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#71 健康系のアプリやゲームの使い勝手、使い心地〜ポケモンGO編〜Part.2

前回の記事では、ポケモンGOの特徴や、ポケモンGOが開発された経緯・思想などについて紹介しました。

今日の記事では、ポケモンGOの特に優れている点として「行動変容の容易さ」、「継続しやすさ」について考察し、さらにゲームをすることによりメンタルが改善するという研究結果も併せてご紹介したいと思います。

ポケモンGOの優れているところ①〜行動変容の容易さ〜

・ポケモンGOの世界観の中で、モンスターを集めて図鑑にしていく楽しさがある
 → これはポケモンGOに限らずゲーム全般に言えることですが、好きなゲームに入り込めるという楽しさから、「やってみたい!」と行動を変えるスイッチが入りやすい、という側面があると思います。

基本的に人が動くには、以下のステップを踏むと考えています。

①現在の状況・状態に気づく(現状の見える化) → ②意識が変わる → ③行動が変わる(行動変容) → ④継続する → ⑤習慣化する

健康関連で言えば、①健康診断結果でB判定、C判定が出たりして自分の健康状態が見える化され、②このままだとマズい、なにか行動しないと、と思うようになり、③なにかきっかけがあると実際にウォーキングや筋トレを始めるようになります。④それを続けているうちに⑤その行動が習慣化され、健康になっていく、という流れです(さらには、体調が良くなったり数値が良くなると、それがモチベーションになって、ポジティブループがまわり、行動・習慣が強化されていきます)。

これらのうち、個人的には③行動が変わる(行動変容)ところが一番大きな障壁と思っているので、これをやすやすと超えていける点はゲームを活用することの大きな魅力と考えます。

また、ゲームへの没入感や、やっていて楽しい!というゲーム特有のハマりやすい特徴も、継続させる仕組みとして優れていると考えます。

基本的に無料
 → ほかの多くのアプリと同様、基本的には無料で楽しめます。また、下段にも記載していますが、ランダム型の課金システム(いわゆるガチャ)のような、射幸心をあおるような仕組みに頼らないような設計思想でゲームが作られており、この点は他のゲームとは一線を画しています(それでも、後段で紹介するように課金総額は他を大きく圧倒しています)。

ポケモンGOの優れているところ②〜継続しやすさ〜

・友達や仲間と繋がる仕組みが強く、続けるモチベーションが続きやすい。
 → ゲーム内で友達になったり、その友だちにポケモンやアイテムを送ったり、あるいは一緒にプレイしたりできるなど、リアルの世界でつながりを感じながら、楽しく続けられる仕組みとなっています。

リアルの世界で繋がっているとそのコミュニティから抜け出しにくい、したがってゲームもやめにくいという慣性が働くことから、これも継続化を促す仕組みとして優れていると考えます。

ドラクエウォーク(こちらは結構1人でやり込むタイプ)と比較して、継続しやすい性質のゲームになっていると思います。だからいまだにプレイする人が一定以上いる、ということなのでしょう。


ちなみに以下のサイトから確認したところ、ポケモンGOの日本のアクティブユーザーは現在440万人とのこと。

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また、2019年の課金総額をまとめたサイトもありましたが、ポケモンGOが8億9400万ドルと圧倒的です。

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ドラクエウォークもアクティブユーザー数、課金総額もそれなりに頑張っていますが、アクティブユーザーの数が短期間で急激に減っているのが気になります。

ドラクエウォークは、人気ゲームゆえに飛びつくユーザーが多いと思いますが、一人でやり込むタイプなので飽きやすく、ユーザーが離れやすいといった傾向があるのではないでしょうか。

これからの動きも気になります。

ポケモンGOとそれ以外

いままで見てきたように、ゲームをしていたらいつの間にか健康になっていた、という思想そのものは非常に重要で画期的な概念である一方、射幸心を煽ってガチャ課金することや、ログインポイントを付与してアプリへのアクセス回数を増やすことなど、どちらかと言えば制作側の都合を押し付けているものはなかなか人気が伸びない、あるいは離脱しやすいと感じます。

ポケモンGOはランダム型での課金システム(ガチャ課金)がなく、こういった射幸心を煽るような仕組みをできるだけ減らしたい、という思想でつくられているようです(下記参照)。

