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官能小説|見せつける妻

 いま俺の運転するトラックの助手席に座っている若い男―――入社1年目の新人で関谷せきやと言う。真面目な性格で仕事の覚えも早い。

 俺が受け持った新人の中では一番優秀だ。最近の若者のように浮ついた感じがなく、それでもどこか愛嬌があり俺はいつの頃からか部下や後輩という枠を超えて息子か弟のように可愛がっていた。  

 そんな関谷が、「今夜は村上さん家で飲みたいです」と言ってきた。    もう何度も関谷を自宅に招いている。だから関谷の言葉にも遠慮がない。そんな関係が築けたことを俺はなんだか嬉しく思っていた。

 そういえば関谷を初めて自宅に招いた時に、若い俳優の何とか・・・という奴に似ている、と嬉しそうに妻が言ってたな―――。  

 運転席から助手席の横顔を覗き見ると、確かに少しモテそうな顔立ちだと思う。この関谷という若者は23歳の独身で、俺が面倒を見るようになってからは、たまに家に呼んでは飯を食わせたりしていた。

 配送の帰りに妻の香織かおりへ電話を掛けた。
 最初は連れ帰る客の名前を伏せて宅飲みの話をした。すると妻には、「食材がない」「最近髪を切ってない」「化粧が面倒だ」と言われて見事に拒否されたのだった。    

 しかし―――、しかしだ。連れ帰る客が関谷だと分ると、一旦断った宅飲みの話を、「もぉ~、仕方ないな~」と渋々といった感じをさも・・強調して承諾してくれた。

「本当に大丈夫なんですか? 村上さんの家じゃなくてもいいですよ。急だから奥さん、怒ってるんじゃないですか」

「お前が俺の家で飲みたいって言ったんだろう―――大丈夫だ。お前が来るって言ったら即オッケーだって。うちの奴、お前の事が可愛いってよ」  
 俺と妻の間には子供がいない。
 最近の妻は、若い関谷に対して我が子に接するかのような、場違いというか行き場のない母性を向けることがあった。

 その点に関しては、ちょくちょく釘をさすのだが、関谷自身もまんざらでもない様子なので最近は目を瞑る事が多かった。

 妻は二つ下の48歳。顔立ちは普通なのだが、肌の色が透き通るように白く、ぷっくりとした唇が印象的な男好きのする女だった。
 アラフィフになって、さすがに体の線は崩れたものの、大きな胸と腰周りに脂が乗り、艶っぽさに磨きがかかっていた。    

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

「いらっしゃい」

 関谷を伴って帰宅すると一旦は断った妻が満面の笑みで出迎えた。ふん、げんきんなやつだ。

 自宅は集合住宅の一室で、けして広いとは言えない。
 出迎えた妻の服装は、黒いブラジャーの紐が若干透けて見えている真っ白なTシャツと、ムチムチの生足が覗く短パンといういつもの部屋着だった。

 短パンの裾はサイズが合ってないのかものすごく・・・・・短い。こんな格好は俺を除くと関谷以外の男の前では見せることはなかった。

 関谷が訪ねてくる度、慣れてきたのか最初キッチリした服装が徐々に崩れてゆき、最近では部屋着になったものの、化粧だけはバッチリときめていた。

「急にすみません。どうしても飲みたくなって」

 関谷は最近になって学生の頃から付き合っていた彼女に振られた。その事は俺も話題にして妻も知っていた。

「いいのよ。話したいんでしょ。誰だって飲んで忘れたい事があるのよね」

「・・・・・・ありがとうございます」

「明日は休みだ。ゆっくり飲もうや」

「―――はい。いつもすみません。お邪魔します」

 急な宅飲みだったが、よくできた妻は若者の腹を満たすだけの料理を準備してくれていた。

 料理が出揃うと妻も缶酎ハイを冷蔵庫から出してきて、俺の隣へ足を崩して座る。
 集合住宅は板張りの台所以外は全て畳の部屋で、飲んでいる居間兼寝室にはソファーなどの洒落た家具はなく、中央に小さなちゃぶ台と小さなテレビが置いてあるだけだった。

