『経験としての自然 (Experience and nature)』(Dewey, 1925/1929) の新訳

去年(2021年)に出たのが下記の翻訳書です。

デューイ[著]・栗田修[訳]『経験としての自然』(晃洋書房)

いい訳本だなあと思います。

デューイの主著の一つ、"Experience and nature" (Dewey, 1925/1929)は、今まで邦訳が2回公刊されていましたが、今回の訳でようやく理解がかたまってきたことも多いです。

例えば、植物の根毛は、土壌の化学物質と相互作用し、組織された生命活動全体に役立つ。そして根毛は、逆にまた、その有機体全体の他の諸部分から、その根毛自身に必要な栄養の分け前を取り立てる。(デューイ, 2021, p. 261)

有機体の各「部分」はそれ自身において組織されているが、その部分が所属する「諸部分」もまた同じようにそれ自身において組織されている。したがって、環境の事物との相互作用においてもつ各部分の選択的バイアスは、各部分それ自身を維持するように働くが、同時にまた、その部分が一メンバーとして所属する全体を維持するように働く。(デューイ, 2021, p. 261)

こうした具体例と考察から、ジェンドリンの『プロセスモデル』 (Gendlin, 1997/1998)の第4章Aにある「サブ・プロセス」等を考察し直すのも一つの楽しみです。

以下は蛇足です。今回の訳書のタイトルがなぜ『経験と自然』ではなく、『経験としての自然』になったのかは、訳書のどこにも書かれていないです。おそらく、Art as experienceに倣ったのだとは思いますが。

"Experience and nature"は、東京大学出版会からも新訳が刊行予定なので、その刊行も楽しみです。

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