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うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真

これから写真を始める人はもちろん,すでに写真を撮っている人にもオススメできる書籍を発掘.

私にはとても響いた作品.
家族写真の距離感はこれからの私の作風に良い影響をいただきました.


いい写真とは

うまい写真はいい写真ではない

まず大事なことは写真の勉強は写真以外から学ぶことだ。(中略)
いい作品というのは、見た人に感情が伝わるものだとぼくは思います。だからぼくが辿り着いたいい写真の答えは、伝わる写真です。

いい写真とは_26-27ページ

自分を表現

写真は言葉で説明しないとダメ。言葉があってはじめて完成します。写真につける文章は写真の取扱説明書のようなものです。(中略)
感情をわかりやすく説明すればいいだけです。(中略)
言葉は写真がなくても成立する文章を書きましょう。

言葉で伝える_159〜163ページ

うまい=テクニック.いい=感情.
確かに,「写真うまいね」よりも「いい写真ですね」と言われるほうが嬉しい.
タイトル付けることから,説明に変える.その時の感情を残すようにする.


家族写真の撮り方

家族写真の思い出

写真は人間関係であることを認識して相手を尊重する気持ちがないと、嫌がる娘を撮りたい欲だけで撮影する『ちびまるこちゃん』のたまちゃんのお父さんのようになる。相手が嫌がったり嫌そうな顔をしたりしたらカメラを向けたらダメですよ。相手の表情と感情を読み取りましょう。(中略)
家族の写真を撮っていても自分がうつってなくてさみしさを感じるかもしれないけど、それはあくまで撮影者の視点です。家族がその写真を見たときに思い出すのはカメラを構えてるあなたの姿です。

家族の写真を撮る人_54・56ページ

子どもに配慮して撮る

かわいいからドアップで撮りがちなんだけど、自分が親におなじことされたら嫌じゃない?
自分の顔のドアップ写真って成長しても見返せないですよ。(中略)
子どもを撮るときにいちばん意識してるのは、絶対に声をかけないということ。それから離れて撮る。(中略)
子どもにカメラを渡して撮らせたほうがいいですよ。子ども写真っていいものです。子どもの視点がわかるのがいいです。(中略)
子どもに夫婦の写真を撮ってもらえばいいんですよ。ちいさい子どもをいちばん良く撮れるのは親。親をいちばん良く撮れるのはちいさい子ども

子どもと写真_60-62ページ

写真は距離

会話の距離と撮影の距離は違います。何も考えないで会話の距離で写真を撮っちゃう人が多いです。写真は見知らぬ他人以上の距離で撮ったほうがいいです。(中略)
被写体までの距離でレンズの焦点距離が変わります。写真は距離でほぼ決まります。写真がうまい人って圧倒的に距離の撮り方がうまいです。誰のため何のための写真なのか考えましょう。

適切な距離感_103・107ページ

相手に敬意を払う

誰のために写真を撮るのか考えましょう。(中略)
撮影するときに相手に敬意を払うということがいちばん大事。遠慮がなくなった相手ほど敬意も失われます。(中略)
被写体のための写真を撮りたいと思うなら、相手がよろこぶ写真にする。

撮影者の気持ちと被写体の気持ち_115-118ページ

家族だから配慮が欠けがちなので,意識して敬意を払う.
妻も子どもも好きだからこそ,いつもの距離感で撮ってしまいがち.
ファインダーを覗いているときは,愛情を持って考えてみよう.


被写体中心

構図ではなく中心で撮る

どんな現場でどんな撮影だろうと三分割構図で撮るメリットってないと思いますよ。現場でよくいわれることで意識することは「しっかり中心で撮る」ということです。(中略)
街中にある広告とか雑誌には三分割構図になってる写真がいっぱいあると思うんです。あれは中心で撮って、デザイナーさんが全体のバランスを考えてトリミングしてるんですからね。(中略)
写真も射撃も、焦りと緊張と不安と興奮で中心がずれます。だから撮影するときは落ち着いて集中する。トリミングで調整できるようにちょっと引いて撮ると便利です。

誰かがいった三分割構図_75-77ページ

”撮って出し”推奨派だと構図にこだわりがち.
RAW現像を前提にすると中心でトリミングでいいと思える.
もう少し引きで撮ろう.


読み応え抜群!

妻が好きなヨシタケシンスケだったので,きっかけはジャケ買いでした.
読むと,写真だけでなく会話や文章など生活にも良い影響を与えてくれそうな本.
写真以外にも距離感必要だし,敬意を払ったり,感情を伝えるのも人生に大事なことですよね.
時代の変化や,カメラやソフトなど技術の進歩で写真のありようは変化しますが,写真への姿勢の軸となる部分に触れている内容だったと思います.
この本のおかげで家族写真を撮るときの距離感は変わるし,もっと自然な表情が撮れそう.距離を考慮してBluetoothリモコン買った(笑)


著者紹介

写真家 幡野 広志(はたの ひろし)

1983年、東京生まれ。
2010年、広告写真家・高崎勉氏に師事。
2011年、独立し結婚。
2016年、長男誕生。
2017年、「余命三年」の血液のがんである多発性骨髄腫を発病(不治の病)

生きることが素晴らしいのではなく、自由が素晴らしい。
本当に大切なことは死に方ではなく、生き方。
人は、それぞれの幸せを享受することが生きる理由。
欲は死ぬ人間には必要ない。
病気になって,自分以外の誰かの幸せを願うようになった。
誰かの幸せを願うには、自分が幸せであること。

TEDx Talk

不治の病に対し,日本では認められていない”安楽死”を選択し,最後まで自由に楽しく生きることを選択されています.

本著のインタビュー音声

朝日新聞社が運営するウェブサイト「好書好日」のYouTube(元はPodCastなんですね)

マスコミの写真はなぜダメなのか

・マスコミの写真の基準は戦前レベル
・マスコミの記者会見はカメラマンじゃなくてストロボ君(笑)
・マスコミの写真は”ヘタで、ダメな写真”
・記者(取材力)とライター(文章力)とカメラマン(写真力)は違うもの
・被写体のことを考えていたらWebは横(ギクッ…縦やめよう)
・ヘタだからオレは撮ってほしくない

幡野さんのバッサリコメント(大好物)

いい写真とは何なのか

・作家は裏で文句言ってる(ストレスや悪さ)
・新聞社や雑誌社の人はトリミングしすぎ
・デスクは怒っても被写体は怒らない
・すげー近い距離で撮るから最悪だからドアップで撮る発想を捨てなさい
・林家パー子さんは最強で、ほとんど笑顔の写真かも

幡野さんのバッサリコメント(大好物)


もっと早く知っていたら展示会行きたかったな.


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