「ごめんね、こんなものしか用意できなくて」

「とんでもないです。もの凄く美味しいですよ。正直に言うと今夜は奥さんの手料理が食べたい気分だったんで―――」

「えっ、本当に?」

「おいおい、調子に乗るぞ」

「じゃあ、あなたは食べないで。関谷君、あ~~~ん」

 妻が自分の箸でつまんだ唐揚げを関谷の口に運ぶ仕草をした。関谷は頭に手をやり困り顔で俺を見た。

「食ってやらないと後が怖いぞ」

 俺の言葉に、「じゃあ遠慮なく」といって関谷は顔を赤らる。そして大きく口を開けて一口で唐揚げを頬張った。
 そんな関谷の様子を妻の香織が微笑ましく眺めていた。

「それにしても、この時期にエアコンが壊れるかよ。修理はいつ来るんだったかな」

「あさって。ごめんね~関谷君。今夜は扇風機だけで我慢してもらわないと」

 エアコンが故障し、我が家の居間兼寝室は窓を開け扇風機を回しても蒸し風呂状態だった。    

 窓を開けているので、隣の部屋のテレビの音がいつもより大きく聞こえる。集合住宅では多少の騒音を気にしていたら生活にならない。

 仕事で汗をかき帰宅すれば蒸し風呂状態の部屋。俺も関谷もビールのペースが早い。
 酔いが回りずけずけと振られた経緯を聞きたがる妻と、喋る事で楽になるのか堰を切ったように話をする関谷。

 他人の色恋沙汰にあまり興味のない俺は、2人の会話そっちのけでビールを飲んだ。空き缶が卓上に並び、いつもより酔いが回ったと感じた時だった。―――ふと、関谷の視線が気になた。

 俺の勘違いじゃなければ、関谷は妻を―――特に首から下の方に視線を向けていた。

 狭い部屋で3人だけなのだから関谷の視線は俺と妻、それにテレビにしか向かないことは分かっている。気のせいかとも思ったが、しかし、明らかに妻の方を盗み見ている感じがした。

 ビールのペースを落とし横に座る妻を何気なく観察してみた。すると関谷が妻の何を見ていたのかが分かったのだ。

 蒸し風呂と言っていい環境で、妻のTシャツは汗で濡れていた。けっこうな面積が肌に張り付き、その部分が透けるように肌の色が見えていた。当然のことながら黒色のブラジャーも薄っすらと透けて見えている。

「香織・・・・・・汗がすごいぞ」

 それとなく言って妻に今の状況を気付かせようとした。しかし、「あらそう―――」と素っ気ない返事が返ってきたのみだ。

 関谷の視線は、俺の言葉で一旦は妻の体から外れた。
 若いから仕方がないとも思う。だが俺の妻は関谷から見れば母親くらいの年齢だろう。興奮する訳がない、とも思う。

 やはり俺の勘違いだろうか・・・・・・。

 しかし暫くすると関谷の視姦が再開された。
 やはり妻の体を盗み見ているようだった。その視線は遠慮がちで、妻がテレビに視線を向けていたり、台所へ行き来する際にチラリと盗み見る程度で、若い関谷が歳の離れた妻の香織を女として見ていることになんだか可笑しくなった。

 それにしても、あんなに熱い視線を向けられていると、さすがに鈍感な妻も自分が視姦されていることに気が付いているのではないのか―――。  

 酒がすすむにつれて、妻の汗の量が増え、そうなると黒いブラジャーがしっかりと見えるまでになっていた。
 
 その頃には酔いも手伝ってか、関谷の妻に向ける視線から遠慮というものがなくなり、真っすぐな若者の視線を受けた妻までもが開き直るといった事態になっていた。

「もぅー、関谷君。ダメよ。おばさんのどこを見てるのよぉ~」

「だって―――透けて見えてるんですよ」

「何が見えてるのぉ? 言いなさいよ」

「し、下着です」
「下着って何?」

「ぶ、ブラジャー」

「あなた、ちょっと聞いた? ブラジャーですって、いやらしいわぁ~」

「香織! ちょっと飲みすぎだろ」

 いつもより酔っている様子の妻を窘めた。顔も思いのほか上気している。本当に酒のせいだけなのだろうか。もの凄く興奮しているようにも見える。

「こんなおばさんに何言っているのよ。それとも年上がいいの?」

「年上とかではなくて・・・・・・奥さんは綺麗ですよ。だから見ちゃいました」

 ちぇっ、酔っ払いどもめ。と心の中で毒づく。しかしながら関谷は普段から気を許している職場の可愛い若者である。
 
 我が家にも慣れ、それに妻もいつになく楽しそうだ。あまりグチグチとは言いたくない。下ネタの延長くらいの会話に思った俺は、盛り上がる2人をよそに、日本酒へ切り替えちびちびとやりながら山場を迎えたテレビの中の野球中継に意識を向けた。

