうが!!!」

   バキバキッ!!!

 竜賀りゅうが竹刀しないもへしってしまった。ワイルズは竜賀りゅうが喉輪のどわをした。

竜賀りゅうが「がっ!!…」

ワイルズ「おれはおまえみたいによわいくせにつよヤツかってぬことが美徳びとくみたいにおもってるヤツきらいなんだよ。あしない結果けっかになるのがかってんのにけるって結果けっかからげるためことえらヤツがな!!」

 ワイルズは竜賀りゅうがばし、竜賀りゅうが身体からだ地面じめんうえたたきつけられた。

竜賀りゅうが「がは!」

光男みつお竜賀りゅうが!!」

ワイルズ「まずはアンタだ…たのしかったぜ…藍川あいかわ光男みつお!!」

竜賀りゅうが「やめろおおおおおおおおおおお!!!」

 竜賀りゅうがのどけるかとおもえるほど絶叫ぜっきょうした。するとーーーー

 竜賀りゅうが右手みぎてひかした!!

ワイルズ「なに…!?」

光男みつお竜賀りゅうが?」

 竜賀りゅうが自分じぶんみぎてのひらると霊媒印コモンベスタあおかがやき、そこには「2」と文字もじかんでいた。

光男みつお「まさかこんなみじか時間じかんで」

竜賀りゅうが「これがおれの…霊段階ステージ2ツー…」

 竜賀りゅうが霊媒印コモンベスタながらねんじるとあおひかりつつまれた伽鍵礼符キーカードたーーー

 ーーその伽鍵礼符キーカードには「海斬刀かいざんとう」とかれていたーーーーー

 竜賀りゅうがはその礼符カードにまたねんじると、今度こんど礼符カードからはなたれているひかり収束しゅうそくし、竜賀りゅうが右手みぎてには紫色むらさきいろさやに、藍色あいいろつか黄金おうごんいろつばけた日本刀にほんとうにぎられていた。

ワイルズ「なにてくるのかとおもえば…ソードがた霊具ギーツか…そんなモンが流動りゅうどうするおれ身体からだくとでも?」

 竜賀りゅうがつかにぎるとさやから刀身とうしんした。すると刀身とうしん時代劇じだいげきていたようぎんいろではなく、あやしくあおかがやき、刃紋はもん紫色むらさきいろほのおようかたちをしていた。

 竜賀りゅうが人生じんせいはじめてこの瞬間しゅんかん真剣しんけんにぎった。

 真剣しんけんおもさに最初さいしょおどろいていた。ズシリとかるそのおもさが、ひところためおもさであると竜賀りゅうが実感じっかんさせた。

光男みつおめろ!竜賀りゅうが!!おまえ真剣しんけん使つかったことなんてないだろ!!使つかれてない武器ぶきなんてやくたないし、危険きけんまねくだけだ!!」

竜賀りゅうが「でも…ここでこの男ワイルズたおさないととうさんがころされちゃう…」

光男みつおおれこといからはやげろ!!」

ワイルズ「ククク…小僧こぞう…それはおどしの道具どうぐにはならねぇぞ?適能者デュナミスト同士どうし本気ほんきころいになれば、ころされても文句もんくはねぇよな?」

竜賀りゅうがとうさんを…とうさんをたすけられるなら…」

 そううと竜賀りゅうがかたな両手りょうてにぎめ、ワイルズにかってかまえをった。

竜賀りゅうがとうさんから…いますぐはなれろ!!ワイルズ!!!」

 竜賀りゅうがかたなげ、ワイルズにむと、ワイルズの身体からだ銀色ぎんいろになりふたたびスライムのように変形へんけいはじめた。

ワイルズ「おまえけんなんざおれかないどころか…」

 スライムのよう変形へんけいするワイルズの身体からだ竜賀りゅうがやいばたることなく太刀たちすじわせて空間くうかんができるように、紙一重かみひとえかわした。

ワイルズ「かすることもねぇんだよ」

 ワイルズは竜賀りゅうがやいば何度なんどかわすと、竜賀りゅうがひだりうでつかはらおもいっきりした。竜賀りゅうが身体からだすうメートルうしろたたきつけられた。

竜賀りゅうが「がはっ!!?」

ワイルズ「ふん…霊段階ステージ2ツーとはいえここまでよわいとがするな…やめだ!光男アンタころすのはあとにしてやる…まずは竜賀むすこからだ」

光男みつお「やめろ!!」

ワイルズ「よわヤツ自分じぶんざまえらべねぇ…そのことをのろいながらんでいくんだな!!」

 ワイルズは竜賀りゅうがくとあしから液体えきたい金属きんぞくながし、竜賀りゅうが方向ほうこうかって3〜4mのながさのレールのようものが出来上がった。そしてワイルズの右腕みぎうでがドリルのよう形状けいじょう変化へんかした。

ワイルズ「おれあしとレールに磁力じりょく発生はっせいさせて、SエスきょくNエヌきょく交互こうご作用さようさせながら前進ぜんしんすると一体いったいどうなる?」

光男みつお「まさか…リニアモーターカー…!!」

ワイルズ「正解せいかいだ…たかが無適能者アンチステージごときにはけっしてせない、磁力じりょくによるちょう加速かそく…」

光男みつお竜賀りゅうが!!!げろぉ!!!」

ワイルズ「もうおそい!!ねぇぇぇ!!!」

 ワイルズの身体からだにもまらぬスピードで加速かそくし、竜賀りゅうが大砲たいほう砲弾ほうだんよういきおいでんでいった。

竜賀りゅうが「!!?」

 竜賀りゅうが自分じぶんかってワイルズがドリルをしてるとおもい、自分じぶんはもうんだとつぶった瞬間しゅんかんーーー

 ーーーー左手ひだりてにぎっていたかたな勝手かってうごしたーー


    グサ!!!

