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イメージ記憶を使ったアイディア発案法

私が研究生活を開始したのは、2003年2月である。そのため、研究歴は約20年間になる。その中でも「新しいアイディアを出す」ということを取り柄として、研究生活を進めてきたつもりだ。そこで今回は、アイディア出しの秘訣について公開する。もちろん、研究以外でも役に立つ方法であると思うので、読者の皆様に少しでも参考になれば幸いである。

① 問いの種をみつける

実をいうと、研究においてこの「問いの種をみつける」ことが1番難しく、かつ、1番重要である。研究歴を積み重ねていけば、自ずとその分野の重要な「問い」が見つかってくると思うが、初めて研究に取り組む人には難しいポイントであろう。そこで、最初は指導教員や先輩に相談して「問い」を教えてもらうのが1番てっとり早い。学部4年生の時には、指導教員から研究テーマを与えられることも多いだろう。研究テーマが、すなわち「問い」である。

② 知識を頭に詰め込む

斬新な発想というのは、ゼロから生まれるものではない。「巨人の肩の上に立つ(If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants)」という格言もある通り、研究は、先人の積み重ねた発見に基づいて行うものである。そこで、まず「問い」に関係する知識を、集中して頭に詰め込む作業から始める。

ここでは、最新の英語論文を読むことが重要であるが、それが難しい場合には、日本語で書かれている関連本を読み漁るのがとても効果的である。個人的にはブルーバックスがちょうど良いと思う。ただし、本になっている情報は、すでに体系化された古い情報である。そこで再度、英語論文に戻ってくる。

英語論文には、総説(レビュー)という、これまでの研究成果をまとめたものもある。これを読むことも良い。ただし、最新の研究テーマになればなるほど、研究成果をまとめた総説は存在しない。そのため、自分で総説が書けるようになるくらい、たくさんの英語論文を読み込むことが重要である。すなわち、英語論文を読むことは研究者にとって栄養なのである。

ここで英語論文を読むときのポイントを伝授したい。

それは、英語論文の内容を「イメージ(1つの絵)」の状態で記憶しておくことである。すなわち「映像記憶」をたくさん蓄えることである。これがアイディア出しのときに、活きてくる。

③ 徹底的に自分の頭で考え抜く

ある程度、知識を頭に詰め込んだら、「問い」の「答え」を徹底的に自分の頭で考えてみよう。ここでおすすめなのが、②の「イメージ(映像記憶)」である。このイメージを様々な形で頭の中で組み合わせてみよう。例えば、「A」と「B」のイメージを組み合わせることで新しい発想ができないか。「A」と「C」はどうかなど、たくさんの組み合わせを考えてみる。

とはいえ、ここでぱっと浮かぶようなアイディアは、まだ洗練されていないことが多い。もし、ぱっと1つ目が浮かんだのなら、2つ目、さらには3つ目まで考える。3つ目までとなるとかなり難しいだろう。しかし、この過程が重要なのである。

もちろん、1つ目のアイディアすら浮かんでこないこともある(通常はこのパターンだ)。でも、まずは「問い」の「答え」に対して、自分の脳を1度フル回転させてみることが何より大事である。

④ 気分転換をする

もうこれ以上考えられない、もう煮詰まった、というところまでいったら、その「問い」はいったん寝かせよう。ずっとデスクにかじりつくのではなく、気分転換をする。

気分転換の方法にはいろいろあると思うが、私のオススメは「散歩」である。時間がなければ、大学・研究所の周りを散歩するものよい。私の場合は、大学・研究所を抜け出し、近くの公園まで行って、ただひたすら歩く。周りの自然に触れる。木々、花、草など、自然の豊かさを感じながら、とにかく歩く。ここでのポイントは、散歩コースはいつも同じにすることである。新しい場所では新しい情報が脳に入ってきてしまう。ぼんやりしていても無意識で散歩のできる、自分だけのお気に入りの散歩コースを作ろう。

⑤ アイディアは突然おりてくる

気分転換しながらも、時折「問い」について考えてみよう。なにより、重要なのは「イメージ」である。頭の中で自由に想像してみよう。突飛な発想でもかまわない。自分の脳を開放して、まるで夢の中にいるように、様々なイメージを組み合わせたり、時には何かを取り除いたりしてみよう。

私は分子生物学が専門なので、DNA・RNA・タンパク質の姿をイメージすることが多い。想像の中で、いろいろと遊んでみる。そして、新しいイメージが浮かびあがるのをひたすら待つ。個人的には、良いアイディアは、お風呂・トイレ・自転車に乗っているときに浮かぶことが多かった気がする。いつアイディアが浮かんでもいいように、常にスマートフォンは持ち歩き、アイディアが浮かび次第、メモをとっておこう。

⑥ 信頼できる先生・先輩にアイディアを話してみる

自分なりに洗練したアイディアが浮かんだら、ようやくここで信頼できる人にそのアイディアを相談してみる。他人の脳による客観的意見を求めてみるのだ。否定されるのは悪いことではない。しかし、頭ごなしにアイディアを否定してくるような相手は信頼しない方がいい。「ふーん、なるほどね。そしたら、違う視点でこんなアイディアはどう?」とポジティブに言ってくれる相手を信頼しよう。これを通して、自身のアイディアがどんどんブラッシュアップされていくの感じるだろう。

さて、ここまでくれば、あなたにも洗練された新しいアイディアが浮かんでいるに違いない。後は、実験で検証あるのみだ。

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