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 野球中継がCMに入った。
 さっきまで聞こえていた下ネタトークは聞こえてこない。テレビから視線を外すとちゃぶ台から距離を取り背中を反らせるような姿勢の関谷を見た。
 何をやっているのか、と声を掛けそうになり慌てて言葉を飲み込んだ。  なんと関谷は、妻の方―――下半身を一生懸命に覗き込もうとしているようだった。

 横目で妻を見る。
 足を横に投げ出して座っていたはずが、いつの間にか胡坐をかいて座っていた。

 否応なしに短い裾の股間部分に視線が向く。おいおい、と心の中で突っ込んだ。実際に俺たちに子供がいればちょうど関谷くらいの年齢だろう。しかし関谷は他人であり男でもあることを忘れるなよ―――。

 妻の奔放な態度にため息を吐いた俺は尿意を覚えてトイレに立った。
 関谷の前を通った時に妻の方を見ると、なんと胡坐をかいて座っている短パンの裾から黒いショーツが丸見えだったのだ。

 当然、関谷の遠慮のない視線に妻が気付かない訳がなく・・・・・・どうやら自分から積極的に下着を見せつけている様子が窺えた。相当に酔ってやがる。

 歳を取ればトイレが長くなる。勢いよく出ないのだ。部屋に残した2人のことが気掛かりだが、まあ実際のところ妙な事は起こらないだろうと俺は高をくくっていた。

 手を洗って居間兼寝室に戻る。と、妻がそそくさと立ち上がった。俺と入れ替わりに台所へ立つ。足取りはおぼつかず、下卑た笑みを浮かべているように見えた。

 普段の妻からは想像ができない。深酒と子供のように面倒をみている彼女に振られた関谷の存在が日常を狂わせているのだろうか。

 恥ずかしい話―――俺たち夫婦は長い間セックスレスだ。

 だから俺も妻も性的な刺激に飢えていたのではないかと思う。端的に言えば欲求不満だな。

 関谷が妻のパンツを盗み見たり、エロトークを連発する妻―――そして今夜の状況を愉しんでいる自分がいることに気が付いていた。

 トイレから戻った俺は定位置に腰を降ろしてそのまま寝っ転がった。テレビの野球中継に集中するふりをする。
 
 台所からつまみを運んできた妻が関谷の前に座り直す。顔には妖しい笑みが浮かんでいた。そして、ゆっくりと魅せつけるようにして胡坐をかいたのだった。

「ねぇ関谷君、今夜は泊ってく?」

「えっ!? い、いや・・・・・・ 悪いんで帰りますよ」

「そんなに遠慮しないでいいのよ。明日は休みなんでしょ」

 やけに積極的な妻。普段は他人が寝泊まりすることを嫌がるくせに、今夜は自分から関谷を引き留めてやがる。

「じゃあ、遠慮なく―――」

「雑魚寝だぞ。それに今夜はエアコンがないぞ。それでもいいか?」

「あなた、泊るって言ってるのに―――若いんだからエアコンが無くても平気よね」

「はい・・・・・・」

 妻の言動はやはり不可解だ。どうしてそんなに寝泊まりさせたいのだろうか。まさかとは思うが妙な期待が膨れ上がった。    

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 関谷が泊っていくことになり、順番で狭い風呂に入ることにした。     
 妻が風呂に入っている時に、脱衣場で脱いだショーツをこっそりと確認してみる。想像したとおりクロッチ部分にいやらしい染みが広がっていた。  
 いい歳してなんて淫売な女なんだ。若い燕に体を視姦されて興奮していたに違いない。心とは裏腹に妻のショーツを手に持った俺の一物はカチカチに勃起していた。

 居間兼寝室は奇妙な興奮に包まれていた。
 3人が風呂から上がって、さらに夜更けまで飲み続けている。その間、妻の行動はエスカレートしてゆき、関谷の前でワザと屈んだような姿勢で大きな胸の谷間を覗かせたり、横に座って体を密着させ胸を押し付けたりしていた。

