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【書籍】『致知』2023年9月号(特集「時代を拓く」)読後感

 致知2023年9月号(特集「時代を拓く」)における自身の読後感を紹介します。なお、すべてを網羅するものでなく、今後の読み返し状況によって、追記・変更する可能性があります。


巻頭:福地茂雄さん「お金で買えないもの」 p2

 「お金で買えないもの」よく言われますが、普段の生活で認識することが少なくなっている感があります。例には、「名誉、親友、ボランティア」が挙げられていますが、打算的になっていないか。そして、徳を積むことの大切さがどの程度認識されているか。何でも売り物にされ、お金を出せば買える時代になっています。一方で、「お金で買えないもの」は忘れられている感があります。改めて「お金で買えないもの」を認識し、人生の意味をしっかりと見出していきたいと思ったところです。

 数少ない"お金で買えないもの"として、名誉、親友、ボランティアなどが挙げられます。徳もここに含まれるでしょう。私の父が米寿を迎えた折に書き記しよけいた色紙には、「積善の家に余慶あり」とあります。また『論語』には、「徳は孤ならとなりず、必ず鄰有り」 と説かれています。
 果たしていまの日本で、徳を積むことの尊さがどれほど理解されているでしょうか。
 私たちは、"お金で買えないもの”をもっともっと大切にして生きていかなければなりません。

『致知』2023年9月号(p3)より引用


リード:藤尾秀昭さん 特集「時代を拓く」p8

 今回のテーマである「時代を拓く」について、『致知』 四十五年の歴史を踏まえ、「時代を拓くリーダー」についての見解なされています。私も紙に印刷して財布に放り込み、毎日見ることにしました。

 時代を拓くとは自分を拓くこと、自分の運命を拓くことである。一つの時代に対し、自分の運命を拓いていける人にして、初めて時代を拓くことができるのである。
 では、時代を拓くリーダーの条件は何か。 『致知』 四十五年の歴史を踏まえると、次のように言えるのではないか。
一は時代の流れを読み、方向を示すこと。
二は必死で働くー会社、仕事、 社員に対する愛情と熱意は誰にも負けない。
三は自分を磨き続ける。
四は集団を幸福に導く。
五は犠牲的精神ー自分の都合より組織のことを優先する。
六は宇宙の大法を信じ、畏敬し、その大法に則り行動する。
 この条件を徹底、反復、実行する人のみが天から力を授かり、時代を拓くのである。歴史がそれを実証している。

『致知』2023年9月号(p9)より引用

 リーダーたるもの、方向を示すことが必要でありますが、変化のスピードが速くなっており、方向性を示すことの重要性はますます増していると感じます。
 何か冷めた時代ともいわれますが、愛情と熱意はいつの時代も重要です。
 自分を磨き続ける。昨今は「学び続ける」ことの大切さは言われますが、人間性を磨き続けることもまた重要なのでしょう。
 そして集団を幸福に導く自分よりも組織(集団)を優先する。
 最後は宇宙の大法を信じる。これは決して逆らうことのできない、大きな力です。その大きな力を味方につけることは重要でしょう。
 そして最後は継続です。一時的というのは誰にでもできることですが、これを継続できる人となると、なかなかいないのでしょう。

五十年先の日本に未来はあるか 月尾嘉男さん、數土文夫さん p10

 月尾嘉男さん、數土文夫による「五十年先の日本に未来はあるか」の対談。現在の状況を鑑みながら、あるべき姿を示しています。両氏のご発言から気になった部分を取り出します。

<數土文夫氏>
 二十一世紀の時代に大事なのはやはり道徳心です。 他人のことをはずかし非難したりめたりする暇があったら、自分自身の研鑽に励もうと言いたいですね。これは日本の未来をどう拓くかということに繋がっていくと思います。
 それから、定年という概念をなくし、八十になっても九十になっても独立自尊の精神を持って働く。国民一人ひとりが健康寿命、職業寿命、資産寿命の三つの寿命を延ばすべく、生活習慣の質を高めていく。これが未来を拓く一つの解答になるんじゃないでしょうか。

『致知』2023年9月号(p16)數土文夫氏発言 より引用

 「道徳心」今の時代には忘れられていますよね。他人が少しへまをすると一気に襲いかかる。その時は気持ちが良いかも知れませんが、何も残るものはないです。そんな時間はやはり有効な方向に向けるべきですね。
 人生100年時代となり、健康寿命、職業寿命、資産寿命が伸びてきています。自分自身の研鑽に努めることがますます重要になってきていると思います。