 竜賀りゅうがなににぶにくおとかんじ、なに生温なまあたたかい液体えきたいようなものが身体からだそそいだ感触かんしょくかんじた。そして1人ひとりでにうごしたかたなからなにべつおもみがかるのを実感じっかんした。

 竜賀りゅうが自分じぶんはまだつぶっていた。ワイルズのドリルが自分じぶん身体からだつらぬいたみがジワジワおそいかかってるとおもってひらけなかったからだ。

 しかし、竜賀りゅうがはしばらくっても自分じぶん身体からだからいたみをかんじなかった。

ワイルズ「ガハッ!!」

 まえでワイルズのこえかんじ、おそおそひらくとーーー

 ーーそこには竜賀りゅうがかたながワイルズのひらいたくちから後頭部こうとうぶにかけて貫通かんつうしていた光景こうけいだった。ーーー

光男みつお竜賀りゅうが!!るな!!」

 竜賀りゅうが視界しかいおおうワイルズの死体したいうしろがわから光男みつお大声おおごえこえた。しかし竜賀りゅうがまえひろがる光景こうけいからはなせなかった。

 ワイルズのあたまつらぬいたくちからは大量たいりょうていて、ワイルズは意識いしき完全かんぜんうしなって白目しろめいていた。竜賀りゅうがかおひだりがわにはワイルズのドリルがすぐそばでうしろさっており、間一髪かんいっぱつけれたことがうかがえる。

 そして自分じぶんふくかっているあかがワイルズのものであること、かたなつたってワイルズの左手ひだりてからポタッ…ポタッ…ポタッ…とながちていることを認識にんしきした。

  ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…

竜賀りゅうが「…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 竜賀りゅうが徐々じょじょ状況じょうきょう理解りかいしていくと、心臓しんぞうおとみみをこだまするようにおおきくかんじ、のどきゅうめつけられるよう感覚かんかくおちいった。

 ーーー竜賀りゅうが自分じぶんはじめてひとごろしをしたと自覚じかくしたーーー

竜賀りゅうが「はぁ!…はぁ!…はぁ!…はぁ!」

光男みつお竜賀りゅうが!!かたなはなせ!!」

 光男みつお竜賀りゅうがると、竜賀りゅうが血塗ちまみれになった左手ひだりてをかけ無理矢理むりやりかたなからはなさせようとした。

光男みつお竜賀りゅうが…!!かたなからはなすんだ…!!」

 しかし竜賀りゅうが左手ひだりてしんじられないほどつよかたなにぎっており、ちからづくではほどけないほどだった。

光男みつお竜賀りゅうが!!はなせってってるだろ!!…竜賀りゅうが?」

竜賀りゅうが「そんな…こんな…はずじゃ…はぁ…はぁ…」

 光男みつお竜賀りゅうがかおると唖然あぜんとした。竜賀りゅうが焦点しょうてんってないよううごきをし、くちびるはワナワナとふるえて、かおさおになっていた。竜賀りゅうが自分じぶん殺人さつじんをしてしまった事実じじつ混乱こんらんしていた。

 光男みつお竜賀りゅうがのパニック状態じょうたい一旦いったん深呼吸しんこきゅうし、まず自分じぶんこうとした。そして竜賀りゅうがかってやさしくかたりかけた。

光男みつお竜賀りゅうが?…おれこえこえるか?…こえるならうなずくだけでもい…こえるか?」

竜賀りゅうが「はぁ…はぁ……!」

 竜賀りゅうがかたなさき凝視ぎょうししていたが、光男みつおこえこえたようであら呼吸こきゅうしながらもちいさく2、3かいクビたてった。

光男みつお竜賀りゅうが…ゆっくりでい…みぎいてみろ…ゆっくり…」

竜賀りゅうが「…!!」

光男みつお大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶだから…」

 竜賀りゅうが父親ちちおやこえがけにゆっくりクビおそおそみぎまわすと、そこにはやさしい表情ひょうじょうをした父親ちちおやかおがあった。

竜賀りゅうが「……とうさん…」

光男みつお竜賀りゅうが?…左手ひだりてからちからいてみろ…大丈夫だいじょうぶ…ゆっくりでいから…」

 光男みつお竜賀りゅうが左手ひだりて無理矢理むりやりかたなからはなさせるのをめて、竜賀りゅうが安心あんしんさせるよう左手ひだりてうえ自分じぶんいてゆっくりでた。

光男みつお大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶだぞ…おとうさんがそばについてるからな…」

 そううと竜賀りゅうがかたなつよにぎめていた左手ひだりてちからいていきゆびをゆっくりひらいていった。かたなつか完全かんぜんけるようになると、竜賀りゅうがひだりうでいてからだごとつよめた。

竜賀りゅうがとうさん…!!おれ…」

光男みつお大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶだからな…」

 竜賀りゅうがつぶり、なみだながしていた。暗闇くらやみもりなかでは、ほのおつつまれ木々きぎえるおとと、ワイルズのしかばねける竜賀りゅうが嗚咽おえつだけがひびいていた。


To Be Continued

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?