 まあ、俺自身も妻に嫉妬しながら、関谷の初々しいリアクションを密かに楽しんでいたのだが。

 普段は堅物な妻の関谷に対する母性―――いや違う、牝の本性をさらけ出した行動に俺はもの凄く興奮を覚えていた。

 もし、もしもだ。俺が2人より先に寝てしまったら、どんな事が起こるのだろうか。  

 俺の目の届かないところで2人は何をするのだろうか。考えるだけで勃起した一物がドクドクと脈打った。

「ふぁあ~そろそろ寝るか」

「そうね」
「はい」

 俺の言葉に2人は即同意した。
 起きている口実に、「まだ飲み足らない」なんてことを2人して言い出すのかと思ったりもしたのだが・・・・・・なんだか、あっけない―――。

 俺たちは電気を消して横になった。
 布団は2組だけだ。関谷に牝の体を見せつけていた妻は、残念なことに一番最初に寝息を立て始めた。

 妄想を膨らませていた俺は、正直肩透かしを食らった気分だ。しかし、ほっとした気持ちもある。まさか妻と関谷があらぬ関係に―――いや、年の差を考えればあまり現実的でもなかったようだ。妻の寝息を聞きながら俺も深い眠りに落ちたのだった。  

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 飲み過ぎだった。
 切迫した尿意で目を覚ますと、辺りは未だ真っ暗だった。

 周りを見ると雑魚寝していたはずの妻と関谷の姿がない。俺は慌てて起き出した。  

 パン、パン、パン―――暗闇の中で肉と肉がぶつかり合うリズミカルな音が響いていた。それになんだ艶めかしい気配がする。

 寝ぼけ眼の俺でも、何をやっているのかはすぐに理解できた。そして勃起する俺―――。

 音が聞こえる先は、台所の向こう側の4畳半の部屋。尿意を忘れた俺は静かに台所に移動した。

 するとくぐもった妻の嬌声と関谷の荒い息遣いが聞こえてきた。セックスの合間に2人の間で会話が交わされる。

「若いのねぇ~ すごぉぉぉく硬いの~~~」

「ああ、奥さん気持ちいいです!」

「ああぁぁぁん―――もっと、あああっ、もっと突いてぇ~~~!!」

「お、奥さん、奥さん―――す、好きです―――――――俺、奥さんのことが好きになったみたいです」

「あら、うれしいわぁ~~~でもね、簡単に、好きって言ったらぁぁぁああん、ダメよぉ」

「でも、初めて見た時から俺・・・・・・」

「ああ、可愛いわぁ~。でも歳の差は埋まらないのよ、ああっ、それ、いい~はぁあああん」

「歳の差なんて関係ないですよ」

「ありがとね、キュンとなっちゃうぅぅぅん~~~そうだ、ねぇママって呼んでみてぇ~」

「えっ!? ママ? ですか・・・・・・」

「そう、私のことをママって呼んで思いっきり突いてぇ~」

「じゃあ―――ママ!」

「そうママよぉ~~~あううっ、私はあなたのママよぉ~~~!」

「ママ、これは気持ちいい?」

「そう、あああぁ、深い、深いのぉ―――ぐっふ、奥に、ママの奥にあたるぅううん!!」

「ママの声・・・・・・起きちゃうよ」

「関谷君が、ああん、可愛くってぇぇぇ―――声が我慢できないのぉぉぉ。でも大丈夫、よ。ああん、あの人は飲んだら、たぶん起きないから。ふぁあん、バレたら、関谷君に責任取ってもらうからぁ~」

「は、はい。僕も男ですから。奥さん、いえママ――――――」

「―――うぉはぁぁぁ可愛いぃ! おいで、もっと、オッパイ吸ってぇ、ああ、もっと気持ちよくしてあげるからぁ~」

 どうやら盛り上がりは最高潮のようだ。妻と関谷のセックスは簡単に終わりそうになかった。

 不思議なことに怒りは感じなかった。ただ、まあ、ちょっとだけ嫉妬しているが・・・・・・淫らな空気にあてられて俺は、ふぅ~っと大きな溜息を吐いた。そして扉に耳を押し付けた状態で勃起した一物を取り出すと、センズリを始めた。  

 それにしても今夜のセックスはどちらから誘ったのだろうか―――どうでもいい疑問が頭に浮かぶ。まあ、その時が来たら2人に聞いてみよう、と思った。

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