<月尾嘉男氏>
 日本がこれから取り組むべきことは、情報社会の次を設定して人材を育成することだと思っています。 一般的に言えば、狩猟社会に始まり、農耕社会、 工業社会、情報社会へと発展してきました。しかし「ChatGPT」の出現によって、従来の情報社会は変わらなければいけない時期に来ていると思います。何を次に設定するのかについては百人いれば百通りの意見があると思いますが、私は情報社会から"情緒"社会へ移行すべきだと考えています。情報と情緒の違いは何かというと、情報は持っている人が少ないほど価値がある。情緒はその逆で、知っている人が多いほど価値がある。

『致知』2023年9月号(p16)月尾嘉男氏発言 より引用

 「情緒」社会、知っている人が多いほど価値がある。情報自体は多くの人が知れるようになりました。「ChatGPT」などのような生成AIが登場したことにより、情報を使ってある成果物を出すことも、できるようになりました。もちろん、課題もたくさんあります。そんな中ですから、「情緒」というのが必要なのでしょう。時代が逆戻りしている感があります。しかし、らせん階段のように、レベルは上がっているのかとも思います。


不可能が新たな可能性を生む 穴澤雄介さん p42

 全盲のヴァイオリン奏者・穴澤雄介氏は、心臓と両目に障がいを抱えて生まれています。その後、闘病や家庭崩壊、音楽活動に入ってからも極貧生活が続くなど、壮絶そのものでした。
 しかしながら、穴澤氏は苦難の中でも知恵を生み出し、音楽家としての人生を明るく開拓していったのです。その苦難の中で知恵を出すこと、多くの学びがあります。

人間は大変な時にこそ知恵が出るんです。 満たされている時は案外、いい知恵は出ない。 最初に述べたように、どんなに困難な時も絶対どこかに抜け道がある。不可能が新たな可能性を生み出すんです。

『致知』2023年9月号(p45)より引用

 これを見たときに、アポロ13号の事故を思い出しました。1970年、宇宙船アポロ13号は月に向かう途中で爆発事故が発生し、乗組員は生存の危機に直面しました。しかし、地上の技術者たちは限られた資源と時間の中で創意工夫を重ね、乗組員を無事に帰還させるための抜け道を見つけ出しました。
 この困難な状況に直面したことで、NASAのチームは新たな可能性を模索し、従来の枠組みを超えた解決策を生み出しました。彼らの知恵と努力によって、アポロ13号のクルーは地球への帰還に成功しました。この事例は、人間が困難な状況に直面した際に創造的な解決策を見つけ出す能力を持っていることを示しています。

 穴澤さんにしろ、アポロ13号の事故にしろ、ここまでの壮絶さはなかなか巡り会うものではありません。しかし、困難に出会ったときのあり方について、いろいろと考えさせられるものがあります。

https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2023/202309_anazawa/


愚直に徹して、その道を進め 田中淳子さん p46

 超進学校としても名高い栄東中学、高等学校。その理事長を務める田中淳子氏のお話です。世界銀行の通訳から教育界へ、変化の激しい中でどのようにして子どもの能力を引き出すのか、いろいろなヒントが詰まっています。その中で「アクティブラーニング」は一つの方法でしょう。

私は、知識はそのままの形では実社会の役には立たないこと、知識は頭の引き出しに整理して入れておき、必要な時に必要な引き出しを開けて取り出せるものでなくてはならないこと、場合によっては、複数の知識を同時に組み合わせることによって、新たな着想を生み出す必要があることを痛感させられたんです。この時の気づきが、本校が力を入れている「アクティブラーニング」の実践に繋がっているように思います。

『致知』2023年9月号(p48)より引用

 「知識はそのままの形では実社会の役には立たない」といいます。その知識自体、もはや得ることは難しくなくなっています。そして、実社会では、新しい着想をどんどん生み出していくことが普通のことです。ましてや、今回のテーマである、「時代を拓く」ということを考えた場合は、アクティブラーニングのような手法が有効なのかも知れません。

私の人生もそうでしたけれども、この世の中には本当に無駄なことは一つもありません。 一見無駄だと思われること、つまらないことにこそ可能性を感じ、目標に向かって日々倦むことなく愚直に努力と挑戦を重ねていくことから、生きる力、他人を思いやる心、ひいては総合的な人間力が養われていくのではないでしょうか。 そして、その結果として他人から愛されると共に、思いもしなかった出逢いや出来事が起こり、よりよ人生に繋がっていくのだと思います。

『致知』2023年9月号(p50)より引用
 

 知識の重要性は相対的に低下している一方、各人が経験する、あらゆる経験は「唯一無二」のものです。それらを大切にしていくことは重要です。そして生きていく中でいろいろな「偶然」も起きるわけですが、アクティブラーニングのようなことを実際に実践することで、その「偶然」をものにできる可能性も高まってくるのかもしれません。



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