こういった“ヘルシー”な思想でつくられたゲームやアプリがもっともっと増えていくと良いですね。

課金の安全対策
ポケモンGOは基本無料のアイテム課金制ではあるが、一般的なソーシャルゲームと違いランダム型での課金システム(いわゆる「ガチャ課金」)がない。これは任天堂の岩田社長とハンケCEO(筆者注:ナイアンティック社CEO)が、ユーザーの射幸心を煽り一部ユーザーから高額課金させてしまうガチャ課金の形を望んでおらず、課金はヘルシーな水準に留めたいという事で一致したためとされる[140]。開発責任者の野村ディレクター(筆者注:)も、課金については抑える方向で調整した。一部の人に重課金を背負わせる仕組みは健全ではないと思っており、課金設定も課金プレイヤーが極端に有利にならないようにしたと語っている[30]。
(中略)
アプリの統計会社Sensor Towerが国別の平均課金額を調査したところ、日本が約2900円で世界最高であることがわかった[143]。
Wikipedia「Pokémon GO」より一部抜粋

ポケモンGOによる健康への影響〜学術論文からの抜粋〜

さて、最後に、ポケモンGOの設計思想である「楽しんでやっていたらいつの間にか健康になっていた」ということについて、それを実際に検証した論文が出ていますの、それを紹介したいと思います。

本記事では、サイエンティフィック・リポーツという結構良い論文雑誌に載った初めての報告を紹介します。

まずは日本語のプレスリリース。

スマホゲームアプリ「Pokémon GO」は 労働者の心の健康の保持・増進に有効(2017/9/7付け東京大学プレスリリース)

そして、英語ですが論文を読みたい人はこちらからどうぞ。

<原著論文>
Pokémon GO and psychological distress, physical complaints, and work performance among adult workers: a retrospective cohort study. Watanabe K, et al. Sci Rep. 2017; 7: 10758.

<方法と結果>
・2015.11.26〜2016.2.18にメンタルヘルスの調査(厚労省の職業性ストレス調査票を用いた調査)を実施していた3,915名の労働者について、約1年後(2016.12.1〜4)に追加調査を行った。

・追加調査に応じた2530名の労働者に対し、過去約1年間の間※にポケモンGOを1ヶ月以上継続してプレイしたことのある人を調べたところ、246名(全回答者の9.7%)が該当し、非プレイヤーに比べて若めであった(プレイヤーの平均年齢は約37歳、非プレイヤーの平均年齢は約43歳)。
※日本でのポケモンGOのリリースは2016.7.22なので、追跡調査の2016.12.1までの約4ヶ月半の間に「1ヶ月以上継続してプレイしたことがある人」を調査していることに留意が必要。

・プレイヤーと非プレイヤーのメンタル面を比較したところ、プレイヤーのほうが非プレイヤーに比べて心理的ストレス反応(活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感の5項目からなる評価)が顕著に改善した(p=0.025;統計的に意味のある差あり)。

・一方、身体的愁訴(身体的な不調等の訴え)や仕事のパフォーマンスについては大きな差は認められなかった。

まとめ

前回と今回でポケモンGOを紹介しました。

先にも述べたように、ゲームを楽しんでいたらいつのまにか健康になっていた、というのは非常に理想的な仕組みで、このような世界を切り拓いたナイアンティック、株式会社ポケモン、任天堂の開発者の方々には素直に賛辞を送りたいと思います。

一方で、健康行動への変容やその継続には、自分自身の内的なモチベーション(動機)必須ではないかと考えます。

その意味で、ポケモンGOはリアルユーザー同士の関わりや、コメントし合えることがユーザーの繋ぎ止めや継続に繋がっている側面があると思います。

一方で、結局のところ「ゲームを楽しんでるだけで健康になれてラッキー!」程度の認識の人も多いと思われます。

視点があくまでもゲームだけに向いている場合、本質的な部分で健康意識を高めることには寄与しておらず、ゲームに飽きれば元の状態に戻ってしまうことが懸念されます。

そう言った意味で、ポケモンGOをさらに改良するとすれば、自ら主体的・能動的に関与することで“健康行動”が勝手に強化される仕組みが構築できると良いと考えます。

口で言うは易し、行うは難し、ですが引き続きこういった仕組み、アイディアを考えていきたいと思います。

今日はここまで!

今日の記事が参考になれば、「スキ」を押してもらえると嬉しいです(^^)

<了>

#健康 #アプリ #ゲーム #ポケモンGO

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