時差に正確な「朝のリレー」
詩人の谷川俊太郎さんがお亡くなりになったとのこと。
鉄腕アトムの作詞で有名ですが、私としては子供のころ教科書に載っていた「朝のリレー」という詩を思い出します。「経度から経度へ」と「朝をリレーする」というのは、コロナ禍以降にzoomで時差を越えて会話するようになってからというもの、よりリアルに感じたものです。
詩には門外漢の私ですが、おそらく韻を踏む心地よさが命なのだろうし、それに想像力の賜物なので、あくまでフィクションとして読めばいいものと思っていました。例えば、歌の歌詞で言えば、「アジアの純真」とタイトルにあるのに、歌詞にダブリンやラザニアが入っているのはおかしいと指摘するのは無粋なことなのだろうと。
でも、今回「朝のリレー」の冒頭に描かれている時差を調べてみたら、意外や意外、正確でした。つまり、全く架空の話ではないのです。
たしかに「カムチャツカの若者がきりんの夢を見ている」ちょうどその時刻に、「メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている」のはあり得る話なのです。
たしかに「ニューヨークの少女がほほえみながら寝がえりをうつ」ちょうどその時刻に、「ローマの少年は柱頭を染める朝陽にウィンクする」のはあり得る話なのです。
谷川俊太郎さんご本人は執筆当時どう思ってらっしゃったのか。公式YouTubeで回想されていますが、この詩は「実際に机の上に地球儀を置いて書いた」のだそうです。
なるほど、どうりで時差に正確なわけです。